口述試験対策は、情報収集が命です。
この記事では、私が取った勉強方法を書いていますが、私が口述試験を受けたのは平成27年ですので、現在は私の受験した時から出題傾向が変化している可能性があります。
口述試験を受ける方は、直近の予備試験合格者のブログ等を検索して、前年の口述試験ではどのようなことが聞かれていたかをできる限り情報収集し、自分なりの勉強内容を組み立てることが必要です。この記事は、その際の参考になればという気持ちで書いています。
私の取った口述対策ですが、論文試験受験後は仕事が忙しく、また、論文試験に合格するとも思っていなかったので、論文試験の合格発表日から急ピッチで取り組みました。
予備校の口述模試について
合格発表当日、すぐに口述試験合格者の体験談を調べたところ、誰もが模試を受けることが重要と書いていたので、発表当日の夜に予備校の模試に申し込みました。
仕事が終わってから申し込んだところ、伊藤塾は無事に申し込めましたが、辰巳はキャンセル待ち、LECは既に満員でした。結果的にはキャンセル待ちの空きができて、伊藤塾と辰巳の口述模試を受けることができました。
合格発表当日に各予備校の模試の予約枠はほぼ埋まってしまいますので、論文試験の結果に自信がなくても、必ず論文の合格発表直後に結果を確認し、合格していたらすぐに申し込みできるよう準備しておくことをお勧めします。
他の合格者が口を揃えて言うとおり、私も、口述試験対策で最も大切な対策は、模試だと思います。特に印象に残っているのは辰巳の模試で、他の受験生と二人一組で、自分が試験官と口頭でやり取りをするだけでなく、他の受験生が答える姿を間近で観察できる模試でした。
他の受験生(論文合格者)が緊張しながら精一杯の回答をひねり出す姿を見ることで、他の受験生もギリギリのところで戦っているんだと気付き、気持ちが楽になりました。
また、模試の試験官役の方からは、質問を最後まで聞かずに、質問者を遮って回答してしまうクセがあるなど、具体的なアドバイスをいただき、試験本番ではその点に注意することができました。
模試を2回受けると、1回目の模試で失敗したと思ったところ(間の取り方など)を、2回目の模試で修正してもう一度試せるので、可能ならば2つの模試を受けることをお勧めします。
模試以外の対策
模試以外には、合格者のブログ等を参考に、口述試験までの2週間で、以下の5つのことを行いました。
平成27年当時の傾向としては、民事・刑事とも、実体法を聞かれることが増えてきているという印象を受けたので、手続法だけでなく民法・刑法が聞かれても大丈夫なように準備しました。
①口述過去問の読み込み
最初は市販されている辰已法律研究所『司法試験予備試験法律実務基礎科目ハンドブック』(民事・刑事)を使用し、伊藤塾の口述模試で過去問再現集を貰った後は、それを使用しました。
試験本番で受験生が回答する際に、どのように頭を働かせたのか、イメージトレーニングとして繰り返し読みました。試験会場にも持ち込んで、本番直前の待ち時間に読んでいました。
②大島眞一『民事裁判実務の基礎』の通読
民事訴訟の基本構造・訴訟物、要件事実の箇所について、1回は通読し、2回目はまとめの箇所のみ確認することで、一通り復習しました。
要件事実といえば、司法研修所の『新問題研究要件事実』をまずマスターすべきと言われていましたが、既に一度通読していたこの本を使用しました。
試験本番では、『新問題研究要件事実』には載っていない詐害行為取消権について聞かれて、この本を読んでいてよかったと心の底から思いました。
③民法・民訴・刑法・刑訴の短答過去問の復習
論文試験に合格した時点では、ほとんどの問題を正解できる状態でしたので、4科目の基礎知識を総復習するつもりで取り組みました。
最初は問題を解いた上で解説を読んでいたのですが、これでは時間がかかり、口述試験当日までに短答過去問を一通り復習するには間に合わないペースでした。
そこで、途中から、記憶の喚起さえできればよいと割り切って、主に解説だけをパパッと読み、解説だけでは意味が分からない場合のみ、問題文に戻っていました。
私は、短答過去問では、予備校が作成した解説より、司法試験委員会が作成した問題文の方が重要と考えているのですが、この時だけは時間を節約しつつ知識を総復習するために、このような方法をとりました。
論文の成績が悪かった刑法は全ての問題を2周、他の科目は1周しました。
また、短答過去問の解説の中には知識をコンパクトにまとめたページ、例えば刑法で言うと、1つの犯罪の構成要件の定義をまとめたページがあるので、そのページにふせんを貼っておき、試験当日の待ち時間に読み返していました。
具体例としては、法学書院(中央大学真法会)が出版している体系別短答過去問(刑法)のうち、平成20-18の解説では、横領罪の「横領した」との文言について、「不法領得の意思を実現する一切の行為」を意味し、窃盗罪における不法領得の意思と比較して、①権利者排除意思が要素とされていないこと、②「経済的用法に従い」という限定がなく、窃盗罪における不法領得の意思より広い概念であることを簡潔に説明しています。
このような箇所にふせんを貼って、当日の朝に確認していたのですが、本番では業務上横領罪の「不法領得の意思」について試験官から定義をずばり聞かれ、構成要件の定義を押さえておいた良かったと思いました。
④民事執行法・民事保全法と法曹倫理
辰已法律研究所『司法試験予備試験法律実務基礎科目ハンドブック〈1〉民事実務基礎』を使用して、民事執行・保全の該当箇所を、条文を参照しながら繰り返し読み込みました。民事執行法・民事保全法は試験で聞かれる範囲はそれほど広くないと判断し、上記ハンドブックと口述過去問集に出てきた条文を説明できるよう、ピンポイントで繰り返しました。
法曹倫理は、上記ハンドブックの民事・刑事の該当箇所を、弁護士職務基本規程を参照しながら繰り返し読みました。
⑤条文の素読
民事訴訟法・刑事訴訟法と弁護士職務基本規程について、全条文を素読しました。民事訴訟法・刑事訴訟法については、演習書や短答・論文過去問で出題されたことのある施行規則の条文番号をメモしておいたので、該当する施行規則も読みました。刑法についても、条文の文言から構成要件の定義を思い出せるか確認しつつ、条文素読を行いました。
民法や民訴・刑訴の施行規則の全文についても、時間が許すのであれば、一度素読を行っておいた方が良いと思いますが、論文試験合格後から対策を始める場合は、自分が確保できる勉強時間との相談になるかと思います。
条文素読以外の勉強も含めて、条文の確認は、論文試験後に持ち帰った「司法試験予備試験用法文」を使用しました。この法文は、口述試験での参照が許されています。
ただし、私が受験した時の試験官は、「法文を参照してもよろしいでしょうか」とお伺いしても一度も参照を許してくれなかったので、条文を参照できることに過度に期待は禁物です。
(試験官も鬼ではないので、マイナーな条文であれば、「〇条辺りにあったと思います」と答えることができれば、「第〇条ですので、後で確認してください」と先の質疑に進むことができ、それで合格に支障はありません。)
以上の5つの勉強を論文試験合格発表から口述試験当日までの間に行いました。
当日に向けた準備
口述試験は、「受付・集合室」という部屋にまず受験生全員が集合するのですが、当日、試験会場に行かないと、自分が何番目に試験を受けるかが分からないシステムになっています。
そして、「受付・集合室」から、試験を受ける直前の「待機室」へ移動するまでの間は、本を読んだり、食事をしたり、トイレへ行くといったことが許されています。
ですので、口述試験の事前対策を行う際は、当日の朝や、「受付・集合室」で待ち時間ができたらこれを見よう、というものをピックアップしておくとよいと思います。
ただし、自分がトップバッターになり、「受付・集合室」での見直しがほとんどできない可能性もあるので、「当日に見ればいいや」と後回しにすることは危険です。あくまで、当日のお守り代わり位のつもりでいた方が無難です。
なお、直前に見直すものだけでなく、水分・栄養補給を何で行うかや、トイレに行くタイミングなどもあらかじめもイメージしておくと、当日の緊張が和らぎます。
社会人受験生の課題とアドバンテージ
社会人の方にとっては、直前の勉強時間を多く確保することは大変だと思いますので、短答過去問の復習等、行える対策は、早めに行った方が良いと思います。
口述試験対策は、論文不合格だった場合でも、次年度の短答・論文試験対策として決して無駄になるものではないので、9月から口述対策を始められれば万全でしょう。
ただ、時間のやりくりはそう簡単にいかないでしょうし、私は上記のとおり論文合格発表後から慌てての対策でした。
司法試験・予備試験の受験勉強において、私は、直前に大量の詰込みをすることは避けてきたのですが、この時ばかりは短期間で一気呵成にやるしかないと勉強量を増やしました。
平日は仕事の前後に3時間程度、休日は8時間程度勉強しました。また、口述試験直前の2日間は有給休暇を取らせてもらい、口述対策に専念しました。
私の勉強時間は、通常は、平日は1~2時間、休日は5~6時間が上限でしたので(それ以上は頭が働かない)、口述試験前の2週間の勉強量は、肉体的にも精神的にもかなりの無理を強いており、口述試験後はしばらく体調を崩してしまいました。
口述試験当日はなんとか体調を持ちこたえていましたが、仮に、試験当日に40度の熱が出てしまえば、受かる試験も受からなくなってしまいます。そうならないよう、最低限の食事・睡眠・運動には時間を割いていました。
一方で、口述試験では、試験官と法律的なテーマに関する円滑なコミュニケーションを取れることが試されます。
どのような職種であれ、働きながらの受験生は、初対面の方(特に目上の方)とのコミュニケーションという点では学生より慣れているでしょうから、この点は、社会人受験生が学生よりアドバンテージを得られるところです。
私の場合は、地方公務員として、自分の部署が所管する制度や法律を、初めてお会いする様々な方に説明した経験が口述試験に大変役に立ちました。
もっとも、学生の方でも、アルバイトをしたり、ボランティアやNPO等の活動に参加したりといったことで、様々な初対面の方とのコミュニケーション経験があれば、不利になるものではないと思います。
口述試験は準備も本番も精神的にハードで、受験生活4年間の中でもっとも密度が濃く、大変な期間でした。
ですが、口述試験対策を短期集中的に勉強したことで、口述試験合格後には、民法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法は、自分の中で弱点になることはなくなっただろうな、と感じることができました。
口述試験の対策は、予備試験合格後の司法試験にも間違いなく役立ちます。
また、口述試験に合格できると、実務で活躍されている法曹実務家と口頭で質疑応答をして認められたのだという自信を得ることができます。
口述試験は、合格率を見れば、落とされないための準備さえすれば合格できる試験ですので、油断せず、出題傾向を踏まえた対策に取り組めば、予備試験最終合格を勝ち取れるはずです。

