口述試験対策は、情報収集が命です。

 

この記事では、私が取った勉強方法を書いていますが、私が口述試験を受けたのは平成27年ですので、現在は私の受験した時から出題傾向が変化している可能性があります。

 

口述試験を受ける方は、直近の予備試験合格者のブログ等を検索して、前年の口述試験ではどのようなことが聞かれていたかをできる限り情報収集し、自分なりの勉強内容を組み立てることが必要です。この記事は、その際の参考になればという気持ちで書いています。

 

私の取った口述対策ですが、論文試験受験後は仕事が忙しく、また、論文試験に合格するとも思っていなかったので、論文試験の合格発表日から急ピッチで取り組みました。

 

予備校の口述模試について

合格発表当日、すぐに口述試験合格者の体験談を調べたところ、誰もが模試を受けることが重要と書いていたので、発表当日の夜に予備校の模試に申し込みました。

 

仕事が終わってから申し込んだところ、伊藤塾は無事に申し込めましたが、辰巳はキャンセル待ち、LECは既に満員でした。結果的にはキャンセル待ちの空きができて、伊藤塾と辰巳の口述模試を受けることができました。

 

合格発表当日に各予備校の模試の予約枠はほぼ埋まってしまいますので、論文試験の結果に自信がなくても、必ず論文の合格発表直後に結果を確認し、合格していたらすぐに申し込みできるよう準備しておくことをお勧めします。

 

他の合格者が口を揃えて言うとおり、私も、口述試験対策で最も大切な対策は、模試だと思います。特に印象に残っているのは辰巳の模試で、他の受験生と二人一組で、自分が試験官と口頭でやり取りをするだけでなく、他の受験生が答える姿を間近で観察できる模試でした。

 

他の受験生(論文合格者)が緊張しながら精一杯の回答をひねり出す姿を見ることで、他の受験生もギリギリのところで戦っているんだと気付き、気持ちが楽になりました。

 

また、模試の試験官役の方からは、質問を最後まで聞かずに、質問者を遮って回答してしまうクセがあるなど、具体的なアドバイスをいただき、試験本番ではその点に注意することができました。

 

模試を2回受けると、1回目の模試で失敗したと思ったところ(間の取り方など)を、2回目の模試で修正してもう一度試せるので、可能ならば2つの模試を受けることをお勧めします。

 

模試以外の対策

模試以外には、合格者のブログ等を参考に、口述試験までの2週間で、以下の5つのことを行いました。

 

平成27年当時の傾向としては、民事・刑事とも、実体法を聞かれることが増えてきているという印象を受けたので、手続法だけでなく民法・刑法が聞かれても大丈夫なように準備しました。

 

①口述過去問の読み込み

最初は市販されている辰已法律研究所『司法試験予備試験法律実務基礎科目ハンドブック』(民事・刑事)を使用し、伊藤塾の口述模試で過去問再現集を貰った後は、それを使用しました。

 

試験本番で受験生が回答する際に、どのように頭を働かせたのか、イメージトレーニングとして繰り返し読みました。試験会場にも持ち込んで、本番直前の待ち時間に読んでいました。

 

②大島眞一『民事裁判実務の基礎』の通読

民事訴訟の基本構造・訴訟物、要件事実の箇所について、1回は通読し、2回目はまとめの箇所のみ確認することで、一通り復習しました。

 

要件事実といえば、司法研修所の『新問題研究要件事実』をまずマスターすべきと言われていましたが、既に一度通読していたこの本を使用しました。

 

試験本番では、『新問題研究要件事実』には載っていない詐害行為取消権について聞かれて、この本を読んでいてよかったと心の底から思いました。

 

③民法・民訴・刑法・刑訴の短答過去問の復習

論文試験に合格した時点では、ほとんどの問題を正解できる状態でしたので、4科目の基礎知識を総復習するつもりで取り組みました。

 

最初は問題を解いた上で解説を読んでいたのですが、これでは時間がかかり、口述試験当日までに短答過去問を一通り復習するには間に合わないペースでした。

 

そこで、途中から、記憶の喚起さえできればよいと割り切って、主に解説だけをパパッと読み、解説だけでは意味が分からない場合のみ、問題文に戻っていました。

 

私は、短答過去問では、予備校が作成した解説より、司法試験委員会が作成した問題文の方が重要と考えているのですが、この時だけは時間を節約しつつ知識を総復習するために、このような方法をとりました。

 

論文の成績が悪かった刑法は全ての問題を2周、他の科目は1周しました。

 

また、短答過去問の解説の中には知識をコンパクトにまとめたページ、例えば刑法で言うと、1つの犯罪の構成要件の定義をまとめたページがあるので、そのページにふせんを貼っておき、試験当日の待ち時間に読み返していました。

 

具体例としては、法学書院(中央大学真法会)が出版している体系別短答過去問(刑法)のうち、平成20-18の解説では、横領罪の「横領した」との文言について、「不法領得の意思を実現する一切の行為」を意味し、窃盗罪における不法領得の意思と比較して、①権利者排除意思が要素とされていないこと、②「経済的用法に従い」という限定がなく、窃盗罪における不法領得の意思より広い概念であることを簡潔に説明しています。

 

このような箇所にふせんを貼って、当日の朝に確認していたのですが、本番では業務上横領罪の「不法領得の意思」について試験官から定義をずばり聞かれ、構成要件の定義を押さえておいた良かったと思いました。

 

④民事執行法・民事保全法と法曹倫理

辰已法律研究所『司法試験予備試験法律実務基礎科目ハンドブック〈1〉民事実務基礎』を使用して、民事執行・保全の該当箇所を、条文を参照しながら繰り返し読み込みました。民事執行法・民事保全法は試験で聞かれる範囲はそれほど広くないと判断し、上記ハンドブックと口述過去問集に出てきた条文を説明できるよう、ピンポイントで繰り返しました。

 

法曹倫理は、上記ハンドブックの民事・刑事の該当箇所を、弁護士職務基本規程を参照しながら繰り返し読みました。

 

⑤条文の素読

民事訴訟法・刑事訴訟法と弁護士職務基本規程について、全条文を素読しました。民事訴訟法・刑事訴訟法については、演習書や短答・論文過去問で出題されたことのある施行規則の条文番号をメモしておいたので、該当する施行規則も読みました。刑法についても、条文の文言から構成要件の定義を思い出せるか確認しつつ、条文素読を行いました。

 

民法や民訴・刑訴の施行規則の全文についても、時間が許すのであれば、一度素読を行っておいた方が良いと思いますが、論文試験合格後から対策を始める場合は、自分が確保できる勉強時間との相談になるかと思います。

 

条文素読以外の勉強も含めて、条文の確認は、論文試験後に持ち帰った「司法試験予備試験用法文」を使用しました。この法文は、口述試験での参照が許されています。

 

ただし、私が受験した時の試験官は、「法文を参照してもよろしいでしょうか」とお伺いしても一度も参照を許してくれなかったので、条文を参照できることに過度に期待は禁物です。

 

(試験官も鬼ではないので、マイナーな条文であれば、「〇条辺りにあったと思います」と答えることができれば、「第〇条ですので、後で確認してください」と先の質疑に進むことができ、それで合格に支障はありません。)

 

以上の5つの勉強を論文試験合格発表から口述試験当日までの間に行いました。

 

当日に向けた準備

口述試験は、「受付・集合室」という部屋にまず受験生全員が集合するのですが、当日、試験会場に行かないと、自分が何番目に試験を受けるかが分からないシステムになっています。

 

そして、「受付・集合室」から、試験を受ける直前の「待機室」へ移動するまでの間は、本を読んだり、食事をしたり、トイレへ行くといったことが許されています。

 

ですので、口述試験の事前対策を行う際は、当日の朝や、「受付・集合室」で待ち時間ができたらこれを見よう、というものをピックアップしておくとよいと思います。

 

ただし、自分がトップバッターになり、「受付・集合室」での見直しがほとんどできない可能性もあるので、「当日に見ればいいや」と後回しにすることは危険です。あくまで、当日のお守り代わり位のつもりでいた方が無難です。

 

なお、直前に見直すものだけでなく、水分・栄養補給を何で行うかや、トイレに行くタイミングなどもあらかじめもイメージしておくと、当日の緊張が和らぎます。

 

社会人受験生の課題とアドバンテージ

社会人の方にとっては、直前の勉強時間を多く確保することは大変だと思いますので、短答過去問の復習等、行える対策は、早めに行った方が良いと思います。

 

口述試験対策は、論文不合格だった場合でも、次年度の短答・論文試験対策として決して無駄になるものではないので、9月から口述対策を始められれば万全でしょう。

 

ただ、時間のやりくりはそう簡単にいかないでしょうし、私は上記のとおり論文合格発表後から慌てての対策でした。

 

司法試験・予備試験の受験勉強において、私は、直前に大量の詰込みをすることは避けてきたのですが、この時ばかりは短期間で一気呵成にやるしかないと勉強量を増やしました。

 

平日は仕事の前後に3時間程度、休日は8時間程度勉強しました。また、口述試験直前の2日間は有給休暇を取らせてもらい、口述対策に専念しました。

 

私の勉強時間は、通常は、平日は1~2時間、休日は5~6時間が上限でしたので(それ以上は頭が働かない)、口述試験前の2週間の勉強量は、肉体的にも精神的にもかなりの無理を強いており、口述試験後はしばらく体調を崩してしまいました。

 

口述試験当日はなんとか体調を持ちこたえていましたが、仮に、試験当日に40度の熱が出てしまえば、受かる試験も受からなくなってしまいます。そうならないよう、最低限の食事・睡眠・運動には時間を割いていました。

 

一方で、口述試験では、試験官と法律的なテーマに関する円滑なコミュニケーションを取れることが試されます。

 

どのような職種であれ、働きながらの受験生は、初対面の方(特に目上の方)とのコミュニケーションという点では学生より慣れているでしょうから、この点は、社会人受験生が学生よりアドバンテージを得られるところです。

 

私の場合は、地方公務員として、自分の部署が所管する制度や法律を、初めてお会いする様々な方に説明した経験が口述試験に大変役に立ちました。

 

もっとも、学生の方でも、アルバイトをしたり、ボランティアやNPO等の活動に参加したりといったことで、様々な初対面の方とのコミュニケーション経験があれば、不利になるものではないと思います。

 

口述試験は準備も本番も精神的にハードで、受験生活4年間の中でもっとも密度が濃く、大変な期間でした。

 

ですが、口述試験対策を短期集中的に勉強したことで、口述試験合格後には、民法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法は、自分の中で弱点になることはなくなっただろうな、と感じることができました。

 

口述試験の対策は、予備試験合格後の司法試験にも間違いなく役立ちます。

 

また、口述試験に合格できると、実務で活躍されている法曹実務家と口頭で質疑応答をして認められたのだという自信を得ることができます。

 

口述試験は、合格率を見れば、落とされないための準備さえすれば合格できる試験ですので、油断せず、出題傾向を踏まえた対策に取り組めば、予備試験最終合格を勝ち取れるはずです。

4 論文対策について (1)典型論点の理解の続きです。

 

初受験の平成26年度予備試験で論文試験不合格の通知を受け、論文の成績は、行政法・商法・民事訴訟法がF、憲法がE、刑法・刑事訴訟法・法律実務基礎科目がD、なぜか民法はBで、一般教養科目がAでした。

 

法律実務基礎科目を含めて、法律科目の半分(4科目)がE・Fという評価を受けて、論文を書けるようにならないと予備試験、ひいては司法試験の合格は不可能だと痛感しました。

 

そこで、次年度の予備試験までの目標として、「論文試験の制限時間内に、試験の現場で参照可能な問題文と条文だけを頼りに、自分がひねり出すことができる文章で論文を書ける能力」の習得を目指すことにしました。

 

そして、この目標のために私が採った方法は、論文過去問について、複数の合格者の再現答案を1行ずつ分析・検討し、不明点は基本書や演習書等で調べながら、自分が試験本番で書けると思える文章で、「自分なりの合格答案」を作ることです。

 

この「自分なりの合格答案」を作成するに当たっては、以下の3点を意識していました。

 

①問題文と条文だけを参照して書ける答案であること

合格者の再現答案の中には、基本書の定義や判例の文言を数行に渡って正確に引用しているものもあります。しかし、私は、ただでさえ少ない勉強時間を暗記に充てる余裕はないと判断し、細かい言い回しまで正確に暗記することは諦めました。

 

そこで、基本書の定義や判例の文言は、キーワードを使用するだけに留め、数行に渡って丸々引用することがないよう、意識していました。

 

その代わり、試験中に参照可能な条文については、できるだけ多くの文言を引用することを意識していました。

 

司法試験において、そのまま覚えることがどうしても必要な事項は、行政法の処分性の定義や、民事訴訟法の弁論主義(第1~第3テーゼ)など、数えられる程度しかないと思います。

 

これらは、演習書と過去問を繰り返していれば、頻出する定義・概念ですので、試験の直前に細かい言い回しをさらりと確認すれば良いと考えていました。

 

②制限時間内に、確実に設問に答える答案であること(完全解は目指さないこと)

論文試験の制限時間内に、私が答案用紙に書ける文字数は、予備試験の論文は答案用紙3枚(ワードでカウントした文字数だと1600~1700字)、司法試験の論文は答案用紙5枚(同2700~2800字程度)程度が上限でした。

 

一方で、市販の再現答案集に掲載される上位合格者の再現答案は、答案用紙を最大限(予備試験だと4枚、司法試験だと7~8枚)使っているものが多いです。

 

そこで、再現答案を分析する際は、問題文・設問・出題趣旨・採点実感を頼りに、合格者の再現答案のうち、どの箇所が設問に答える上で絶対に削れない必須の部分なのか。また、どの箇所がいわゆる加点事項(得点にはなるが記載がなくても答案として最低限の問いに答えたことになるもの)なのかを見極めるよう意識していました。

 

そして、出題趣旨や採点実感から加点事項であると判断した事項は、設問への回答に最低限必要な事項を書いた後で、なお答案用紙に余裕がある場合(予備試験なら3枚、司法試験なら5枚程度に収まる場合)に限り、「自分なりの合格答案」に盛り込むこととしました。

 

そのため、答案の完成度としては、完全解を目指すのではなく、予備試験・司法試験の順位ランクで言うとBランクが取れる答案を目指して作成していました。

 

刑法で複数人の罪責を論述させるもの等、問題によっては目安とした文字数をオーバーすることもありましたが、できるだけ文字数は削減するように努めました。

 

そのため、細かいことですが、例えば「許可することは可能である」という文章があれば「許可は可能である」にするなど、意味が通じるのであればできる限り短い文章で書くことを心がけました。

 

③複数の再現答案の分析結果を踏まえ、1行ずつ、全てが納得できる文章で構成された答案であること

「自分なりの合格答案」を作成するにあたり、一つの再現答案のみを参考にしてしまうと、単なる丸写しになってしまう可能性があるので、必ず複数の答案を比較検討した上で、なるべく自分の言葉に置き換えていました。

 

合格者の再現答案を、自分の答案に使えるところはないかと意識して読むと、同じA評価を受けている答案であっても、様々なタイプがあることに気付けます。

 

私は、答案用紙の枚数が少なくコンパクトにまとまっている答案や、問題提起やあてはめにおいて問題文からの引用・事実の評価が上手いと感じた答案を中心に1行ずつ分析を行い、細かい表現は自分の書きやすい言葉に置き換えて、「自分なりの合格答案」に取り入れていきました。

 

また、ナンバリング(第1、1、(1)、ア…)や見出しの付け方についても、複数の答案を比較すると、分かりやすい答案とそうでない答案があることに気付きました。

 

見出しが分かりやすい答案は、パッと見ただけで設問に的確に答えている印象を感じられたので、ナンバリングや見出しなど、答案の形式面もおろそかにしないよう気を付けました。

 

そして、再現答案の分析・比較検討の結果を踏まえて、「自分なりの合格答案」を書き進める際には、なぜ自分はその文章を答案に書く必要があるのか、どうして合格答案にはその1行が必要だと考えたのか、自分の頭の中でその理由を確認することを徹底し、自分が納得できる文章だけで「自分なりの合格答案」が構成されるようにしました。

 

なお、答案は、パソコン(Word)で作成していました。文字数を1行の文字数を28字に設定した上で、行番号を表示させると、答案枚数(文字数)を把握しやすかったです。

 

「自分なりの合格答案」を作成した結果

このような方法で、当初は、全ての科目について少なくとも3年度分は「自分なりの合格答案」を作ろうと計画していましたが、結局、予備試験・司法試験とも、3年度分を作成する途中の段階で合格することができました。

 

予備試験の受験2年目は、典型論点を学ぶと決めた演習書を再読するとともに、各科目2~3年度分の予備試験の論文について「自分なりの合格答案」を作成したところで、論文試験に合格することができました。

 

論文の順位が初回受験時の約1300位から約200位に上昇したことを受けて、この方法は自分にとってかなり効果があるなと思いました。

 

予備試験の論文合格時の成績は、民事訴訟法・一般教養科目・法律実務基礎科目がA、憲法・行政法・民法・刑事訴訟法がB、商法がDで、刑法がF!でした。(2ページしか書けなかった民事訴訟法がA評価だったことに驚きました。逆に、刑法は甲乙丙丁4人の罪責の論述が必要なのに2ページ半しか書けなかったので、予想どおりの評価でした。)

 

司法試験については、受験初年度は、予備試験合格後から選択科目(労働法)の勉強を始めたことの負担が重く、また、司法試験の論文過去問に一通り目を通すことに精一杯で、「自分なりの合格答案」の作成は1通も行うことができませんでした。

 

そのことだけが敗因なのかは定かでありませんが、初回の司法試験は総合約1900位(論文2200位)で不合格でした。

 

また、初めて司法試験を受けた年度は、4月から多忙な部署に異動になったこともあり、5月の試験は受験できましたが、その後は10月頃まで、通勤時間を除いて法律の勉強ができない期間が続きました。

 

不合格が判明した後も勉強時間の確保には苦労しましたが、司法試験の論文過去問について「自分なりの合格答案」を作らなければ合格できない、との思いは日に日に強くなり、なんとか民法・刑法以外の5科目について、平成28年度(不合格となった年)の論文試験の答案作成を行いました。(民法・刑法は予備試験と出題形式がそれほど異ならないと判断し、その他の勉強を優先しました。)

 

その他に、これまで使ってきた演習書・論文過去問(解説)を再読することで、知識の維持を図りました。また、労働法については、BEXAで購入した加藤喬講師の速習テキストと論文過去問の模範答案を数回読みました。


これらを行った結果、2度目の司法試験では、総合約1100位(論文1200位)で合格することができました。

 

合格順位は中の下あるいは下の上といったところですが、元々勉強時間に制約があり、1000位程度での合格を目指していた上、準備不足としか言いようがない中での合格でしたので、自分としては満足できる結果でした。

 

時間を制限して答案を書く訓練について

以上が私の行った論文対策の要点で、ここから先はたらればの話になりますが、もし、3年度分の「自分なりの合格答案」の作成を終えて、まだ時間が残っていたとしたら、本番同様に、時間を制限し、六法のみを参照して論文過去問を書く訓練をしていたと思います。

 

制限時間のある中で答案を書くことは、問題文から、合格答案に最低限必要な事項が何であり、また、何が加点事項にすぎないかを速やかに読み取った上で、必要事項を漏らさず書き、さらに、できる限り加点事項を拾い上げるという瞬発力を高める訓練になるからです。

 

個人的には、このような時間を制限して答案を書く訓練は、「自分なりの合格答案」を論文過去問3か年度ほど作成し、自分なりの答案作成の方法をある程度体得した後に実施することで、はじめて効果的になるのではないかと考えています。(私が時間を制限して答案を作成する訓練をしたのは、2回目の予備試験の直前に受けた論文模試1回だけです。)

 

その理由としては、再現答案や基本書を見ながら、かつ、時間無制限であっても合格答案(と自分が思えるもの)を書けない段階では、時間を制限して答案を書く訓練をしても、論文作成能力の向上という観点からは効果が薄いと思うからです。

 

(自分がいかに論文を書けないか実感する、復習で論点の知識を身に着ける、ペンで答案用紙に文字を書くスピード(筆力)をつける等の効果はあると思います。)

 

ここに書いたことは、あくまで私が、時間を制限しての答案作成(いわゆる答練等)を、合格の最低ラインに到達するためというより、上位合格を目指すための訓練と考えているということですので、人によっては、早い段階でそのような訓練に取り組むことに効果がある、ということもあり得ると思います。

 

大事なのは、司法試験・予備試験の対策として、行わなければならない(と思える)勉強が山のようにある中で、自分にとって、今この時に行う必要があり、効果があると思えるものを、自分が納得した上で行うことです。


時間を制限する・しない、基本書等を参照する・しない、どちらにしても、論文を書けるようになるためには、自分の頭を働かせて論文過去問を書く実践を行うことは不可欠だと思います。そして、その際に道しるべとなるのが、答案作成についての方法論です。

答案作成方法の参考にした本
前回「4 論文対策について (1)典型論点の理解」で触れた論文過去問の解説本には、「自分なりの合格答案」を作成する際に参考となる情報が随所にありますので、論点の理解を深めると同時に、自分がマネできる答案作成のコツがないかを意識して読むと、より効果的だと思います。

 

ここでは、前回紹介した本以外で、私が答案作成の参考にした本を紹介します。(演習書も含まれていますが、自分で解くのではなく、問題を読んだ後すぐに解説を読んでいました。宍戸先生の本以外は1~2回通読しました。)

福田俊彦『絶対にすべらない答案の書き方』
答案作成上の注意点をコンパクトにまとめてあるので、読みやすかったです。論文試験の直前にも読み直しました。

宍戸常寿『憲法 解釈論の応用と展開』

典型論点のための演習書としても使用し、私が最も繰り返し読んだ愛読書です。問題を解く際の思考方法や判例の使い方などについて、示唆を与えてくれる記載が各所にあります。第2版から、最後の方に、学習方法や答案の書き方についての宍戸先生の考えがまとめられて、よりパワーアップした本になりました。

木村草太『憲法の急所』
Q&A形式で、問題文を読んでから答案に書くまでの思考経路を示してくれる貴重な本です。新司法試験開始直後の出題形式に沿った演習書なので、近年の出題形式(特に平成30年度の形式)とは異なりますが、自分なりの答案作成方法を習得するための参考になると思います。


橋本博之『行政法解釈の基礎: 「仕組み」から解く』

論文過去問等を題材に個別法の解釈の仕方を学ぶことができます。大島義則『行政法ガール』と合わせて読むと、行政法は盤石になると思います。

旧司法試験のLIVE本 民法(貞友義典)・民事訴訟法(和田吉弘)
出版から相当の年数が経っているため、典型論点把握のための演習書には選びませんでしたが、答案をどのように作成すべきかを旧司法試験の問題を使って丁寧に解説している本です。(辰巳のオンデマンドで購入しました。)

大島眞一『完全講義 民事裁判実務の基礎』
要件事実は法律実務家の思考方法の中でも代表的なものであり、要件事実的発想を身に着けることは、まさに答案作成の方法論を学ぶことに直結すると考えて通読しました。(私の購入した頃は、上下巻でしたが、今は入門編・発展編が出版されているようです。)

以前にも書きましたが、これらの本は、あくまで私が受験当時に使用した本であり、答案の作成方法を学べる本は他にも多く出版されています。(公法系の本が多いのは、公法系科目が好きという私の趣味が入ってます。)

 

また、合格者・予備校講師のブログや予備校の講座等でも答案作成に関する様々な方法論が提示されていますので、自分に合ったものを参考にすると良いと思います。

 

 

最後に、この記事を書いている最中、たまたま読んでいた本に、まさに私が言いたかったことはこれだ!と思う一節がありましたので、引用させていただきます。

 

 

「 ところで、アウトプットとは何か。

 その基本は、母語(マザータング)による「言語化」です。

 しかも、インプットしたままの他人の言葉ではなくて、それを自分の頭で咀嚼して、自分の言葉に引き直して言語化する。その作業を経ることによってはじめて、自分の頭の中の「情報のタンスの中の引き出し」(自分の辞書)を整理することができます。

 整理されれば、引き出しやすくもなります。必要なときに、さっとその知識を取り出せるわけです。」

 

合格者の再現答案を分析・比較検討し、自分がひねり出せる言葉で「自分なりの合格答案」を作成するという作業は、まさに上記で引用した「アウトプット」=自分の頭で咀嚼して、自分の言葉に引き直して言語化する作業でした。

 

「アウトプットが重要」とは、司法試験の合格に向けた方法論でもよく言われることですが、私なりに考えたアウトプットの方法が、この記事で紹介した「自分なりの合格答案」を作ることでした。

 

論文が書けるようにならないと悩んでいる方は、試しに、予備試験又は司法試験の過去問を題材に、時間無制限かつ再現答案・基本書など何でも参照ありで、「自分なりの合格答案」を作成してみることをおすすめします。

昨日、ブログのアクセス数が急に伸びていて、どうしたのだろうと思ったら、なんと『憲法ガール』の著者である大島先生がツイッターで昨日書いた記事を紹介してくれていました。

大変嬉しいとともに、このような末端のブログまで確認されている大島先生の情報収集能力の高さに驚きました。

 

 

さて、せっかくご紹介していただいたので、平成29年の論文試験憲法で、私が出入国管理システム優位論についてどのように書いたかをこの機会に思い出してみました。

 

(以下、平成29年度論文試験 公法系第1問(憲法)のネタバレになりますので、ご注意ください。)

 

平成29年度の論文の問題文はこちらからご確認ください。

 

問題文を読んで、出入国管理システム優位論に関係して考えたことは、以下の2点です。

 

①問題文の2ページ目の最初の段落の終わりで、「外国人の入国・滞在の可否は国家の主権的判断に属するという原則等が強調され」という箇所は、明らかにマクリーン事件判決を踏まえているので、〔設問2〕では、まず、国の反論の根拠として、マクリーン事件判決が出入国管理システム優位の立場を取っていることが分かるように答案に書く必要がある。

 

②マクリーン事件判決で問題となった外国人の政治的表現の自由と比べると、妊娠・出産の自由は女性の人生における極めて重要かつ個人的な権利であるから、権利・自由の性質の違いを強調して国の反論に再反論すると説得的ではないか。

 

この2つの点を踏まえて、以下のような答案を書いたと思います。(なお、私は再現答案を作成することができないので、これは現在の記憶の限りで再現したものです。ですので、本番で書いた文章より、かなり美化されている可能性が高いです。)

 

 

平成29年度論文試験 公法系第1問〔設問2〕の再現答案(一部のみ)

…外国人の入国・滞在の可否は国家の主権的判断に属することから、出入国の判断に関しては、外国人の妊娠・出産の自由は国民と同程度には憲法上保障されない、という国の反論が考えられる。

 

 確かに、我が国の政治過程に影響を及ぼし得る外国人の政治的表現の自由等、権利の性質上、国民と外国人との間で憲法上の保障の程度に差異が生じる自由については、出入国の管理に関する国家の主権的判断が優先すると考えられる。

 

 しかし、妊娠・出産の自由は、個人がどのように家族関係を形成していくかという、ライフスタイルの自己決定に関わる極めて個人的な性質のものであり、外国人であるがゆえに保障の程度を弱めるべき理由はない。また、特定労務外国人は申請時点で20歳から45歳までの者に限定されており(法4条1項1号)、在留期間の更新も予定されている(法4条4項)。これらの規定を踏まえると、法15条8号によって本邦滞在中の妊娠・出産が禁止されると、妊娠適齢期である特定労務外国人の女性にとって、生涯にわたって子どもを生むことが不可能となる可能性が生じ、子どもを生むか生まないかの決定に多大な影響を及ぼすものである。

 

 このような性質を持つことから、特定労務外国人の妊娠・出産の自由は、国民と同程度に保障されるべきであり、国の出入国管理に関する主権的判断によってその保障が弱まることはないと解する。よって、国の反論は妥当しない。(以下略)

 

 

…「きちんと書けたか」は置いておくとして、マクリーン事件判決が出入国管理システム優位の立場であることは理解してますアピールと、権利の性質が違うからマクリーン事件判決の射程が本件の妊娠・出産の自由には及ばないという主張は一応書けた、というレベルでしょうか。

 

それに加えて、法4条1項1号がわざわざ特定労務外国人の年齢を限定して書いている所が問題文を読んでいて気になったので、この年齢の女性の妊娠・出産を制限すると一生妊娠・出産ができなくなるかもしれない重大な制限なんだということを書いた記憶があります。(これはもしかしたら設問1で書いたかもしれません。)試験本番のギリギリの状況では、これ位を書くのが自分の精一杯だったと思います。


採点実感には以下のように書かれているので、私の書いたことは、高い評価までいったかはともかく、それなりには評価されたのだろうと思います。

 

平成29年司法試験の採点実感(公法系科目第1問)

「マクリーン事件判決の「外国人に対する憲法の基本的人権の保障は,右のような外国人在留制度のわく内で与えられているにすぎない。」「在留期間中の憲法の基本的人権の保障を受ける行為を在留期間の更新の際に消極的な事情としてしんしゃくされないことまでの保障が与えられているものと解することはできない。」という論理とどのように向き合うのかということが問われている。このことが意識されない答案が予想したより多かったことは遺憾であった。もっとも,この点が意識され,自分なりに論じられている答案は高く評価することができた。」

 

「また,権利性質説に関する論証も不十分なものが少なくなかった。例えば,「妊娠・出産の自
由も,権利の性質上外国人にも保障される。」としか記載していないものが見られたが,妊娠・出産の自由がどのような性質の権利なのかを指摘して初めて妊娠・出産の自由が外国人に保障されるという論証になるはずである。」

 

ちなみに、この年の公法系の成績は、約110点で、憲法がB、行政法がAでした。憲法の論文は、答案用紙に4枚半程度しか書けなかったので、他の論点やあてはめ等で取りこぼしたところを、マクリーン事件判決についての記述でフォローできたのだろうと推測しています。

 

なお、上記では、妊娠・出産の自由は特定労務外国人にも国民と同程度に保障されるべきとあっさり書きましたが、本当に同じ程度に保障されるべきなのか、というのは考えてみるとかなり議論の余地がありそうです。この点については、大島先生の『憲法ガールⅡ』の解説・参考答案が大変参考になりますので是非ご確認ください。

 

司法試験では類似するテーマが出題されることもありますし、直接は出題されなくても、判例の射程を切り分ける能力を鍛える訓練として、29年度の過去問を使って、マクリーン事件判決の使い方について理解を深め、自分の言葉で書けるようにしておくことは有益だと思います。

司法試験・予備試験で受験生の頭を一番悩ませるのは、なんといっても論文対策です。

 

私の場合、最初に受験した予備試験で短答試験が上位通過だったので、これは論文もいけるのではないかと調子に乗って、初めての論文試験に臨みました。しかし、論文試験の本番では、問題文を読み間違える、最初の一行目から何を書いたら良いか分からない、せっかく気づけた論点を書き漏らす…と、ボロボロの結果で、順位は約1300位でした。

 

一回目の予備試験の不合格通知後、このままでは論文試験の合格は無理だと痛感し、勉強方法を試行錯誤した結果、翌年の予備試験では論文試験を約200位で通過することができました。その時に考えたことを中心に、論文対策について書いていきます。

 

私は、論文対策の要点は2つあり、それは「典型論点の理解」と「論文作成方法の習得」だと考えています。この2つのうち、「論文作成方法の習得」の方がより重要ですが、典型論点についてある程度の知識を持っていないと、「論文作成方法の習得」の訓練を行うことが難しいので、今回は、まず「典型論点の理解」について書きます。

 

「典型論点の理解」は、どの受験生もやっていることかと思いますが、基本書や演習書を読んだり、短答・論文過去問の問題文・解説を読むことで行うことができます。

 

1 演習書の通読

私は、各科目1冊ずつ市販の演習書を選び、演習書の問題と解説を通読しました。(演習書の問題について、答案作成をしたこともあるのですが、そもそも答案作成に適さない問題が多いことに気付き、やめました)。

 

論文の過去問から論点を学習するという方法もありますが、短答過去問は解けるが論文(司法試験・予備試験どちらも)の過去問には歯が立たないという段階では、論点の学習を論文の過去問で行おうとしても、自分の実力で理解できるか不安がありました。また、短答過去問のみでは、典型論点の学習漏れのリスクがあると考えました。この2つの理由から、演習書の通読で典型論点の理解を深めることとにしました。

 

上記の理由のうち、「短答過去問のみでは、典型論点の学習漏れのリスク」があるのかという点ですが、各科目のかなりの論点は短答過去問から習得できると思っています。ですが、例えば、私の手元にある2015年度の刑事訴訟法の短答過去問集の目次を見ると、違法収集証拠排除法則は、その当時までの過去問では1問しか出題されていませんでした。

 

違法収集証拠排除法則は、刑事訴訟法を理解する上で非常に重要な論点です(証拠が違法で公判で使えなくなるからこそ、捜査での違法を指摘する意味がある)。当然、多くの受験生もも勉強しており、司法試験・予備試験の論文試験で出題されても誰も文句の言いようがないと言えるレベルの論点です。

 

しかし、違法収集証拠排除法則について、論文試験に必要な知識を短答過去問1題だけで習得するのは、中々難しいだろうと考えました。

 

この、違法収集証拠排除法則のような、受験生なら誰もが知っている典型論点を理解することを目的として、演習書の通読を勉強に取り入れました。

 

違法収集証拠排除法則と同じレベルの典型論点は、どの演習書にも必ず載っていると考えたので、演習書は、司法試験合格者のブログで人気のある演習書をいくつか本屋で試し読みし、自分に合うと思ったものを選びました。

 

演習書を選ぶポイントとして、演習書には、解説が簡潔なものや、中には「基本書や百選を参照すること」と書くだけで、問題の解説を放棄しているものもあるので、解説が具体的に書かれていることを重視しました。

 

一例をあげると、刑法の演習書の中で、井田良他『刑法事例演習教材』は、合格者の評判が高く、うまく使えれば大変有益な本だと私も思います。ですが、この本は解説が非常に簡潔であることがセールスポイントです。

 

なので、この本は、独学で「典型論点の理解」という目的に使うには適していないと判断し、私は、解説が充実している大塚裕史『ロースクール演習刑法』を予備試験から司法試験まで使い続けました。(解説が充実しているとはいえ、この本も初めて読んだ時は難しく、もう少し初学者向けの本を選べばよかったと最初は苦労しましたが、何度か読むうちに、この本を選んでよかったと思うようになりました。)

 

また、最近は、民法、刑法、刑事訴訟法などで、重要な法改正が頻繁に行われていますし、司法試験の出題傾向を踏まえた演習書が続々と出版されていますので、なるべく新しい演習書であることも選択の一つのポイントになると思います。

 

2 論文過去問の通読

論点の学習は、予備試験・司法試験の論文試験の過去問を通じても行えます。むしろ、論文の過去問は、まさに試験に出題された形で論点を学ぶことができる最重要な教材と言えます。ただ、既に書いたとおり、いきなり論文過去問に取り組むことはハードルが高いと思い、私は、演習書を通読した後から、論文過去問に取り組み始めました。

 

論文過去問については、自力で答案を書いたうえで解説を読むべきだという意見が多くあります。ですが、論文過去問の答案を自力で書くことができるのは、相当にレベルの高いことです。私は、答案を書こうとしても問題と白紙の答案用紙を前に悩むばかりだったので、問題文を読んだらすぐに解説、再現答案、出題趣旨(司法試験については採点実感も)を読むようにしていました。

 

論点の理解という観点からおすすめの論文過去問の解説本は、辰巳法律研究所が出しているLIVE本です。憲法、民訴、刑法、刑訴について、司法試験の論文過去問を理解するのに大変役立ちました。

 

商法については、ronnorさんのブログの商法ガールがお勧めです。

「法学ガール(◯法ガール)の進捗状況を一覧にしました」

 

また、憲法と行政法については、大島義則『憲法ガール』(今はRemakeEditionとⅡの2冊)と『行政法ガール』もお勧めです。ただ、このシリーズは難易度が高いので、自分がこのレベルの答案を書けるようになるため、ではなく、論点の理解や答案作成方法のノウハウを少しずつ得るため、と意識して読まないとかえって不安になるかもしれません。ここまで完成度の高い答案が書けなくても合格できると思います。

 

LIVE本が出版された以降の年度の論文過去問については、辰巳法律研究所の「合格エッセンス本」を使いました。(平成29年度以降、このシリーズが出版されなくなってしまったのは残念です。)

 

予備試験については、私の受験時には論文過去問の解説本がなかったので、合格者の再現答案集の中から、読んでいて自分と波長が合うなと感じた再現答案を解説代わりに読みました。

 

私が使用した本は以上ですが、今では、私が受験生の頃にはなかった、司法試験や予備試験の論文試験を題材にした演習書(解説本)が多数出版されています。自分が読んで分かりやすい、納得できる、そして面白いと思えるものを選ぶことが大切です。

 

なお、予備試験や選択科目の論文過去問は、六法・行政法と比べて解説本の数が少ないので、予備校の過去問解説講座を利用するのも一つの方法です。私の場合は、労働法について、BEXAで加藤喬講師の講座(判例による過去問完全攻略講座)を利用しました。時間の都合で講義の動画はあまり視聴できなかったのですが、テキストが大変分かりやすく、労働法選択者にはお勧めです。

 

BEXAホームページ

 

3 論点学習で気を付けていたこと
司法試験・予備試験では、考えたこともない論点からの出題があることを受験生は覚悟しておくべきです。そのため、論点の理解は、あくまで「典型論点や過去に出題された論点を理解すること」を目標としていました。目標を「司法試験に出題される(であろう)論点を網羅すること」としてしまうと、勉強が論点の理解だけに偏ってしまい、合格に必要な他の勉強に手が回らなくなってしまうおそれが高いからです。

 

いくら論点の知識が頭の中にあっても、それを試験当日に答案に書くことができなければ1点も得点は貰えません。ある程度典型論点を把握できたと感じたら、論文過去問を用いて、答案作成方法の習得に時間を割いた方が、合格に近づくと思います。

 

また、演習書も論文過去問も、繰り返し再読すべきです。私は、予備試験受験1年目の段階で、各科目の演習書・予備試験の論文過去問を1度は読んでいたのですが、振り返って考えると、1回読んだだけの時点では解説の文字を追えるだけで、演習書・過去問で解説されていることをほとんど理解できていなかったと思います。

 

司法試験の過去問や良質な演習書は何度読んでも不思議と飽きず、読むたびに新たな発見があるものです。私は、短答過去問・演習書・論文過去問を順に繰り返し読むことで、少しずつ各法律科目の奥深さに気付きを得て、苦しさよりは法律学の面白さを感じながら勉強を進めることができました。そして、繰り返し読む中で得た気付きは、きっと試験本番で役に立つはずです。

 

一つ例をあげると、私は、宍戸常寿『憲法 解釈論の応用と展開』が演習書の中で一番好きで、受験勉強を離れた趣味としての通読も含めると合計8回ほど読みました。(受験4年間の合計。他の科目の演習書は2回しか読めなかったものもあるので、かなり趣味に走っていました…)

 

この演習書の中で特にお気に入りの箇所が、マクリーン事件判決について、外国人の人権を認めただけの判例ではなく、実は出入国管理システム優位の発想に立った判決だと解説している箇所です。この解説を初めて読んだときは、この判例からそんな解釈ができるのかと本当に目を見張る思いがして、「判例を読む」とはこういうことを言うのかと深く印象に残りました。その後、法律の勉強に嫌気がさした時などにはその箇所を読み返して、法律を学ぶ面白さを思い出し、やる気を復活させるお守りのような存在となりました。

 

そして、私は平成29年の司法試験で合格したのですが、この年の憲法はなんと出入国に関する架空の法律に関する問題で、問題文を読むと自然と『憲法 解釈論の応用と展開』のマクリーン事件判決に関する解説が思い出され、問題を解くうえで非常に有益な視点を与えてくれました。

 

これはあくまで一つの偶然ですが、受験勉強をしていく中で、面白いな、興味深いなと感じた箇所は、試験本番で思い出しやすいので、なるべく楽しめる(知的好奇心を満たしてくれる)勉強方法を取ることは、大切だと思います。

 

4 論文対策について(2)論文作成方法 に続きます。

 

上記のマクリーン事件判決のくだりについて、思い出せる限りで再現してみました。

平成29年度司法試験 憲法論文の一部再現(ネタバレあり)

私の短答対策は、とにかく過去問を繰り返すことに尽きました。

 

予備試験を受験した2年間で、法律科目7科目の短答過去問を年3回ずつ(合計6回)解き、司法試験を受験した2年間は、憲法・民法・刑法の3科目の短答過去問を年2回ずつ(合計4回)解きました。

 

各科目の「伊藤真の入門シリーズ」を数回通読した後、基本書の通読は行わずに、すぐに短答過去問を解き始めましたので、各科目の基礎知識の大半は短答過去問を通じて習得しました。

 

予備試験受験1年目(1回目~3回目)

1回目(短答過去問を回した回数。以下略)

公務員試験で勉強していた憲法・行政法・民法については短答の問題文は読めるが、正解は1~2割程度というレベル。商法・民訴・刑法・刑訴は問題文の意味が分からないか、問題文は読めても全く解ける気がしないというレベルでした。

 

問題を自分で解こうとすると、1問で10分~15分以上かかってしまい、これではいくら時間があっても足りないと判断し、問題文を読んだらすぐに解説を読むことにしました。問題を解くというより、問題文・解説を通じて知識を頭に入れるイメージです。

 

入門書の次にいきなり過去問に取り掛かるのは中々大変で、予備試験・司法試験の受験勉強で最初に辛いと感じたのが、この時です。特に、問題文も解説もちんぷんかんぷんという状態が数問続く分野は本当に辛く、そのような分野については、短答過去問を一度離れて、伊藤真の入門シリーズより詳しめの入門書か、基本書の該当分野の箇所を読みました。

 

民法の根抵当権や多数当事者の債権関係、会社法の新株予約権、民事訴訟法の多数当事者訴訟、刑事訴訟法の公判前整理手続などが、基本書等を読んだ分野です。

 

このようにして、特に難しい分野は基本書等を参照しつつ、短答過去問の問題文と解説を読んでいきました。短答過去問に初めて接するこの段階では、一度に全てを理解しようとは考えず、その分野で出てくる専門用語に慣れる位の気持ちでいました。この苦しさも2回目以降は楽になるはずと思って耐えました。

 

2回目

引き続き、問題文を読んだらすぐに解説を読み、問題文と解説を通じて知識を習得することを主目的として、法律科目7科目の短答を解き続けました。問題文の意味が分かる問題も1回目よりは増えており、気持ちの面ではだいぶ楽になりました。

 

自分の中でこれは解けるかも、という感触がある問題については、正解の肢や間違いの肢にあたりを付けた上で解説を読みました。あくまで「あたりをつける」なので、10秒程度考えても正誤が分からない場合はすぐに解説を読んでいました。

 

3回目

2回目までの段階で、全ての肢の正誤の理由を指摘できた問題は飛ばして、残りの問題を解きました。この時点では、正解の肢が判断できる問題はだいぶ増えていましたが、間違いの肢の理由を答えられないものは、まだまだありました。

 

短答過去問を3周回した後、最初の予備試験を受験しましたが、短答試験で約210点(法律科目が約165点、一般教養科目が約45点)を取ることができました。初受験でかなりの上位でしたので、すごく舞い上がりました。(その後の論文試験で痛い目を見る訳ですが)

 

予備試験受験2年目(4回目~6回目)

4回目

論文試験後、法律の勉強から数か月遠ざかっていたので、10月頃から記憶喚起の意味も込めて、あらためて、法律科目7科目の短答過去問を全て解き直しました。そして、問題中の各肢の正誤について、1つでも間違えたものがあった問題に付箋を貼りました。

 

5回目~6回目

4回目に付箋を付けた問題だけを解きました。6回目の時点でもまだ肢の誤りの理由が説明できなかった問題については、横に貼っていた付箋を縦に貼りかえるなど、分かるようにしておき、短答試験の直前に見直しました。

この時点では、正解を間違える問題はほとんどありませんでしたが、誤りの理由を答えられない肢が、民法と商法は50肢程度、他の科目は20~30肢程度ありました。

 

この後、2回目の予備試験を受験しましたが、前年度と同じく短答試験は約210点(法律科目が180点、一般教養科目が約30点)でした。法律科目の得点が前年度より上昇したので、短答過去問を繰り返すことことで、基礎知識がより身に付いたのだと感じました。

また、短答過去問を繰り返し解いたことは、論文試験合格後、口述対策にも役に立ちました。(別の記事で触れる予定です。)

 

司法試験受験時(7回目~10回目)

予備試験合格後は、短答対策に時間を割かなくてよいと考えていましたが、何もしないのも心配だったので、憲法・民法・刑法の3科目について、記憶喚起のために全ての問題を1回解きました(7回目)。その際、肢の誤りの理由を一つでも指摘できなかった問題については、付箋を貼り、その問題は再度解きました(8回目)。また、司法試験最終日の短答試験の前夜に、付箋を貼った肢を見直しました。

 

司法試験の受験2年目も同じように勉強しました(9回目、10回目)。

 

司法試験では、受験1年目、2年目とも、短答で約140~150点を取ることができました。短答だけで見れば上位の得点だったので、個人的には、短答に特化した対策は過去問演習だけに絞り、その分、論文対策に集中した方が合格の可能性は上がると思います。

 

なお、私は、電車通勤をしていたのですが、上記の「3回目」で短答過去問を解く頃から、短答対策はできるだけ通勤中に行っていました。初見の短答過去問を電車内で解くことは負担が大きく、私にはできませんでしたが、過去問を繰り返し解くうちに電車の中で短答の演習ができるようになりました。 (解説の不明点を基本書で確認することなど、最小限のことだけ自宅で行いました。条文を確認したい時はスマホのアプリで確認しました。)

 

短答の問題文は、試験委員が、各科目の知識の中で、これは理解してほしいと考えたところを取り上げているはずです。そのような短答の問題文を、気の散ることが多い電車内で読み、解くことができるようになることは、実力が付いたことの一つの目安になると思います。

 

短答の過去問演習には、予備校の問題集を使用しましたが、電車通勤(通学)をしている方は、できるだけ薄い問題集(解説が1ページ以内に収まっている問題集)を使うのがおすすめです。私は早稲田経営出版と法学書院(中央大学真法会)が出している体系別の問題集を使用していました。

 

また、私はずっと紙の本で勉強していましたが、持ち運びのしやすさという意味では、電子書籍(iPadなどのタブレット端末)を使用するのもありかもしれません。付箋機能やマーカー機能がどの位使いやすいか、機種やアプリにもよるかと思いますが、短答過去問の演習は電子書籍との相性が良いのではないかと思っています。

 

一般教養科目については、論文と合わせて追々書こうと思っています。