集中治療医を目指す若いドクターへ | 手術室発、日本の医療へ

手術室発、日本の医療へ

毎日の麻酔業務におけるミクロなことから始まり、そこから浮かんでくるマクロな日本の医療全体についてまで、感じること、考えることを書き残していきます。専門的なことも書きますが、一般の方にも読んでいただければと思います。

私が今年から働いている病院は、ICUが非常に有名で、毎年全国から集中治療を学びに若い人が集まってきている。

ただ、そうした人たちは、決まって、その前に麻酔専門医を取らないと集中治療の専門医をとれないので、麻酔をまわります、ということで、当科麻酔にも見学にくるのが常である。

麻酔科を生業として4半世紀過ごしてきた私としては、少々違和感を感じているこの頃である。

そのような制度になっているので、仕方がないのであろうが、
麻酔科をそのような理由で、通過点として回ることを最初から前提に考えているのはどうかと。

集中治療をやるのはもちろん結構である。しかし、その通過点として、麻酔科が一番専門医とるのが楽そうだから、とかそのような理由で麻酔科を回るというのは、ちょっと疑問符がつく。

集中治療に必要な知識は本当に麻酔科が一番よいのだろうか。
よく考えてほしい。
制度上のゆがみではあるが、麻酔科あがりの集中治療医ばかり集まっても発展性がないだろう。
むしろ、アメリカのように、集中治療医の半分以上が呼吸器内科出身というのが正常な進化かもしれない。

若い人には、ぜひとも本当に必要なことはなにか、よく考えてほしい。
呼吸器内科しかり、循環器内科しかり、もちろん一般外科もよいだろう、
麻酔科も無駄とはいわない。
しかし、本当に自分の能力を高めることを第一に考え、変な制度にしばられないようにしてほしいと思う。

そして、もし、それでも麻酔をベースに集中治療に入って行きたいのなら、
麻酔科にまずはいるのはもちろん結構。
しかし、それなら、麻酔科で学べるものはすべて吸収するくらいの
意気込みがほしい。

だから、その際に「麻酔科は腰掛け程度にできればいいのですが」
という程度のモチベーションであるようなそぶりは見せないほうがよい。
(そういう動機でも採用してくれる麻酔科に行けばいいだけのことであるが)

そんな腰掛け程度にしか必要ないのであれば、最初からまわらなければよいのである。
時間の無駄だ。もっと実になると思うところで修行するほうがよほどよいだろう。

もちろん当院麻酔科に来て、そのような匂いをすこしでも嗅ぎつけられると、
採用する側のテンションはさがる。
こちらはガチで麻酔科をやるものを募集せざるをえないので。

本来、多様性を取り入れて、さまざまな方向を向いている人を集めたいところでもあるが、
残念ながら定員にしばりが強く、それもままならないからだ。

世の中うまく立ちまわってほしい(笑)。