流山児★事務所
『コタン虐殺』
2020年2月1日(土)~9日(日)
ザ・スズナリ
作・演出:詩森ろば(serial number)
音楽・演奏:鈴木光介(時々自動)
芸術監督:流山児祥
舞台美術:杉山至+鴉屋 照明:榊美香(アイズ) 照明操作:山口洸
音響:青木タクヘイ(ステージオフィス) 音響操作:中島有城
衣裳:堀内真紀子 殺陣:上田和弘
舞台監督:土居歩 演出助手:内河啓介
稽古場スタッフ:春はるか、松永将典 制作:米山恭子
宣伝美術:詩森ろば 舞台写真:横田敦史
アイヌ舞踏、歌唱指導:AYNU RUTOMTE 宇佐照代、瑠依乃
出演:
田島亮(白老町長刺傷事件容疑者・八木原/権左衛門の部下・文四郎)
伊藤弘子(イアンパヌ/あんこ)
上田和弘(イアンパヌの夫ウタフ/息子ツカコボシ)
イワヲ(イアンパヌの弟、シュムクルの酋長オニビシ)
村松恭子(占い師ハルアンテ/ハルコ)
杉木隆幸(メナシクルの酋長シャクシャイン/苫小牧署担当刑事・佐久/源義経)
みょんふぁ(シャクシャインの妻ヤエミナ/ヤエコ)
山丸莉菜(シャクシャインの娘チャレンカ/チャコ)
藤尾勘太郎(シャクシャインの息子カンリリカ/苫小牧署新人刑事・甘利(かんり))
甲津拓平(シャクシャインの親友チメンバ)
荒木理恵(チャレンカの親友ニセウ/どんぐり)
流山児祥(松前藩・佐藤権左衛門/黒服権左/白老町町長)
辻京太(共犯者・門真/松前藩伝令)
若林健吾(イカシマトク)
森田祐吏(キラウコロ)
松永将典(トコンベ)
STORY
1974年、北海道白老町にて町長が若い男に刺されるという事件が起きる。容疑者・八木原は担当刑事・佐久の調べに対し、町長はポロトコタンと呼ばれる野外博物館建設の中心人物であり、アイヌを観光に利用しているからだと犯行動機を語る。当初、アイヌだと名乗っていた八木原だったが、次第に広島県出身の活動家だと判明する。時を遡ること300年余り、アイヌの2つの集落シュムクルとメナシクルは敵対していた。1653年、メナシクルの酋長カモクタインが射殺され、シャクシャインが酋長となる。その後、シャクシャインは1668年にシュムクルの酋長オニビシを殺害する。そんな中、シャクシャインの娘チャレンカはメナシクルの男たちに襲われたところを和人に助けられる。それは松前藩の現地指揮官・佐藤権左衛門の部下・文四郎だった。1669年、シャクシャインは敵対していたシュムクルをはじめとした各集落に対し、松前藩への蜂起を呼びかける。
2016年の『OKINAWA 1972』に続く詩森ろば+流山児★事務所第2弾。
「コタン」とはアイヌの言葉で集落のこと。
シャクシャインという名前は朧気ながら記憶にあるぐらいで、シャクシャインの戦いや白老町町長刺傷事件については何も知らなかった。
一見、重そうな題材ではあるが、そこは流山児★事務所、殺陣あり歌あり鈴木光介さんによる生演奏ありのエンタテインメントに仕上がっていた。とりわけ、アイヌを取り巻く用語や歴史についてクラブ・アイヌモシリ(モシリは「国」の意味)のホステスや客たちが歌う21世紀ススキノのシーンが楽しい。
シャクシャインの戦いの裏で娘・チャレンカの悲恋が切ない。
父・シャクシャインが文四郎の手によって殺害され、そんな相手と恋に落ちた自分を責めるかのように崖から身投げをする(ちなみにチャレンカというのは源義経との伝説が残るアイヌ人女性の名前)。
牛水里美さんの代役としてチャレンカ役を務めた山丸莉菜さんがよかった。
一方、白老町の事件では、容疑者がアイヌを名乗っていたのは嘘で、逆に取り調べをしていた刑事が実はアイヌだったことが判明する。
この両者のやりとりを通じて詩森さんが描きたかったのは、アイヌへの差別はもとより、違う文化、違う思想、違う考え方を持つ者同士が対立するのではなく、お互いを認め合っていくことの必要性ではないだろうか。
ロロ『四角い2つのさみしい窓』に続いて舞台美術は杉山至さん。
本作では流木をイメージしたらしき木材を組み合わせた舞台セット。
シンプルかつカッコいい。
上演時間約2時間2分。