『わたしは、ダニエル・ブレイク』 | 新・法水堂

新・法水堂

演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

『わたしは、ダニエル・ブレイク』

I, Daniel Blake

 

 

2016年イギリス・フランス・ベルギー映画 100分

監督:ケン・ローチ

脚本:ポール・ラヴァティ

撮影監督:ロビー・ライアン  美術:ファーガス・クレッグ、リンダ・ウィルソン

録音:レイ・ベケット  音響:ケヴィン・ブレイザー  衣裳:ジョアン・スレイター

助監督:デイヴィッド・ギルクライスト  編集:ジョナサン・モリス

音楽:ジョージ・フェントン

 

出演:デイヴ・ジョンズ(ダニエル・ブレイク)、ヘイリー・スクワイアーズ(ケイティ・モーガン)、ブリアナ・シャン(ケイティの娘デイジー・モーガン)、ディラン・フィリップ・マキアナン(ケイティの息子ディラン・モーガン)、ケイト・ラッター(職業安定所職員アン)、シャロン・パーシー(同シーラ)、ケマ・シカズウェ (隣人チャイナ)、スティーヴン・リチェンズ(同パイパー)、アマンダ・ペイン(雇用支援給付鑑定人アマンダ)、ギャヴィン・ウェブスター(製材所社員ジョー)、クリス・マクグレイド(製材所社員)、ショーン・プレンダーガスト(同)、スティーヴン・クレッグ(職業安定所管理主任)、アンディ・キッド(職業安定所警備員)、ダン・リー(チャイナの友人スタン・リー)、ジョン・サマー(履歴書講師)、デイヴ・ターナー(園芸センター・ハリー・エドワーズ)、ジャッキー・ロビンソン(フードバンク・スタッフ)、キャスリーン・ジャーメイン(同)、クリスティーン・ウッド(同)、ミッキー・マグレガー(スーパーの警備員アイヴァン)、マルコム・シールズ(スコットランド人労働者)、ミック・ラフィー(福祉事務所職員)

 

STORY

イギリス北東部ニューカッスル。59歳の大工、ダニエル・ブレイクは心臓病を患い、医者から仕事を止められる。支援手当は認められず、求職者手当をもらうためには求職活動をしなければならないダニエルは、職業安定所で職員と揉めていたシングルマザーのケイティに救いの手を差し伸べる。ケイティはロンドンからニューカッスルに来たばかりで、デイジーとディランの2人の子供を育てていた。ある日、フードバンクを訪れたケイティは空腹のあまり、缶詰を開けて食べ始め、泣きじゃくる。その後、スーパーで万引きを働いたケイティは、警備員に紹介されて売春婦の仕事を始める。ダニエルは思い止まらせようとするが、ケイティはダニエルを突き放す。職業安定所で求職活動をした証拠がないと違反になるとシーラに告げられたダニエルは、建物の壁にスプレーで「俺はダニエル・ブレイクだ」と書きつける。


カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作。

 

現在公開中の『家族を想うとき』同様、ケン・ローチ監督は理不尽な制度に翻弄される労働者姿をリアリスティックに描き出す。ホント、役人どものまさにお役所仕事っぷりには腹が立って仕方がない。

妻に先立たれ、心臓に病を抱えて働けない。手当を受けようにも認められず、申し立てをしようにもパソコンが使えなければどうすることもできない。そんな八方塞りの状況の中でも、ダニエルとケイティ一家の交流にはほんの束の間の安心感が得られる。

 

最後、ダニエルの立場を理解してくれる代理人が見つかってささやかながら希望を見え始めた途端、ダニエルはトイレで倒れて帰らぬ人に。何とも救いのない話ではあるけれど、ケイティの弔辞には胸を打たれるものがある。

人が自分らしく生きる、そのためにこそ政治や福祉があるはずなのにそれもままならない現実。"I, Daniel Blake"は一人の人として扱って欲しいというダニエルの尊厳をかけた悲痛なメッセージだ。

 

本作でも役者はオーディションで選ばれたそうで、有名な俳優は誰もいない。

このあたりのケン・ローチ監督のキャスティング力は素晴らしいものがあるな。

デイヴ・ジョンズさん、ヘイリー・スクワイアーズさんともに見事。

特にヘイリー・スクワイアーズさんはフードバンクで精神的に参ってしまう演技がよかった。