予備試験では、法律科目7科目と法律実務基礎科目の他に、一般教養科目も試験科目となっていますが、一般教養科目については、短答・論文どちらも、過去問数年分を解く位で、それ以外の対策をしない(法律系科目を優先する)ことが、予備試験対策としては一番効率が良いのではないかと考えています。

 

まず、一般教養科目の短答試験ですが、社会科学・人文科学・自然科学・英語の4分野から、問題を見た上で、自分で回答する問題を選択できるので、試験会場の場で、自分の解ける問題を見つけ出すことが重要です。

 

私は自然科学・英語は諦めていたので、ほとんど社会科学・人文科学からしか得点できませんでしたが、過去問を数年分解いたところ、どの年度でも概ね30点は確保することができましたし、20点を下回ることはないだろうなという感触でした。

 

TACの中村充講師の「やはり出題者は、テクニック(≒日本語力)を使って解くルートも設定しているとしか思えない」との感想には私も同意見です。

 

ですので、一般教養科目の短答は、過去問を数年分解くことで、試験本番で自分が解ける問題を見つける方法を体感しておくことが大事だと思います。そうして一般教養科目で20点位を確保できるようにしておけば、後は法律科目の短答過去問をぐるぐる回した方が、短答の得点はあがりやすいし、短答の合格をより確実にできると思います。

 

次に一般教養科目の論文ですが、短答対策以上に、論文は法律科目の対策で精一杯で、一般教養科目まで手が回らないまま本番を迎える受験生が多いと思いますし、私も、そうでした。

 

ただ、一般教養科目の論文は、短答と違って、大学受験の現代国語やロースクール入試の小論文試験で問われるようなジャンルから出題されますから、私は、以下の本を読んで、評論文によく出る用語に慣れておく、という対策を取りました。元々読書が好きだったので、法律科目の勉強の息抜きとして読んでました。

 

 

 

 

『教養としてのロースクール小論文』は、品切れでプレミアがついていますが、(一般教養科目の対策本としては)何回も読む類のものではないので、図書館で探してみるか、なければ他の、大学・ロースクール受験や公務員試験用の現代国語・小論文の問題集で、評論文に慣れておくのでも問題ないと思います。(可能であれば、この本の一読をお勧めします)

 

論文対策は、予備試験合格後(司法試験)のことを考えても、法律科目の対策を優先するべきですし、法律科目の論文対策として、具体的に問題を検討し、要点を捉えた論文を書く訓練をしていれば、それが一般教養試験の論文対策にもつながるので、それで十分なのではないかと思います。

 

予備試験の受験対策として語りたいことは以上です。

 

ここからは先は受験対策から離れた話なのですが、私は一般教養科目で安定して得点を取ることができました(予備試験を2回受験して、短答は30~40点、論文は2回ともA評価でした)。その理由の一つは、大学生の頃に、一定量の読書をしていたことが原因ではないかと思ってます。

 

大学時代は、なんとなく思い立ち、1学年の間に100冊の本を読むという目標を立てていて、法律の本の他に、文庫・新書を中心に、社会科学(政治学や社会学)や人文科学(哲学・歴史学・心理学など)の入門書、会計・投資関係のビジネス書、自然科学の一般向けの解説書、外国の近代古典小説、現代のベストセラー小説やライトノベルなどを中心に、結局4年間で500冊くらい読みました。

 

読書家の方にはもっと沢山の本を読む人は大勢いますが、一定の期間に大量の文章を読んだ経験が、働きながらの受験でも予備試験・司法試験に合格することができた素地を作ったのではないかと感じています。

 

日中に仕事がある社会人の方は、予備試験の勉強に加えて読書の時間をとる余裕は難しいと思います(私も司法試験に受かるまでは読書量をかなり制限していました)が、もし学生の方で、この記事を読んでいる方がいたら、予備試験・司法試験の受験対策とは切り離して、年100冊とはいかないまでも、文庫・新書を年50冊(だいたい1週間に1冊)読む位の時間は読書に充てても、長い人生を考えたら損ではないのかなと思っています。

 

(こんなことを書かなくてもそれ位の読書をしてる人は多いのかもしれませんが、私は大学に入学するまでほとんど読書をしていなかったので、あえて書きました。)

 

本を1冊読むといっても、ハードカバーの600ページの本もあれば200ページの文庫本もありますし、最近は電子書籍が普及し、フォントのサイズによってページ数まで変わる時代ですから、冊数にとらわれず、色々なジャンルを開拓するつもりで読書を続けていけば、きっと数年後には、読書をしていてよかったと思える瞬間が来ると思います。

30年度予備試験行政法の問題を読んだので感想を書きました。

 

以下、ネタバレになりますのでご注意ください。

また、あくまで問題を読んだ感想であって、解説でも答案例でもありませんのでご了承ください。

問題文はこちらから確認できます。
 

まず、Y県条例について、条文番号が一致しているので、東京都消費生活条例が元ネタである可能性が高そうです。

 

東京都消費生活条例、逐条解説等はこちらのページで公表されています。

 

 

東京都条例の逐条解説と照らし合わせると、Y県条例25条は、東京都条例の25条1項及び同項が委任する規則の規定、それらと25条2項と合体させたもののようです。

 

なお、Y県条例48条は「指導し,又は勧告することができる」となっていて、東京都の条例は「指導し、及び勧告することができる。」となっています。

 

法制執務のお作法は国と自治体、自治体間でも異なることがありますが、司法試験委員会としては、この箇所は「又は」を使うべきということなのでしょう。

設問については、ざっと読んだ限り、設問2はこんなものだろうという感じですが、設問1の出題には違和感を覚えました。

 

設問1では、勧告・公表の処分性を肯定する方向での検討が求められています。

 

先に公表について考えてみます。

 

実際にY県で消費者被害が生じている状況を想定とすると、勧告に従わない(Y県が不適正な取引行為と認めた行為を継続している)事業者についてこそ、勧告に従わなかった旨を公表し、住民に情報提供を行うことで、更なる消費者被害を防止する必要がある、という理屈はそれなりの説得力があると思います。

ですので、Y県の反論として、消費生活条例50条の公表は、県民の消費生活の安定と向上を図ることを目的とした情報提供であり、単なる事実行為にすぎない(制裁的公表ではない)との反論が想定されますが、この反論を乗り越えて処分性を認める理屈をたてるのは中々骨が折れそうです。

また、勧告の処分性については、勧告は通常、行政指導であり処分性が認められないと考えられています。

 

勧告の処分性を認めた判例といえば病院開設中止勧告ですが、あの判例は、勧告に従わないことが、保険医療機関の指定拒否に繋がることが相当程度確実であること、保険医療機関の指定が得られないのであれば、結局は病院の開設を断念せざるをえないことをもって処分性を認めています。

一方で、予備試験の問題文から読み取れるXの不利益は、「融資が停止されると経営に深刻な影響が及ぶ」という箇所にしか見当たらず、これはXにとって重大な不利益ではあるとしても、あくまでXと金融機関Aとの関係にすぎません。

 

病院開設中止勧告の判例を基に処分性を認めることは難しそうですし、Y県条例及び資料の(注)を基に、処分性を肯定する方向での検討は相当書きにくいだろうなと思いました。

このようなことから、設問1は、抗告訴訟に限定した上で処分性を肯定させる方向での検討ではなく、実質的当事者訴訟も含めた実現性の高い訴訟上の手段を検討させる出題の仕方もあったのではないでしょうか。

 

(予備試験の制限時間内で受験生が解くことができるかという出題者側の制約もあるので、難しいのかもしれませんが。)

その他に問題文を読んでいて気になったのは、4段落目に「本件勧告は対外的に周知されることはなかったものの」とある箇所です。

Y県条例50条で「その旨(注:勧告に従わないこと)を公表するものとする。」と規定されているのに、Y県が、公表を行わないという条例違反を放置しているようにも読めるからです。

 

※「公表することができる」ではなく、「公表するものとする」とある場合、勧告を打った以上は公表の有無について裁量の余地はなくなるものと解されます。 

 

もっとも、5段落目に、本件公表がされることも予想された、とあるので、Y県は公表をしないまま放置している訳ではなさそうです。

Y県側の対応としては、Xから抗議があったので公表の実施について慎重に検討している、とか、勧告直後の話でY県としては公表の準備中である、とかが考えられます。

 

ですが、何かしらY県側が公表すべく動いているのであれば、「対外的に周知されることはなかった」という表現だけではY県が公表の実施についてどのように考えているか分からず、かえってミスリーディングな表現だと思いました。
 

…という訳で、感想を書くだけなので書きたいように書きましたが、私がこの年の受験生だったら苦戦しただろうなと思います。出題趣旨が公表されたら追記するかもしれません。

法律実務基礎科目は、予備試験の受験勉強を開始後、早い段階で対策を始めることが、早期の合格に有効だと思います。

 

タイミングとしては、民法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法の4科目について、入門書(と必要に応じて薄めの教科書)を読み、短答過去問のうち受験生の正答率が高い問題を解けるようになった段階から始めても良いのではないかと思います。

 

法律実務基礎科目の対策をなるべく早く始めた方が良い理由は3つ考えられます。

 

1つ目の理由として、予備試験の論文試験において、点数配分が他の科目2科目分と高いからです。点数配分が高いところから試験対策を始めるのは、予備試験に限らず試験一般の定石です。

 

私が、働きながら、受験2回目で予備試験に合格できた一因は、法律実務基礎科目を重視したことにあると思います。

 

 

早期対策をお勧めする2つ目の理由は、論文問題を解く上で必要な思考方法を習得でき、「条文の文言を解釈すること」に敏感になれるからです。

 

言うまでもなく、司法試験・予備試験は実務家登用のための試験であり、要件事実など、実務家が体得している思考方法を身に着けることは、論文試験対策に直結すると考えていました。

 

要件事実的発想を身に着けると、過去問・演習書の解説を読む際、ひいては論文を書く際に、常に条文の文言と解釈をリンクさせるクセをつけることができます。

 

例えば、民法177条について、どのような物権変動が対象になるかに関する無制限説と、第三者の範囲に関する制限説があります。

 

これは学習の初期段階では、何が何を制限しているのかいないのか、非常にややこしく感じるところです。

 

これを条文に照らしてみると、民法177条のうち、「不動産に関する物権の得喪及び変更」は特に制限されてなくて、相続や取得時効を含めた、あらゆる物権変動が登記を必要とするんだな(無制限説)、「第三者」は「登記の欠缺を主張する正当の利益を有する第三者」に限定しているんだな(限定説)、と整理すれば、無制限説・制限説といった学説の名前を覚えるよりもだいぶ頭に入りやすいですし、試験本番でも思い出しやすいです。

 

民法177条「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法 (平成16年法律第123号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。」

 

これは民法に限った考え方ではなく、例えば、司法試験の行政法では(多くの受験生にとって)初見の個別法が出題され、問題文と誘導に従って回答に必要な条文を選択したうえで、初見の条文の解釈を行うことが求められます。

 

この、初見の個別法の解釈も、(他の科目も含めて)日頃から条文のどの文言が要件として機能しているかを意識して勉強し、論文過去問で出題形式に慣れれば、特に暗記を必要としないで、合格に必要なレベルに到達できるものだと思います。

 

※私の場合は、地方公務員として(特定の)個別法の解釈・運用に関わっていたというアドバンテージがありますが、行政法の論文の出題傾向はかなり偏っているので、過去問の演習で十分対応できると思います。

 

実務家の思考方法を身に着ける、条文の文言を意識する、という観点から私が使用したのは以下の2冊です。

 

大島眞一『完全講義 民事裁判実務の基礎』
 

大変読みやすく、特に要件事実の部分は、民法の規定がそのまま普通に適用されるとどのような法律効果が発生するのかを学ぶことができ、民法の基礎固めにも繋がります。分厚い本ですが、早めに一読することをお勧めします。

 

大島先生の本は、私の頃は上下巻でしたが、今は入門編・発展編に再編成されています。この再編成により、学習初期段階でもかなり取り組みやすくなったのではないかと思います。

 

 

新庄健二『司法試験&予備試験 刑法・刑事訴訟法・刑事実務論文 虎の巻』

 

 

こちらの新庄先生の本も大変分かりやすいです。刑法、刑事訴訟法の重要論点についての解説を通じて、実務について目の前の講義を聴くように読み進めることができ、刑事系全般の理解が深まります。(ただ、2012年出版なので、法改正のあった箇所は注意が必要です。)

 

 

法律実務基礎科目の早期対策をお勧めする3つ目の理由は、過去問や演習書を通じて判例を学ぶ学習効率を格段に向上させるからです。

 

司法試験では、どの科目でも重要判例の理解が問われますが、判例を正確に理解するためには、どのようにして判例ができあがるのか、訴訟の流れを把握しておくことが重要です。私が意識していたこととしては、

 

①その判例が「民事・刑事・行政」のどの事件についての訴訟なのか、

②当事者が誰か(原告・被告、検察官・被告人)

③どのような結論に至ったのか(民事・行政事件なら認容・棄却、訴え却下、刑事事件なら有罪、無罪、控訴棄却、免訴)

 

をまず押さえてから、どのような事実関係だったかを確認し、その上で判例を読むことで、その判例の意味・位置づけを理解するようにしていました。

 

特に、民事・刑事・行政の3種類の判例が混在している憲法の判例を理解するためには、この前提条件を整理してから判例を読まないと頭が混乱してしまいます。

 

また、判例の中には、どうして裁判所がその論点について判断を示したのか(示す必要があったのか)が理解の肝となる判例もあります。

 

そのような判例を理解するためには、訴訟において当事者がどのような活動(攻撃防御)を行い、裁判所はどのような手続で訴訟を進行するかを知っていることが、前提条件として必要になります。

 

さらに、訴訟手続については、判例の理解に資するだけでなく、(試験対策としてはこちらの方が重要な意味を持ちますが、)民事訴訟法・刑事訴訟法の短答試験や、法律実務基礎科目の論文・口述試験でも出題されます。それも、公判前整理手続など、条文が複雑で、大抵の受験生が嫌だなと思う訴訟手続を聞かれます。

 

訴訟手続の流れを1回学ぶだけで頭に定着させることは難しいので、1回で全てを理解しようとせず、学習の初期段階から手続の全体が分かる薄い本を読み、その後も、演習書や過去問を一通り解いたタイミングなどに読み返すのがよいと思います。

 

私が訴訟手続の把握のために使用したのは以下の本です。
大島眞一『完全講義 民事裁判実務の基礎』上巻のうち、「民事訴訟の基本構造」と「訴訟物」「要件事実総論」
法曹会『民事訴訟第一審手続の解説』、『刑事第一審公判手続の概要』

 

 

最後に、法律実務基礎科目の演習書についてですが、演習書の種類がそもそも少ないです。

 

その中で、民事・刑事のバランスが取れ、質・量とも一定以上の問題が確保されているものは、私の受験当時、東京リーガルマインド『新・論文の森 法律実務基礎』しか見当たりませんでしたが、この演習書は大変使いやすかったです。

 

この演習書を読み込み、論文過去問を書き、その他には上記で触れた本を読むことで、予備試験合格時には、法律実務基礎科目でA評価を得ることができました。費用(時間)対効果の観点では、非常に高い結果でした。

 

私が合格した平成27年以降の出題傾向を把握していないので、今はより適切な演習書等があるかもしれませんが、何を使用するかはともかく、法律実務基礎科目を重視することは予備試験対策として、かなり効率的な方法だと思っています。

 

※記事全体の補足

この記事で書いたことのうち、

①法律が普通に適用されるケースを学ぶことの重要性、

②判例の読むために必要な知識、

③各科目にとらわれず科目間のリンクを意識すること、

は、横田 明美『カフェパウゼで法学を―対話で見つける〈学び方〉』により詳しく書かれています。

 

上記①と②は同書P48「column「1年生のうちに知っておきたかった!」法律学習の落とし穴」に、③はP252以下「(1)法学科目間に〈リンク〉を張る」に書かれています。

 

 

 同書は、司法試験対策に特化した本ではなく、広く法学を学ぶ際のコンパスとなる本ですが、司法試験対策として活用できる部分もあり、また、勉強以外を含めた時間の管理方法や合格後のキャリアを考えるきっかけとして、司法試験受験生にもお勧めの一冊です。

司法試験の勉強方法の一つとして、条文の素読があります。

 

私も、司法試験・予備試験の対策の一つとして取り入れていましたが、ただ単に頭から1条ずつ読んでいく方法では、眠気は生じるものの、試験対策としての効果を実感できませんでした。

 

そこで、自分なりに工夫して、以下のように条文の素読を行っていました。

 

条文素読の目的

条文を素読する目的を考えてみると、

①法律の全体像をつかむこと、

②試験本番で正確かつ素早い条文検索ができる能力を身に着けること、

の2つが思い浮かびます。

 

この①と②は関係していて、法律の全体像をつかんでいるからこそ、法律の体系のどこに探したい条文があるかが自然と思いつき、素早い条文検索が可能になります。

 

また、素読を繰り返していく中で、個々の条文がどこに配置されているか、条文の配置の流れ(立法者による配置の意図)を理解していくことで、法律の全体像をつかむことができるのだと思います。

 

①の「全体像をつかむこと」はどの科目でも重要ですが、②の「条文検索能力」は、条文数の多い民法・会社法や、条文の見出しがついていない刑事訴訟法で特に重要になります。

 

この2つの目的を達成するために、私は段階的に素読の範囲を増やし、具体的には、

(1)目次だけを読む

(2)目次と条文の見出しだけを読む

(3)目次と条文の見出しと本文を読む

の順に、条文を素読する範囲を増やしていきました。

 

(1)目次だけ読む

読書を効果的に行う方法論として、本の目次を意識して読み進める、というものがありますが、それを条文の素読に応用し、まずは各法律の冒頭の目次だけを素読の対象としました。

 

目次だけだとすぐに読み終えることができるので、短答・論文過去問の問題集・解説書や演習書を1冊読み終えた際、科目全体を振り返るために、目次だけを読んでいました。

 

目次だけで意味があるのか、と思われるかもしれませんが、例えば、民法の成年後見制度に関する条文は、総則編の「行為能力」の章(第1編第2章第2節)と、親族編の「後見」の章(第4編第5章)に分かれています。

 

繰り返し目次を読むと、このような、複数の章にまたがって一つの制度を定めている条文の配置を頭に定着させることができます。

 

また、特に会社法は目次が緻密に作られており、司法試験本番で問われる可能性が高い条文を、目次から素早く検索することが可能です。

 

例えば、募集株式の発行等をやめることの請求(会社法210条)は、株主側の立場から、不利な株式発行を阻止する手段の一つとして、受験生として押さえておくべき条文だと思います。

 

この条文は、会社法の「第2編 株式会社 第2章 株式 第8節 募集株式の発行等 第5款 募集株式の発行等をやめることの請求」に配置されていて、目次からそのものズバリの条文を探し出すことができます。

 

会社法に限らず、試験本番で探したい条文の条文番号が思い出せないときは、目次から探すことが時間短縮になります。

 

目次を繰り返し読み、各法律がどのような目次で構成されているかを熟知しておくことは、条文検索能力の向上に直結します。

 

(2)目次と条文の見出しだけ読む

司法試験の試験科目の中でも、民法・会社法は約1000条、刑事訴訟法は約500条、民事訴訟法は約400条と、条文の分量が多いです。

 

また、会社法に顕著ですが、複雑な構造の条文があったり、1つの条文が1ページ以上続くなど、単純に読むだけではやる気をそがれる可能性が高い条文も多くあります。

 

そこで、目次を複数回素読した次の段階では、法律の全体像をつかむため、目次に加えて、条文の見出しを素読することにしました。

 

例えば、会社法ですと、まず、目次を読んだ後、 「第一編 総則 第一章 通則 (趣旨)第一条 … (定義)第二条 … (法人格)第三条 … (住所)第四条 … (商行為)第五条 … 第二章 会社の商号 …」 という感じで、条文の本文は飛ばして、目次と見出し、条文番号だけを読んでいきます。

 

見出しを読んでいて、この見出しの条文に何が書いてあるか気になるな、とか、この条文は前に演習書で見た気がする、というものがあった場合には、条文の本文も確認するようにしていました。

 

ただし、目次と見出しを素読するのが目的なので、本文は読んでもさらりと目を通すだけにしていました。

 

条文の見出しを読むと、目次だけでは分からなかった、各法律の章・節・款の中にどのような条文があるかを把握することができるので、個人的には法律の全体像を把握するために大変有効だと思います。

 

特に、条文数の多い会社法は、見出しだけでパパッと素読していくことで、株式の章と新株予約権の章で同じような条文配置になっていることに気付くことができるなど、苦手意識の解消に効果があったと感じています。

 

(3)目次と条文の見出しと本文を読む

目次と条文の見出しを読むことに慣れてきた段階で、いよいよ条文の本文も含めた素読に移ります。

 

本文も含めての素読となると、かなりの分量になるので、編又は章の単位など、ある程度まとまった単位で区切って素読を行いました。

 

私の場合は、一日で法律全体の素読を終えられるのは、憲法や行政手続法・行政事件訴訟法など、100条に満たない法律だけで、他の法律は複数日に渡って素読を行いました。

 

条文素読が複数日に渡る場合には、編又は章を読み終えるごとに目次に戻り、前後の編・章を確認するなど、できるだけ、法律全体がどのような条文配置になっているかを忘れないように心がけました。

 

また、論文過去問や演習書で見たことがあるといった記憶を頼りに、「この条文は論文でよく聞かれているな」「この条文は短答でしか聞かれていないな」と、自分の頭の中で条文の重要度にランク付けをしながら素読を行いました。

 

会社法については、素読に要する時間に対して論文で出題される可能性が低いだろうと判断し、清算(475条~574条)や社債(676条~742条)の条文は、見出しの素読に留め、条文本文は素読しませんでした。

 

ただし、重要だとは思っていなかった条文が実は重要なものだったと後で気付くこともあるので、会社法以外の法律は、全ての条文を素読しました。

 

なお、学習用六法についている参照条文については、1つの条文をピンポイントに調べた際、関連する条文にたどり着くために有効だと思いますが、法律そのものではなく、市販の六法の編者が書いたものなので、素読の対象とはしませんでした。

 

素読に使用する六法

私の場合は、以下のように使用する六法を変えていきました。

(1)受験初年度にデイリー六法を購入

(2)初回の予備試験の論文試験後は、持ち帰った予備試験用法文を使用

(3)2回目の論文試験後から口述試験合格まではその年に持ち帰った予備試験用法文を使用

(4)予備試験合格後は、市販の司法試験用六法を購入

(5)初回の司法試験受験後は、持ち帰った司法試験用六法を合格まで使用

 

なお、刑事訴訟法には、オリジナルの法律には見出しがついておらず、憲法には見出しだけでなく目次もついていませんが、市販の学習用六法には各出版社が便宜上の目次と見出しを付けています。

 

そのため、刑事訴訟法・憲法について、目次・見出しの素読を行うためには、市販の学習用六法を使う必要があります。

 

また、デイリー六法を選んだのは、会社法の準用条文について、条文本文の中に、準用元の条文の見出しをカッコ書きで表示しており、読みやすかったからです。

 

(余談ですが、学習用六法にはポケット六法という王者がいるので、デイリー六法はより使いやすい六法になるよう、細かいところも含めて毎年工夫をこらしているように思います。)

 

学習の初期段階では、上記のように学習しやすいよう配慮された学習用六法を使用した方が、法律の全体像をつかみやすく、効果的だと思います。

 

受験2年目以降は、試験本番での条文検索を意識して、予備試験用・司法試験用六法を使用していました。

 

試験本番で配布される法文は、ポケット六法やデイリー六法とは大きさが違うので、試験本番で違和感を感じることがないよう、予備試験用・司法試験用六法に使い慣れておくことは大切です。

 

私は、受験2年目以降は市販の六法はほとんど使わず、憲法・刑事訴訟法の目次・見出しの素読に受験初年度に買ったデイリー六法を使う位でした。

 

施行規則について

会社法、民事訴訟法、刑事訴訟法については施行規則が短答・論文過去問や演習書で出題されています。

そこで、過去問・演習書で出題された規則は、法律の条文の側に書き込みをしておき、素読の際は、書き込みのある規則も読むようにしていました。

 

例えば、民事訴訟法133条の側に「規53」と書き込んでおき、民事訴訟法133条を読む際には、民事訴訟法施行規則53条もあわせて読む、という具合です。

 

民事訴訟法施行規則53条は、「訴状には、請求の趣旨及び請求の原因(請求を特定するのに必要な事実をいう。)を記載するほか、請求を理由づける事実を具体的に記載し…(以下略)」と規定しています。

 

この条文は、「請求の趣旨」「請求の原因」「請求を理由づける事実」が異なる概念であることを定めている上に、「請求の原因」をカッコ書きにより定義しており、要件事実を考える上での立脚点となる条文として、民事訴訟法施行規則の中でも特に重要な条文だと思います。

 

その他にも、会社法では、株主総会における取締役等の説明義務が免除される場合に関する会社法施行規則71条や、刑事訴訟法では、法309条の異議申立ての事由について定める刑事訴訟法施行規則205条など、法律だけでなく規則まで読まなければきちんと理解することができない制度は多くあります。

 

ですので、過去問・演習書で規則が出てくると面倒に感じるところではありますが、自分が使用している六法に書き込みをしておくと、条文素読がより一層効果的になると思います。

 

なお、民事訴訟法と刑事訴訟法については、規則の重要性が特に高く、予備試験の法律実務基礎科目や口述試験で聞かれる可能性は充分にあり、司法試験で聞かれることもありえると考えていました。

 

そこで、法曹会『民事訴訟第一審手続の解説―事件記録に基づいて』と『刑事第一審公判手続の概要 〈平成21年版〉 - 参考記録に基づいて』を通読しながら、それぞれの本に出てくる規則を六法に書き込み、素読の対象に含めていました。

 

準用条文を定める条文

条文を素読していると、その条文を読んだだけではさっぱり分からない条文が出てきます。その代表的なものが、引用条文を定める条文です。

 

例えば、刑事訴訟法222条1項は、捜査段階における押収・捜索・検証について準用条文を定めていますが、222条1項だけを読んでもあまり意味はありません。

 

私も、刑事訴訟法の学習を始めてからしばらくの間は、この222条1項を見るたびに、どうしてこんなに準用条文が多いのだろうと苦手意識がありました。

 

ですが、これはもう諦めて一度読むしかないと、222条1項とあわせて準用されている条文を一気に確認してみると、222条1項が準用している条文と準用していない条文に意味があることに気付くことができました。

 

例えば、222条1項が準用している99条には、「…必要があるときは、証拠物…と思料するものを差し押さえることができる。」とあり、この規定は、差押えの範囲がどこまで認められるかが問題となる際の出発点となる条文です。これは確かに準用する必要があるなと分かります。

 

また、222条1項は、「…第110条から第112条まで、第114条…」を準用しており、113条は準用していません。そこで、113条を確認すると、113条は、検察官・被告人・弁護人が差押え等に立ち会うことができる旨を定めています。

 

そこで、捜査段階では差押え等への立会いは認められていないのか?と思って222条を確認すると、222条6項に、必要があるときは、被疑者に立ち会わせることができる旨が規定されています。

 

つまり、違う内容を定める必要があるから、あえて222条1項で準用しなかったのだとわかります。

 

そして、ここから、捜査段階と公判段階でなぜ異なる規定を設けたのかについて、自分で考えを巡らせることもできますし、演習書等の解説をより深く理解することも可能になります。

 

準用条文をまとめて規定している条文は、このように、準用している条文だけでなく、連続して準用している中で抜けている条文がある場合には、どうしてこの条文を準用しなかったのかを考えると、理解が深まります。

 

なお、刑事訴訟法222条1項については、私自身、平成27年度予備試験の口述試験で222条1項が準用する111条(必要な処分)について条文番号を回答することを求められました。

 

論文試験でも出題される可能性が高いところですので、面倒くさいことは諦めて、222条1項が何を準用して、何を準用していないかは、自分で六法を引いて確認しておいた方が良いと思います。

 

2~3回確認をすると、その後の刑事訴訟法の勉強がすごく楽になります。

 

なお、論文試験のことを考えると、準用条文の確認は、司法試験用又は予備試験用法文を用いて行った方が良いでしょう。

 

以上が、私が工夫してみた条文の素読方法です。論文を解く際の出発点は必ず条文になりますから、自分なりの方法で素読を行い、六法に慣れ親しんでおくことは重要な受験対策になると思います。