重要なのは発行者側の会計処理だが、先に取得者側の処理を見ておく。

取得者から見れば、区分するにせよ一括処理するにせよ新株予約権付社債はどちらにしても有価証券である。仕訳上は

<転換>
(借)投資有価証券 ××× (貸)現金預金 ×××

<その他の>
(借)投資有価証券 ×××、投資有価証券 ××× (貸)現金預金 ×××

このようになる。その他の、つまり別個処理できる新株予約権付社債が区分法によった処理。こちらの投資有価証券はそれぞれ社債と新株予約権の価値である。


さて、問題の発行者側の会計処理について。

まず一括法によった場合の転換社債型新株予約権付社債の処理は、徹頭徹尾、社債として処理される。発行してから現物出資されるまで「新株予約権」なるアカウントは一度も登場しない

払い込まれた全額を社債として計上し、権利行使時には社債の金額でもって払込資本に振り替える。計算上も非常にシンプルと言える。


問題は区分法である。これの処理方法は、すなわち社債と予約権の金額の測定は二種類の方法がある。

1.社債および新株予約権の払込金額またはそれらの合理的な見積額の比率で配分する方法。

2.算定が容易な一方の対価を決定し、これを新株予約権付社債の発行に伴う払込金額から差し引いて他方の対価を算定する方法


具体的な処理については次以降の設例で見ていく。
前回の続きから

?転換社債型新株予約権付社債と?その他の新株予約権付社債は以下のような異同がある。

?転換社債型新株予約権付社債
特徴:社債とワラントが単独では存在できない
払込:代用払込に限る
発行者処理:区分法or一括法
取得者処理:一括法

?その他の新株予約権付社債
特徴:社 債とワラントが単独で存在し得る
払込:現金払込or代用払込
発行者処理:区分法
取得者処理:区分法

最も重要なのは下線部分の転換社債型新株予約権付社債の発行者側の会計処理である。

まず?から解説。
こちらは転換社債型と異なり単独で存在し得るという特徴がある。大本の発想としては、社債と新株予約権を明確に分けられるのなら、その会計処理も明確に分けるべきであると考えられている。
よって発行者・取得者ともに会計処理は(社債と予約権を分けた)区分法に限られている

対称に?の取得者の会計処理は一括法のみとなっている。
なぜならば社債と予約権が完全に一体となった転換社債型においては、取得者が社債部分・予約権部分それぞれの価値を正確に把握することが困難だからである。

他方?の場合でも発行者は(発行したのだから)社債部分・予約権部分それぞれについての価値を正確に把握できる状況である。にも関わらず、会計処理は区分法一択ではない。一括法か区分法の選択適用である。その理由について少し詳述することにする。


・?転換社債型新株予約権付社債の発行者側の会計処理
(区分法or一括法)

<一括法>
転換社債型新株予約権付社債については、ベースは社債である。この社債に付された新株予約権については市場価値がない。なぜならば転換社債型に付された予約権は切り放せないからである。予約権のみを切り離すことが不可能である以上、予約権の価値を算定することは無意味であると考えられる。よって転換社債型新株予約権付社債の処理方法としては一括法によるものが妥当であると考えることができる。

またそうであるならば、一括法においてはすべて普通社債に準じた会計処理が行われる。予約権を切り取って処理ができないならば、転換社債型新株予約権付社債は社債として処理する他ないわけである(あくまで社債であって新株予約権ではないので)。つまり一括法によった場合、転換社債型新株予約権付社債を発行したときに払い込まれる金額はすべて社債に対して払い込まれたものとして処理される。(現金×××/社債×××)


<区分法>
区分法のスタンスで考える場合、転換社債型新株予約権付社債の新株予約権部分は売却できなくとも確実に経済的価値を有していると解釈する。確実にと言うのは御幣があるかもしれないが、権利行使される新株予約権は経済的価値を有する、と断じることなら出きる。権利行使される新株予約権の行使価額は、明らかに市場価格を下回っているのだからすぐさまキャピタルゲインとなる。もちろん相場次第では無価値となる可能性は否定できないが、発行者があまりにも無価値となりそうなギリギリのラインを行使価額に設定するならば、多くの人はその新株予約権に価値を見出すことはできない。普通の判断を行う発行者であれば、コストを費やして無価値な有価証券を刷ることはない。よって一般に転換社債型新株予約権付社債の新株予約権部分は経済的価値を有すると論じることができる。

で、そうであるならば分けて処理を行うというのが区分法である。一応確認するが、何度も「分けて処理する」と書いているが、これは払込まれた金額社債部分新株予約権部分按分するという意味である。
「新株予約権付社債とは何か?」についてつらつらと。

まず名前通り、新株予約権+社債、つまり(新株予約権のくっ付いた)社債である。社債付新株予約権ではない、新株予約権付社債、なのである。

ということでメインは社債。新株予約権を抱き合わせ販売。


さて、この新株予約権付社債には種類がふたつある。

?新株予約権と社債が完全に一体となったもの
?新株予約権と社債を切り放すことができるもの


会計の学習上は圧倒的に前者が重要である。
というよりは、そもそも?のように切り放せるなら別々に処理すればよいだけの話である。そうであるなら論点は「新株予約権」と「社債」に分かれ、それぞれをきちんと学習するべきである。

しかしここでのポイントはあくまで「新株予約権付社債」。つまり?を指す。
なお名称としても?は転換社債型新株予約権付社債と呼ばれ、?については「その他扱い」である(その他の新株予約権付社債)。


ということでまずは転換社債型新株予約権付社債に照準を合わせる。
この有価証券の特徴は、出資時(つまり新株予約権の権利行使時)は、現金ではなく当該社債を以って現物出資とする、というところにある。

この現物出資は、現金にえて社債をいた払込みをするところから「代用払込」と呼ばれる。通常の出資と言えばもっぱら現金である場合が多いが、ここではあえて差別化のため、その他の新株予約権付社債の権利行使において、現金による出資を行う場合は「現金払込」と呼ばれる。

なお?その他の新株予約権付社債の権利行使は代用/現金いずれの払込みも可能であるが、?転換社債型新株予約権付社債は社債と新株予約権を切り放せない以上、代用払込しかできない。

次に会計処理だが、社債と新株予約権を区分して処理する区分法、社債と新株予約権を一括して処理する一括法に類別できる。

最後に新株予約権付社債は、発行者と取得者、それぞれの会計処理を見る必要がある。しかしここで重要なのは発行者側の会計処理であり、取得者側はおまけのような感じで。


以上、?転換社債型新株予約権付社債とその他の新株予約権付社債をまとめると次のようになる。

?転換社債型新株予約権付社債
特徴:社債とワラントが単独では存在できない
払込:代用払込に限る
発行者処理:区分法or一括法
取得者処理:一括法

?その他の新株予約権付社債
特徴:社債とワラントが単独で存在し得る
払込:現金払込or代用払込
発行者処理:区分法
取得者処理:区分法

続きは次のエントリにて