満期保有目的の債券が他の保有目的区分に変更されるのは
?正当な理由に基づき認められる場合
?変更があったと見做される場合
の二通りがある。?はその一部を売却した場合や、(同様だが)保有する能力を認められなかった場合。?は当該債券を保有し続けることによる損失や不利益を回避する為に正答と認められる場合。具体的には以下。
・債券の発行者の信用状態の著しい悪化
・税法上の優遇措置の廃止
・法令の改正または規制の廃止
・監督官庁の規制、指導
・自己資本比率等を算定する上で使用するリスクウェイトの変更

[設例]
当社は満期保有目的の債券としてA社社債を保有している。取得~額面の差額は金利調整であり、償却原価法(定額法)を適用している。
・額面:10000
・取得:9500
・取得日:×1年4.1(当期首)
・満期日:×6年.3.31
・利息:なし
×1年9.30に保有するA社社債の半分(額面5000)を4900(時価)で売却したため、残りのA社社債をすべて売買目的有価証券に振り替える。なお決算日におけるA社社債(額面5000)の時価は4950である。

[解答]
まず売却した分の債券について償却原価を適用する。額面10000を9500で取得しているため、額面5000分の取得原価は4750である。5000と4750の差額を償還までの5年間にかけて定額で償却すると1年当り50。債券の売却は期首の取得から半年後なので利息は25。

(借)投資有価証券 25 (貸)有価証券利息 25

これにより額面5000分の債券は簿価4775となる。これを4900で売却したため差額はその瞬間の損益とする(当初は満期保有目的であった債券だが、売却してしまったことにより投資の目的の変更があった(またはあったと見做される)ため)

(借)現金預金 4900 (貸)投資有価証券 4775、 投資有価証券売却損益 125

この売却の事実によって満期保有目的から売買目的に強制的に振り替えられる(例外的に「正当な理由」が認められ、残存する債券を相変わらず満期保有目的とすることができる場合もある)。

次に残存する額面5000分の債券についても償却原価法を適用した上で保有目的区分の変更を行う。

(借)投資有価証券 25 (貸)有価証券利息 25
(借)有価証券 4775 (貸)投資有価証券 4775

これが区分変更を行ったあとの売買目的有価証券の取得原価である。期末にはこの原価と時価との差額を損益とする。
有価証券の減損は売買目的有価証券以外の3区分の有価証券が対象となる。売買目的有価証券は通常通りの時価評価でもって損失は把握されているためである。

売買目的有価証券以外の有価証券は基本的に評価損が計上されないが、減損処理を行うことで、収益性の低下を評価に反映させる。ただし当該有価証券の『回復可能性が認められる』場合は収益性が低下していないことを意味するため、減損の対象にはならない(あまりこういったケースはないと考えられるが)。

ということで、減損処理の対象となるのは?時価が著しく下落した場合、?実質価額が著しく下落した場合で、いずれも回復可能性があると認められる場合以外のもの(=回復可能性がない、または不明な場合)。

減損処理を行ったあとは戻しいれを行わない。回復可能性がない(または不明)なほどに収益性が低下していると判断した以上、戻入れ処理とはあまり相容れないものである。固定資産の減損においても、簿価と比較するのは割引前の将来CFである。これも減損の認識が、つまり収益性の低下といった実態が相当程度確実であるとの判断を行うためである。このように、有価証券や固定資産の収益性の回復可能性がほとんどない状態である以上、戻入は行わない。

ただし棚卸資産の評価については、『収益性の著しい低下』であるとか、『収益性の回復可能性』などといった要素は検討の対象になっていない。単純な簿価と正味売却価額を比較して、マイナスとなるのであればこれを評価に反映させる。このため棚卸資産については戻しいれを行うことができる(=洗替を適用できる)。

さて、話を有価証券に戻して、「時価の著しい下落」を判定する基準について。時価が取得原価から50%程度以上の下落であれば「著しい」と判断される。30%~50%の下落であれば、企業が判断するものとされている。30%未満の下落であれば、著しい下落には該当しない。
その他有価証券からの変更は除いて、有価証券の保有目的区分を変更する場合、変更時の処理は「変更前の区分に係る処理」を行ったのちに区分変更を行う。変更前の区分が関係会社株式の場合は原価で据え置く、つまり取り立てて処理を行う必要はない。

[設例1]
・期首よりS社株式3000株(簿価75000)を子会社株式として保有している。
・S社株式2500株を1株当り20(時価)で売却し、S社は子会社に該当しなくなったため、S社株式を売買目的有価証券に振り替える。
・S社株式の期末時価は1株あたり22である。

[解答]
・売却時
(借)現金預金 50000 関係会社株式売却損 12500 (貸)関係会社株式 62500

・区分変更
(借)有価証券 12500 (貸)関係会社株式 12500
※振替の価格は簿価をもって計上している。子会社株式の簿価とはすなわち取得原価であり、これを売買目的有価証券とする以上、取得原価と時価の差額が今後の投資の成果となる。この時点で損益を計上しない理由はまだよく分からないが、時価との比較対象としての原価計上なのかもしれない。

・決算時
(借)有価証券評価損益 1500 (貸)有価証券 1500



[設例2]
・期首よりS社株式3000株(簿価75000)を子会社株式として保有している。
・S社株式2500株を1株当り20(時価)で売却し、S社は子会社に該当しなくなったため、S社株式をその他有価証券に振り替える。
・S社株式の期末時価は1株あたり22である。
・その他有価証券の評価差額は全部純資産直入法により処理し、また税効果会計は適用しない。

[解答]
・売却時
(借)現金預金 50000 関係会社株式売却損 12500 (貸)関係会社株式 62500

・変更時
(借)投資有価証券 12500 (貸)関係会社株式 12500

・決算時
(借)その他有価証券評価差額金 1500 (貸)投資有価証券 1500