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手術室発、日本の医療へ

毎日の麻酔業務におけるミクロなことから始まり、そこから浮かんでくるマクロな日本の医療全体についてまで、感じること、考えることを書き残していきます。専門的なことも書きますが、一般の方にも読んでいただければと思います。

前回のブログを書いてから、しばらく経過してしまった。

その間、年が暮れて、明けて、今年に入って早2ヶ月。
まったくもって、時間がたつのが早い。

世の中もなにやら、テロリストたちがやりたい放題をみせつけて、
日本人を含む、世界中の一般人たちがその犠牲になっている。

そのようなきな臭い世の中でも、毎日粛々と地域の医療に勤しんでいる我々であるが、
嬉しいニュースもあった。

昨年の11月に上梓した循環生理の本

臨床にダイレクトにつながる 循環生理~たったこれだけで、驚くほどわかる!/羊土社
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が早くも増刷となったことだ。

この手のわかりやすい本がなかっただけに、
皆さんに広く受け入れてもらえたものと思っている。
誠に有り難く、また嬉しい限りである。

増刷に際して、気づいた範囲内で誤りは訂正させてもらったが、
まだまだ、つまらないミスなどもちょこちょこ散見している。

読者には大変申し訳なく思っている。
次回増刷までには、なるべくそうしたつまらない誤りは訂正して
置きたいと思う。

もし読んで間違いにお気づきの際には、羊土社の正誤表もお調べいただいた上で
是非お知らせいただければ幸いである。
常々、麻酔科医たるもの、循環生理がわかっていないとだめ、と口を酸っぱくして言っていたものの、なかなかコンパクトな循環生理の本がなかったが、1昨年、ふと出会った本が非常に良くまとまっていてよかった。

それをなんとか翻訳して、忙しい臨床の合間にでもさらっと読んで理解を深めてもらえるようにと、
取り組み始めたが、自身の異動もあり、かなり時間がかかってしまった。
しかし、ようやく、本日翻訳本が出版された。

今回、集中治療の讃井教授のお力添えによってこの本の翻訳出版が実現できた。そして、自らも翻訳に携わっていただき、最後には、素晴らしい文章力によって、こなれていない日本語もかなり手直ししていただくことで、かなり読みやすい日本語にしていただけたと、感謝に耐えない。

我々翻訳者としても、この本が、急性期医療に携わる若い医師、とくに、麻酔科、ICU、救急、心臓外科、循環器内科などに携わる医師の役に立てればと思う。
私が読んでいても、ときどき、「あ、そうだった、たしかに」と頷くこともあり、指導者レベルの人にも是非とも目を通していただければ、新たな気付き、知識の整理に役立つことは間違いないと思う。

せっかく苦労して訳したので、多くの医師、あるいは、MEさん、看護師、学生さんなどの役にたてれば、まさに、翻訳者、冥利に尽きる思いである。



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週末から一週間休みをいただいて、AHA(=アメリカ心臓病学会)に参加している。
今年の開催はシカゴ。

アメリカには5年ほどいたが、シカゴははじめて。
久々のアメリカらしい大都会の風景をみると、こころが高揚してくる。
相変わらず、アメリカ人はでかい。
やはり、国土の違いを思い知らされる。

それにしても、思うのは、学会に参加する費用が年々高くなること。
学会参加費だけで800ドルなのでいまや10万円弱。
これに飛行機代等の交通費で、安いエコノミーを使っても18万円くらい。
さらに滞在費のホテル代が馬鹿にならない。
安いホテルを探してみたが、一泊税込みで200ドル。飛行機の発着時間の関係で、
5泊することになってしまったので、これも12万円
合わせて40万円である。

大学からの援助は教授職であっても毎年10万円しかない。
若い人には、それすらでない。

これでは、若い人がアメリカの学会になど参加できるわけがない。

それでも多くの日本人が参加している。
全く頭がさがる思いである。

私はといえば、専門外の学会ではあるが、心臓病の麻酔をしているという意味では、いろいろと関連があるので、ふと、情報収集をしたいと思いたち、来ることにしてみたが、思いの外の出費に頭が痛い。

今回の海外遠征で、やはり円安は非常に効いているように思った。
前回の海外出張は3年前。
ちょうど、まだ円が80円、90円のころだったように思う。
前回はトータルで30万円かからなかったように記憶している。

そこから3割も円が安くなれば、給料は日本円で変わらないのであるから、当然、相当に割高になる。

アメリカでの学会参加費や、ホテル代がどんどん高騰するのは、彼の地でもインフレが進んでいるからであろう。
それにもまして、円安が誘導されて、さらに日本円の価値が減らされて。。。

折しも、本日、日本ではGDPの7-9月期の実質がマイナス成長になったということで、株価も暴落しているようだが、日本の政策、特に日銀の金融政策は、私のような素人が見てもどうかと思う。
これでは、日本の円の価値を下げて、日本を貧しくして、さらに、貧富の差を拡大しているようなものだからだ。
日本の行き着く先はこのままではあまり明るくないように思うのは私だけだろうか。

衆議院選挙、実は今回は特に重要な選挙であるように思う。
これで現政権を支持すると、これまでの経済政策を容認したということで、ますます
とんでもない方向に加速していくのだろう。
なんとか、ここで、食い止めないといけない。






先週末から本日まで、心臓血管麻酔学会が開催されていた。

心臓麻酔を専門にする私にとっては、一年に一度の重要なイベントではあるが、
様々な人達と会って、話をして、いろいろと感じること、得ることが非常に多い。

今回の学会に参加して、感じることは、
一般の若手の発表の内容が、かなり較差ができていることを痛感した。
非常によい、まとまった発表をしている人もいれば、
問題外の、唖然としてしまうような発表をしている人もいた。

これは、やはり、若い人の問題というよりは、
指導者がしっかりとみているかどうかという問題であろう。
症例発表であっても、まずは、論点となる事実をしっかりと述べて、
そしてディスカッションにもっていく。
そこに、ディスカッションできるだけの材料がなければ、
発表の体をなさないわけで、人の時間を無駄にしているだけである。

若い人には、ぜひとも、基本的な発表技術くらいは身につけてほしいと思うし、
また、指導者にもしっかりと指導をしてもらいたいと思う。
指導者としても、そうした指導ができないのであれば、指導者の資格はない。

自分自身への戒めとともに、今回の学会は非常に全国津々浦々の施設較差を痛感した。

そんな反省だけではなく、よいことも多かった。

さまざまな人との出会い、話を通して、こちらの見識も広がることも多い。
今回の学会では、とくに貴重な出会いを通じて、今後のよい見通しを得ることができた。
これは、本当にラッキーである。
しかし、この運も、そもそも引き寄せてみないと良い運だったかどうかすらわからない。
自分が努力することで、チャンスを作り出す、これはいつになっても重要なのであろう。

若い人にも、ぜひとも良い運をどんどんと引き寄せていってほしいと思う。
そのためには、努力して、大いにチャレンジしてほしい。
無限の可能性を信じて。
先日会った昔の医局の後輩が、自分で会社を立ち上げた。

すでにHPもできている。

麻酔科医の派遣会社ということだ。

以前いた大学の医局は、やはり多種多様な人材が豊富に集まっていたと今更ながら、実感する。

それもやはり故森田茂穂教授の人徳だったのだろう。

おかげで、その医局を通して、さまざまな能力に長けた有能な人たちと知り合えたことは、
人生のなかでも宝だったと信じている。

私自身はあまりに臨床を愚直にやりすぎてきたかもしれない。
今後の医療を担っていく、若い世代のためには、もっと多様な人材を集めて、
育てていかなくてはならないが、それにはまずは私自身が変わる必要もあるのだろう。

最近、また大学に戻って、若い人を育てる立場に立って、ひしひしと、恩師森田の懐の深さを感じている次第である。

まだまだ修行がたりない。




前回のブログから、集中治療ネタで申しわけない。

実は、うちの麻酔科医には、集中治療医を志望している医師が多いため、
いろいろと相談にのることも多い。

なかには、留学希望をもっている若者もいる。
私も留学した先輩としてできるだけのアドバイスをしているが、
集中治療は、これまであまり範疇ではなかったので、
昔の医局のつてをたどって、いろいろな後輩たちに連絡をとっていた。

そのなかで、海外留学して、帰国後も大学病院を中心として、
集中治療のなかではエリートとして活躍していた後輩がいたので
連絡をとろうとしたら、なぜか、所属してた大学のHPに名前がなかった。

医局のひとに頼んで、連絡先を聞いたが、
実は、その後輩、出身の故郷にかえって、療養型の福祉施設を経営しているという。
曰く、「集中治療では、具合の悪くなった人に莫大な医療費をかけていくのが仕事。しかし、それだけの医療費をかけても良くなる人はそれほどいるわけではない。そうであれば、そうならないような、予防医学、福祉にもっとお金をかけてもいいのでは、と思い、其の施設をてがけることにした」と。

至極もっともな意見。

後輩ながらあっぱれな身の振り方。

集中治療を否定するつもりは全くないが、たしかに、
われわれの急性期医療も、予防医療をもっと取り組むことでそうとうに
やらなくてすむことが多くなる分野でもある。

手術医療に加担している我々としても、日々、このような手術を本当にやる必要があるのか、
疑問に思うこことも多い。
ましてや、重症化した患者を扱うことが多いICUでは、そのような無力感に襲われることもおおいにあったのだろう。

まさに正常な感覚の持ち主である。

そうした施設の成功を祈って、エールを送りたい。

私が今年から働いている病院は、ICUが非常に有名で、毎年全国から集中治療を学びに若い人が集まってきている。

ただ、そうした人たちは、決まって、その前に麻酔専門医を取らないと集中治療の専門医をとれないので、麻酔をまわります、ということで、当科麻酔にも見学にくるのが常である。

麻酔科を生業として4半世紀過ごしてきた私としては、少々違和感を感じているこの頃である。

そのような制度になっているので、仕方がないのであろうが、
麻酔科をそのような理由で、通過点として回ることを最初から前提に考えているのはどうかと。

集中治療をやるのはもちろん結構である。しかし、その通過点として、麻酔科が一番専門医とるのが楽そうだから、とかそのような理由で麻酔科を回るというのは、ちょっと疑問符がつく。

集中治療に必要な知識は本当に麻酔科が一番よいのだろうか。
よく考えてほしい。
制度上のゆがみではあるが、麻酔科あがりの集中治療医ばかり集まっても発展性がないだろう。
むしろ、アメリカのように、集中治療医の半分以上が呼吸器内科出身というのが正常な進化かもしれない。

若い人には、ぜひとも本当に必要なことはなにか、よく考えてほしい。
呼吸器内科しかり、循環器内科しかり、もちろん一般外科もよいだろう、
麻酔科も無駄とはいわない。
しかし、本当に自分の能力を高めることを第一に考え、変な制度にしばられないようにしてほしいと思う。

そして、もし、それでも麻酔をベースに集中治療に入って行きたいのなら、
麻酔科にまずはいるのはもちろん結構。
しかし、それなら、麻酔科で学べるものはすべて吸収するくらいの
意気込みがほしい。

だから、その際に「麻酔科は腰掛け程度にできればいいのですが」
という程度のモチベーションであるようなそぶりは見せないほうがよい。
(そういう動機でも採用してくれる麻酔科に行けばいいだけのことであるが)

そんな腰掛け程度にしか必要ないのであれば、最初からまわらなければよいのである。
時間の無駄だ。もっと実になると思うところで修行するほうがよほどよいだろう。

もちろん当院麻酔科に来て、そのような匂いをすこしでも嗅ぎつけられると、
採用する側のテンションはさがる。
こちらはガチで麻酔科をやるものを募集せざるをえないので。

本来、多様性を取り入れて、さまざまな方向を向いている人を集めたいところでもあるが、
残念ながら定員にしばりが強く、それもままならないからだ。

世の中うまく立ちまわってほしい(笑)。


先日、若いドクターから症例のコンサルトを受けた。

90歳超えた高齢者で、大きな手術をすることになっている患者。

いろいろと合併症もあり、手術を乗りきれる可能性はあまり高くなさそう。

手術を乗り切っても、無事に退院できるかもまだまだ難関だろう。

もちろん、高齢者の手術を否定するわけではないが、
それほどの合併症ももった人に、大きな侵襲の手術はちょっとどうしたものか。
手術をする外科医も報われない。
90歳を超えて、言われなければ気付かなかった程度の病変である。
いつか急変してもそれは天命だろう。

外科医自身もあまり乗り気ではないようで、
さかんに手術をしない方向で話をしたようだが、
家族がどうしてもと言うので。。。と

事の発端は、それを発見した近所の病院の医師。
手術をしないと突然急変して助からないと言ったそうな。

しかし、そうして紹介された医療機関にしてみれば、
これを断るのは、基本的には難しくなる。

ようは、初診の、というか紹介元の医師がきちんと適応もある程度考えたうえで
紹介してもらわないと、このような疑問符のつく手術が避けられないことになる。

紹介する医師も、自分の親だったらどうするのか、立場を変えて、
よく考えた上で紹介してもらいたいものだ。

昨日は、札幌に出張して、経食道心エコーの講習会で話をしてきた。

こうした講習会で話をするのは、実は、10年ぶり。
第一回の経食道心エコーの試験を立ち上げた当時、試験問題の作成に携わらせていただいたのがもう10年前になる。
その頃は、手弁当で、会場も女子医大の講堂を借りて開いていたが、
その頃と比べると、講習会の内容も、また受講生の数、熱心さも隔世の感がある。

会場はホテルの宴会場を借りきり、300人あまりが集まっていた。
わざわざ、連休で、飛行機もホテルも高いさなか、高い講習料も払い、聴講されているせいか、
会場ではほとんど居眠りをしている姿さえない。

講師陣も30分という持ち時間を活かして、与えられたテーマをしゃべるため、
それこそ、機関銃のようにしゃべりまくりスライドを回しまくる。

相当に密度の高い講習会になっていると思う。
これだけの内容を吸収するのも大変だろう。

今回、久しぶりに講師として、招いてもらったが、
聴講している熱心な若い先生たちの熱気が一番の収穫だった。

そして、まだまだこうした若い人たちのために、いろいろとできることがあるだろうと
確信を深めた一日だった。

当施設に移動して、早4ヶ月になろうとしている。

いろいろと勝手が違うこともあり、また遠距離通勤にもなれないなか、
あっという間の4ヶ月だった。

この間、心臓外科の手術には相変わらず関わらせてもらい、
そのなかで、感じたことは

やはり、ここの心臓外科は凄い、というところだ。

なにが凄いかというと、もちろん、手術もきちんとやることはもちろんだが、
その忙しい中、研究もやっている。
なんと、科研費も相当に獲得されているとか。。。

大学病院とはいえ、臨床業務が相当に忙しい中、
たいしたものである。

そんなスーパー外科医に負けじと、うちの麻酔科も
頑張っていかないといけない。

若い人には、是非とも、研究でもパワーを発揮してもらいたいものだ。