(1)ディスクロージャー制度の存在意義
投資家と経営者の間に存在する情報の非対称性を緩和し、それが生み出す市場の機能障害を解決するため、経営者による私的情報の開示を、社会的に標準化して促進させること

将来の売却機械が保証されない限り、投資家はそもそも証券の発行市場においてさえその購入に応じようとしないため、情報の非対称性は、証券の発行市場のみならず流通市場においても問題となる。企業が証券市場で資金調達をするかぎり、企業には証券売買を円滑にするように情報の非対称性を緩和する努力が継続的に求められる。

(2)財務報告の目的の意義
投資家による企業成果の予測と企業価値の評価に役立つような、企業の財務状況(企業の投資のポジションとその成果)を開示すること

まず概念フレームワークが想定する「投資家」とは一体どのような投資家を指すのか。昨日から株を始めたデイトレーダーやチャート分析で株を買う者、ヘッジファンドに在籍して金融工学を駆使するトレーダーやフラッシュオーダーを行うGSなど、一口に投資家と言っても様々なありかたが考えられる。概念フレームワークの言う投資家とは「一定以上の分析能力を持つ投資家」である。「一定以上の分析能力」とは、財務諸表から経営分析を行いうるような能力を言い、中長期的な投資を行うもの、一般的には機関投資家などを指すものと考えられる。概念フレームワークでは、1章の「財務報告の目的」の中で、これを「投資家の意思決定に資する情報提供」であるとしている。こうした分析能力を備えた投資家に資する情報が財務諸表であるならば、比較的高度な会計情報を財務諸表に盛り込むことも想定されている。

さて、こうした財務報告において提供される情報では、「投資の成果を示す利益情報は基本的に過去の成果を表す」とある。PLに記載されている利益は、通期の利益=過去の利益というわけである。しかし投資家は将来の利益を予測する。「不確実な将来キャッシュ・フローへの期待」とは、投資家の買った株価が上昇することによって得られる利益への期待ともとれる。要するに公表されたPLに基づいて来期の利益を予測している、という意味だろう。

こうした利益の情報は、しかし単独では効率性(=投下資本利益率)を知りえない。またどういった事業展開を行っているかもPLからは読み取れないため、必然的に投資のポジションの情報も不可欠であることを意味している。

(3)財務報告において提供される会計情報
?市場の効率性と会計情報(および会計基準)

※つづき
財務報告の目的がなぜ重要かについて

(例)資産をどのように評価するかという問題に対して(BSにどういった金額で計上するのか)

財務報告の目的を意識しない
とすると、おそらく「原価主義と時価主義の二項対立」の構図になる。そして目的を欠いたままに議論だけが一人歩きしてしまう。

原価主義では、「原価とは過去に事実であり客観性がある」とされ、また時価主義では「時価とはフェアバリューでありその時点での資産の価値である」とされる。これはいずれも「資産の評価方法」であって、一方に分があるだとか正当性があるといったものではない。


ここで財務報告の目的を意識すれば、いかに「投資家の意思決定に有用な評価値で計上するか」ということに焦点があてられる。概念フレームワークでは、「企業とは投資の束」であるとされ、(事業投資された結果としての)資産の金額は、投資の目的ごとに異なる評価額を付するべきと結論している。


さて、投資家は報告主体(企業)に対して投資をする。具体的には「株式を購入する」という形でもって。なぜ投資家が投資をしたのかといえば、これはその投資家が「儲かるから」と考えたからである。投資家が株式を購入して利益を見込む。これが『投資にあたって期待された成果』である。もちろん実際に儲かるか損するかは将来のことなので分からない。しかし一定期間が経過すれば、いずれその結果は明らかになる。これが『事実として確定した成果』である(株価が上がっただとか、下がっただとか)。
投資家は「投資にあたって期待された成果」と「事実として確定した成果」、つまり今後の株価の「読み」と「結果」を比較検討して、常に期待の改訂を行う。「期待の改訂」は常時連続的に行われ、時としてそれは行動となって表れる。予想よりも株価が伸びないので売却してしまうだとか、予想よりも株価が伸びている又は今後さらに伸びそうなので買い増しをする、などといった形で。

財務報告が投資化の意思決定に有用である為には、財務報告そのものが投資家の「期待された成果」、「確定した成果」、「これらに基づく期待の改訂」のプロセスに整合的である必要がある。

投資家の行う金融投資に対して、企業は事業投資を行っている。株主から払い込まれた資本を運用して、工場を建てる、あるいは商品を仕入れるなどの事業投資を行う理由は、やはり「儲かると思った」からである。企業は赤字化すると分かっていて工場を建てることはないし、また採算性もなく商品を仕入れることもない。つまり企業の側にも「投資にあたって期待された成果」があるということである。このように企業も常に投資活動を行っている主体であるならば、「投資に当たって期待された成果」はいずれ「事実として確定した成果」となる。しかし、この事後の成果は、投資の目的によりどうやって測定すべきかは異なる。

例えば企業であっても金融投資を行うことは考えられる。企業がトレーディング目的の有価証券を購入した場合の「投資に当たって期待された成果」を生み出すのは「市場価格の有利な変動による利益の獲得」である。言い換えれば、企業が有価証券を購入したのは「その株価が値上がりすることを目的にしている、ということ。

一方、事業投資の場合。本業の「事業活動を通じて、当初投資額よりも多くのキャッシュを生み出すこと」を目的にしている。当たり前だがこの違いには注目したい。企業が工場を建てる。このときの目的は、その工場が値上がりして転売することではない(普通は)。工場を稼動させ、製品を製造して販売し、最低限工場の建設費や製品製造の為に要した投資額を上回る利益を得るためである。あるいは商品を仕入れる目的は、仕入のコストよりも多くのキャッシュを得るがためである。

このように企業の投資は「金融投資」と「事業投資」に分けることができるが、このときにそれぞれの投資によって得た資産を同一の観点から計上することが適切なわけではない。どうすれば正しい測定となるのかは、財務報告の目的に照らして考えるべきである。つまり、どの金額で計上することが投資家の意思決定にとって有用であるか、という視点である。

例えば金融投資、中でも売買目的有価証券を考えてみよう。測定の基準となる候補はふたつ。「原価もしくは時価」である。株式であれば、単一の市場と相場が存在する。決算日の終値は客観的な金額、いわゆる「市場の平均的な期待」といわれる価格である。これは誰が算定しても、また売ろうとしても同一の値段となる。また決算日時点で売る意思があるのなら、その時の相場で売ることも可能である。さて、「企業が売買目的有価証券」として保有している株式であれば、文字通り投資の目的は売却である。こういった条件(=投資のリスクから解放されていると考えられる資産)の下、投資家にとって取得原価と期末時価のどちらが有用な情報であるかと言えば、これは当然期末時価である。そして実際に有価証券の評価差額は損益処理されている。

これに対して事業投資。例えば土地を考えてみる。企業が土地を買う(土地に事業投資)するのは、(これも例えば)その土地の上に工場を建て、製品を製造し、これを販売して利益を得るためである。この場合の評価基準の候補は上記の金融投資のように「取得原価もしくは時価」なのだろうか?この事業投資の目的を考えれば、時価ではありえないことが分かる(この土地を転売する意思がないのだから)。ということで、BSに計上すべき金額の候補としては「取得原価もしくは将来CF」である。候補の後者、将来CFとは、この土地が生み出すであろう将来的な利益をBSに計上するということである。事業投資である以上、目的は将来CFの獲得であるのは明白であるし、さらにそれが土地の取得価額を上回る(と経営者が考えている)ことも確実である。なぜなら、土地を購入したのは「投資に当たって期待された成果」が存在するからであって、そうである以上は利益が出る=土地に利用することで取得価格を上回る将来CFがあると考えられているからである。しかしこの将来CF、これは誰が算定するかによって異なる。これが金融投資(というか株式)と大きく相違する点である。経営者の「黒字化する」との判断、つまり土地から得られると経営者の見積もる将来CFは『報告主体の主観的な期待』と呼ばれる(株式の「市場の平均的な期待」との対比で)。さて、経営者による「黒字化する」との判断は、土地の生み出す将来CFが土地の取得原価を上回る、との判断と言い換えることができるが、経営者の見積による将来CFから取得原価を差し引いた数字は主観のれん、または自己創設のれんと呼ばれる(詳しくは後で学習するが)。しかし、この部分はある意味、経営者の言い値であるし、また本来的には投資家が判断すべき部分でもある。そうであるならば、(投資家の意思決定に有用であるかどうかの観点から)BSに将来CFとして土地を計上する必要はないと結論づけられる。ということで、事業投資から得られる将来CFは、投資家が各自見積もるとされている(誰が算定するかによって異なるため)。この為、土地は取得原価でBSに計上されているのである。

事業投資をもうひとつ例にあげてみると、商品販売業における仕入(商品)がある。これは土地と異なり売却が目的である点においては金融市場と同一であるが、市場が単一ではない。当然だが仕入先と得意先は別の相手である(購買市場と売却市場)。このときの利益の源泉は、二市場間の価格差である。二市場間といっても、「誰が売るのか」、また「誰に売るのか」によって価格は異なると考えられる。つまりここでも「商品」の仕入れにあたって期待された成果というものは、算定する者により異なる、すなわちキャッシュを商品に変えるということが事業投資であるということになる。株式と異なり、いつでも売れるわけではなく、またその売却価格も様々であるのならば、やはり自己創設のれんが計上されることになるが、これをBS金額とすることは「投資の目的」から考えれば適切ではないという結論が得られる。

さて、長くなったが「財務報告の目的がなぜ重要か」については、BS等において計上すべき金額を導き出すため、と言える。
これまで見てきたのは概念フレームワークの本体ではなく前文部分。本文は全4章からなるが、とりわけ重要なのは1章の「財務報告の目的」。なぜディスクロージャー制度が存在するのか、なぜ財務報告が必要なのか。これについて具体的に言及した基準は今まで存在しなかった。しかし概念フレームワークはこれを「投資家に対する情報提供」としている。

[ディスクロージャー制度と財務報告の目的]
1.企業の将来を予測する上で、企業の現状に関する情報は不可欠であるが、その情報を入手する機会について、投資家と経営者の間には一般に大きな格差がある。このような状況の下で、情報開示が不十分にしか行われないと、企業の発行する株式や社債などの価値を推定する際に投資化が自己責任を負うことはできず、それらの証券の円滑な発行・流通が妨げられることにもなる。そうした情報の非対称性を緩和し、それが生み出す市場の機能障害を解決する為、経営者による指摘情報の開示を促進するのがディスクロージャー制度の存在意義である。


まず経営者は企業の情報を知り得るが投資家はこれを知りえない立場にある。しかし投資活動には企業情報が不可欠である為、経営者はその情報を開示している。この「情報開示が不十分」であるとは、おそらく重要な虚偽表示や、開示すべき情報が開示されていない、もしくは統一的な形式による開示ではないことなどが考えられるが、こういった状況では自己責任に基づく投資活動を行いがたい。このため情報開示を画一化した「ディスクロージャー制度」に存在意義がある。

2.投資家は不確実な将来キャッシュ・フローへの期待のもとに、自らの意思で自己の資金を企業に投下する。その不確実な成果を予測して意思決定をする際、投資家は企業が資金をどのように投資し、実際にどれだけの成果をあげているかについての情報を必要としている。経営者に開示が求められるのは、基本的にこうした情報である。財務報告の目的は、投資家の意思決定に資するディスクロージャー制度の一環として、投資のポジションとその成果を測定して開示することである。

「不確実な将来キャッシュ・フロー」とは企業がこれからあげる利益。つぎに重要な一文、『財務報告の目的は、投資家の意思決定に資するディスクロージャー制度の一環として、投資のポジションとその成果を測定して開示すること』とある。ここで概念フレームワークは財務報告の目的を明確にしている。財務報告とは投資家の意思決定に役立つ情報提供であると。

3.財務報告において提供される情報の中で、投資の成果を示す利益情報は基本的に過去の成果を表すが、企業価値評価の基礎となる将来キャッシュ・フローの予測に広く用いられている。このように利益の情報を利用することは、同時に、利益を生み出す投資のストックの情報を利用することも含意している。投資の成果の絶対的な大きさのみならず、それを生み出す投資のストックと比較した収益性(あるいは効率性)も重視されるからである。

PLのみならずBSも重要であることに触れている。利益の絶対的な多寡よりも、純資産の額と比した利益が重要であると。
「企業価値評価の基礎」とあるが、ここでいう企業価値とは概ね株価を意味すると思われる。株価は利益に連動し、現在の株価が割安なのか割高なのかはPLの数値を価値評価モデルに算入して求める。将来的にこの株価の上下を予測する場合は、将来の利益を予測することである(=「将来キャッシュ・フローの予測」)。