先ず最初に今回の「発行する全部の株式の内容」と「異なる種類の株式」を区別するように意識したい。両者に共通する名称の株式があるが、今回は全部の株式の内容。つまり100株発行しているなら100株全てに一律同じ設定を付す場合についてである。

さてここで少し想像してみよう。「全ての株式に一律同じ内容の設定」を付すということは、その設定内容はその株式を持つ場合と持たざる場合の優劣ではありえないことが分かる。例えば配当優先株。この株式を持っていると、そうではない株式を所有する株主よりも多く配当金を受け取れるという条件が設定されていたとする。しかしこの条件を会社が発行している全ての株式に設けても、結局はその効力を発揮できないことになる。
あるいは、「取締役や監査役を選任する権利を持つ」株式。しかしこれを全ての株式に設定してしまっていは、狙った効果が得られないことが分かる。全ての株主が選任権を持つようになるのであれば、それは通常の株主総会の決議事項となんら変わることがない。

以上のような理由から『全ての株式に一律同じ条件を設定する場合、その内容はたったの3つ』に絞られる。

1.譲渡制限株式(107、?、?)
2.取得請求権付株式(107、?、?)
3.取得条項付株式107、?、?)


の三つである。一応復習なのでそれぞれの株式についてざっくり説明。

譲渡制限が株式に設けられている場合、譲渡や相続については株式会社の許可を要する。許可が得られない場合は対価が交付されたり指定買取人の指定を受ける。全てにこの条件が付されている場合は「公開会社でない株式会社」と呼ばれる。

取得請求権とは株主の権利である。この権利を行使された場合に交付される対価は予め定款で定める必要がある。自己株式の取得の理由のひとつである。

取得条項付株式は、会社が取得の判断を行う。一定の事由が生じたことを条件として、株主から株式を無条件に引き渡してもらえる。ただしその際に当然対価を交付することになり、こちらも予め定款で設定すべきものである。自己株式の取得の理由のひとつである。
1.当期はH21年4月1日からH22年3月31日まで。
2.H21年度の当期純利益は10,000千円であった。
3.期首における普通株式数は400,000株であった。
4.転換社債型新株予約権付社債について

(1)転換社債型新株予約権付社債は前期に次の条件で発行したものである。なお前期末までに権利行使されたものはない。転換社債型新株予約権付社債は一括法で処理している。
・払込金額:40,000千円(額面発行)
・転換価格:500円

(2)H21年1月1日に上記の転換社債型新株予約権付社債のうち25%が転換された。

(3)転換社債型新株予約権付社債に係る当期の社債利息は1,500千円である。

5.法定実効税率は40%とする。
6.1株当り当期純利益および潜在株式調整後1株当り当期純利益の算定に当っては、株式数について1株未満を四捨五入すること。また金額について単位は円とし、小数点2位未満を四捨五入すること。


[解説]
あまり理解の進んでいない論点なので克明に見ていきたい。

まず通常のEPSを考えてみよう。条件は?期首の普通株式400,000株+期中発行した株式の期中平均株式数、?当期純利益10,000千円。とりあえずは転換証券が一切転換されなかった場合を考えてみると
10,000,000円÷400,000株=1株当り当期純利益は25円/株となる。


しかし実際は転換証券から20,000株(=10,000千円分)が普通株式として発行されている。この20,000株は当期中の保有期間が1.1~3.31
である。よって期中平均で20,000×90/365=4,932株が実際の増加分となる。改めて正しいEPSは

10,000,000円÷404,392株=24.70円

利益を株式数で割ると24.70円である。こうしたEPSを求める理由はこちら


ここに潜在株式を考慮して考えてみる。

まずは潜在株式についてのおさらい。普通株式を増加させうる事象を把握している場合は、これが全て普通株式になったことを仮定して算出した数字にもニーズがある。また潜在株式とはワラントおよび転換証券を指す。今回は「新株予約権付社債」であるのでこれは証券。つまり転換証券である。あくまでメインは社債であるのでワラントと混同しないように気を付けたい。

さて今回の社債は一括法による処理であるため代用払込が想定される。つまり現金による払い込みはなく、権利行使においては出資は全て社債による現物である。上の資料にある転換転換価格、これは一株あたりの権利行使価額である。社債の総額は40,000千円であるので、この40,000千円が全て当期首に普通株式となった場合は

40,000,000円÷500=80,000株

つまり普通株式増加数は80,000株である。
(※実際に期中に転換されたのはこの内の25%、つまり20,000株であるが、潜在株式調整では権利の全てが最も早いタイミングで行使されたものと仮定する)


ここで「当期純利益の調整額」について説明する。まずは一番重要な考え方から。それは「もし期首に潜在株式が全て普通株式になったとしたら、当期純利益にどのような影響を及ぼすのか」という視点を持つことである。

当社には社債(借金)40,000千円がある。これを期首に全て返済したと仮定する。この仮定が当期純利益にもたらす影響とは、返済によって支払わずにすんだ利息のことである。

資料より当期の社債利息は1,500千円である。ここでは期首のタイミングで全てが転換された(=社債を全額返済した)と仮定するので、これに基づいて社債利息の全額1,500千円を支払わずに済んだ(=当期純利益が増額した)と考える。ただしこのとき税効果を考慮する必要がある。


~税効果を考慮する必要性~

必要性というか、いま問題としているのは「当期純利益の増減額」である(まず前提として社債利息という費用は普通に損金算入である)。

ポイントは、ここで言う「当期純利益」が「税引後当期純利益」であることを意識すること。少し面倒くさい話になるが、社債利息を払った場合(つまり潜在株式を考慮しない場合)に計上された費用は当然利益をマイナスする効果を持つ。
例えば今回の1500が当期に計上した全ての費用、収益は2000だとすると利益は500、ここに40%の税率で課税すると税額は200、ネットの利益が300となる。予約権が全て行使され、社債利息を支払わなかったケースを考えると収益2000がそのまま利益となり、税額は800、純利益は1200である。

ふたつのケースを比べてみると、純利益は300と1200、差額は900。つまり社債利息を支払わなかったと仮定した場合の純利益の増加部分は1500ではなく900である。支払わないと仮定した1500がそのまま利益の増加1500とはならない。費用のマイナスと考えるとややこしいが、新たに生じた収益1500と考えれば、これが純利益を増加されるのは、やはり税額を考慮する必要があるということである。

※長くなったので続きは改めてまとめます。
・会計監査人監査の必要性

会計監査人設置会社は会計監査人監査を行う必要がある。これはなんとも当たり前な会社法の規定だが、会計監査人の設置が義務付けられている会社もある。
?大会社
?委員会設置会社
のふたつである。これらの会社は影響が大きく利害関係者が多いものとして考えられている会社であるため、公正な会計報告の重要性は極めて高い。また企業活動が大規模化・多様化しているため、会計処理も複雑なものとなっている。

こうした状況では会社法の規定による監査役等の監査のみでは十分ではない。監査役等の監査に欠けているものは何をおいても独立性である。内部者である監査人は社会的信頼性を付与するに足る外観的独立性を保つことができない。もしくは監査人が必ずしも会計や監査に関する専門能力を有しているとは限らない。

また金商法に基づく監査は株式を公開している会社を対象としている。したがって会計監査人監査を定めることにより、非公開会社についても法定監査を実施することが可能となり、金商法監査を補完することが可能となる。

さらに会計監査人の設置が義務付けられていない会社(=大会社でもなく委員会設置会社でもない会社)であっても円滑な資金調達を図る目的から会計監査人を設置して、自社の計算書類等の適正性を確保したいというニーズがある。会社法の規定はこのような要請を受けて設けられたものである(ただし会計監査人を設置する場合には監査役の設置が強制される)。


以上のような理由から会計監査人監査の必要性を考えることができる。

まとめ
会計監査人監査の必要性
?監査役等による監査の限界(独立性や知識・経験の不足)を補完する
?金商法監査を補完する