私は医療関係者では有りませんが、大学1年の時、教養課程の数学と英語の授業で、医学部の学生と席を並べていました。
医者の卵たちの中に友人は居ませんでしたが、隣の席から聞こえて来る会話から、医者の本音が見えてきました。
医者が望むのは高収入と安定とステータス
医学部生同士の会話から聞こえてくるのは「金」の話で有り、「安定性」で有り、「社会的ステータス(異性からモテるかどうか)」でした。
「いかに多くの命を救うか」などという崇高な話は、聞こえては来ませんでした(全員がそうとは私も思いませんが)。
「優秀な人間が金や地位を欲するのは当然」という、アメリカ的な考えは、この国にも有ります。
しかし、医療は別格の話です。
このコロナ渦で、嫌というほど分かったはずです。
こんな記事が有ります。
要約すると、「この国は病床数世界一だし、医者もたくさん居る。でも、コロナに対応する病床と専門科医は少ない」ということです。
この事実が意味することが実際、何であるのかを書きます。
日本の医者は多くが「ホームドクター」
このデータからも分かる通り、日本の医者は圧倒的に民間病院に偏っています。
民間病院でも、規模が大きい病院も有りますが、そのほとんどが開業医と呼ばれる、規模の小さな病院です。
記事に有る通り、海外では多くの国がホームドクター制度を導入していて、まずは町のかかりつけ医に掛かり、必要であれば、大病院の専門医に掛かるという手順を踏みます。
日本も似たような感じでは有りますが、大きな違いは、ホームドクターが担当する範囲が、海外では限られることです。
日本では開業医も「内科」とか「整形外科」などの専門科を名乗って、専門医のように治療を担当する場合が多いですが、海外のホームドクターは専門は名乗らず、全ての科目の診療を行います。
そのかわり、単純に薬の処方などで済む場合以外は、治療が必要な場合は、全て専門医に丸投げします。
仕事でアメリカに行った時、知人が虫歯の治療のために歯医者に行こうとしたらホームドクターを紹介され、そこで「抜歯が必要」と診断され、歯科の専門医に丸投げされました。
海外旅行保険は非常時にしか適用されないため、そのまま専門医に掛かると、治療費が非常に高額に成ります。
結局、帰国して日本の歯医者にかかるほうが良いと判断して、仕事を引き継いで帰国しました。
日本では、盲腸くらいの手術であれば、町医者がやっています。
海外では考えられないことなのです。
海外でホームドクター制度が出来たのは、高度医療に対応出来る専門医に成れる医師は、数が限られることに気づいたからです。
例え医師国家試験に合格しても、高度専門医に成れる人材はごく一部なのです。
ですので、海外では、医学部で専門医とホームドクターにえり分けられて、別なカリキュラムを受けます。
医師免許も別物に成り、就業後の収入も全く違います。
ホームドクターの年収は平均で600万円ほどですが、専門医は2000万円以上に成ります。
ちなみにアメリカの男子中学生が成りたい職業第一位は、一番収入が高い「外科専門医」です。「医師」では有りません。
それに対し、日本は町医者と専門医の境界はあいまいで、全員が同じくらいの収入になっています。
同じ年収なら、高度医療を求められる公立病院の勤務専門医に成るより、お年寄り相手に風邪薬の処方程度の治療をする町医者に成ったほうが、断然楽なのです。
民間病院の病床は常に埋まっている
ちなみに、なぜ日本では町医者も専門医も同じ収入なのか?
それは医療費が点数制になっているからです。
高度医療はもちろん費用は高額ですが、町医者の診療報酬も、それなりの金額に設定されています。
診療を誰がやり、どんな結果になっても金額が同じなのです。
それどころか、早期に完治するより、だらだらと通院や入院させていたほうが、儲けられます。
日本企業の残業と一緒です。早く仕事を終わらせたものより、だらだらと時間をかけて仕事したものの方が報酬が高い。
おかしな国です。
こうして日本の医者は、そのほとんどが町医者に成ってしまうわけですが、ではなぜ新型コロナ感染症向けの病床が少ないのか?
それは、病院の病床は一つでも空きが有ると、維持費がかかります。病床いくつあたりで看護師を雇わなければならないからです。
埋まっていれば、維持費+αの収入が発生します。
利益を生まないと経営が成り立たない民間病院は、常に満床じゃないと、赤字になってしまいます。
そこで、症状が軽い患者にも入院を勧めたり、満床の他の病院から患者を受け入れたりして、無理やり病床を埋めています。
また、そもそも入院設備を持たない開業医も多いです。
なので、こういった非常事態の場合には、公立病院の病床しか空きが有りません。
ほとんどの医者が開業医や民間病院勤務になるこの国。
これが医者も病床も多いのに、新型コロナ感染症に対応する医者と病院が少ない理由です。
医療はライフラインの一部
この国の医療制度の大きな間違いの一つが、医療を商売にしていることです。
灘高校やラサールなど、東大進学者を多く送り出す上位進学校の約半数の生徒が、医者に成るそうです。
この事実から見えるのは、成績上位者にとって医者に成ることが、高収入と社会的ステータスを得る安パイに成っているということです。
定期的な健康診断以外は、医療は本来、健常者がたまにかかる病気やケガに対応するものです。
また、高須クリニックのように、美容整形の医院を海外展開でもしないかぎり、外貨を稼げるものでも有りません。
毎年、多くの人間が就職するような産業では無いはずなのです。
ところが実際には、毎年多くの医師や看護師、検査士を生み出し、CMで宣伝し、患者を作りだして商売にしてしまっています。
今回の新型コロナのような感染症は、スペイン風邪やSARSなど過去にも発生していて、こうした感染症に備えるのは当然のことであり、それはライフラインの一部で有ります。
ところが日本の医療体制は、金儲けの要素があまりにも強く、そうした備えが出来ていませんでした。
既に首都圏や大阪では医療崩壊が起き、自宅療養者が死亡する事態に成っています。
コロナを機に、この国の医療制度が変わることを願います。