30年度予備試験行政法の問題を読んだので感想を書きました。

 

以下、ネタバレになりますのでご注意ください。

また、あくまで問題を読んだ感想であって、解説でも答案例でもありませんのでご了承ください。

問題文はこちらから確認できます。
 

まず、Y県条例について、条文番号が一致しているので、東京都消費生活条例が元ネタである可能性が高そうです。

 

東京都消費生活条例、逐条解説等はこちらのページで公表されています。

 

 

東京都条例の逐条解説と照らし合わせると、Y県条例25条は、東京都条例の25条1項及び同項が委任する規則の規定、それらと25条2項と合体させたもののようです。

 

なお、Y県条例48条は「指導し,又は勧告することができる」となっていて、東京都の条例は「指導し、及び勧告することができる。」となっています。

 

法制執務のお作法は国と自治体、自治体間でも異なることがありますが、司法試験委員会としては、この箇所は「又は」を使うべきということなのでしょう。

設問については、ざっと読んだ限り、設問2はこんなものだろうという感じですが、設問1の出題には違和感を覚えました。

 

設問1では、勧告・公表の処分性を肯定する方向での検討が求められています。

 

先に公表について考えてみます。

 

実際にY県で消費者被害が生じている状況を想定とすると、勧告に従わない(Y県が不適正な取引行為と認めた行為を継続している)事業者についてこそ、勧告に従わなかった旨を公表し、住民に情報提供を行うことで、更なる消費者被害を防止する必要がある、という理屈はそれなりの説得力があると思います。

ですので、Y県の反論として、消費生活条例50条の公表は、県民の消費生活の安定と向上を図ることを目的とした情報提供であり、単なる事実行為にすぎない(制裁的公表ではない)との反論が想定されますが、この反論を乗り越えて処分性を認める理屈をたてるのは中々骨が折れそうです。

また、勧告の処分性については、勧告は通常、行政指導であり処分性が認められないと考えられています。

 

勧告の処分性を認めた判例といえば病院開設中止勧告ですが、あの判例は、勧告に従わないことが、保険医療機関の指定拒否に繋がることが相当程度確実であること、保険医療機関の指定が得られないのであれば、結局は病院の開設を断念せざるをえないことをもって処分性を認めています。

一方で、予備試験の問題文から読み取れるXの不利益は、「融資が停止されると経営に深刻な影響が及ぶ」という箇所にしか見当たらず、これはXにとって重大な不利益ではあるとしても、あくまでXと金融機関Aとの関係にすぎません。

 

病院開設中止勧告の判例を基に処分性を認めることは難しそうですし、Y県条例及び資料の(注)を基に、処分性を肯定する方向での検討は相当書きにくいだろうなと思いました。

このようなことから、設問1は、抗告訴訟に限定した上で処分性を肯定させる方向での検討ではなく、実質的当事者訴訟も含めた実現性の高い訴訟上の手段を検討させる出題の仕方もあったのではないでしょうか。

 

(予備試験の制限時間内で受験生が解くことができるかという出題者側の制約もあるので、難しいのかもしれませんが。)

その他に問題文を読んでいて気になったのは、4段落目に「本件勧告は対外的に周知されることはなかったものの」とある箇所です。

Y県条例50条で「その旨(注:勧告に従わないこと)を公表するものとする。」と規定されているのに、Y県が、公表を行わないという条例違反を放置しているようにも読めるからです。

 

※「公表することができる」ではなく、「公表するものとする」とある場合、勧告を打った以上は公表の有無について裁量の余地はなくなるものと解されます。 

 

もっとも、5段落目に、本件公表がされることも予想された、とあるので、Y県は公表をしないまま放置している訳ではなさそうです。

Y県側の対応としては、Xから抗議があったので公表の実施について慎重に検討している、とか、勧告直後の話でY県としては公表の準備中である、とかが考えられます。

 

ですが、何かしらY県側が公表すべく動いているのであれば、「対外的に周知されることはなかった」という表現だけではY県が公表の実施についてどのように考えているか分からず、かえってミスリーディングな表現だと思いました。
 

…という訳で、感想を書くだけなので書きたいように書きましたが、私がこの年の受験生だったら苦戦しただろうなと思います。出題趣旨が公表されたら追記するかもしれません。