魔法の秘密基地。 -6ページ目

残す

あー
物事をひとつ終えた。
終わらせた。

大分すっきりした。オオイタじゃねーぞ。

また普段の日常に戻る。
履歴書を書く。
書く。
ふと気付く。
なんか資格取らなきゃとか、目に見える成績残さなきゃ、とか。また別だけど子供産みたい、とかさ。


…ひょっとして何も残せないんじゃない?
30年生きてて何もないんだよ。
諦める感じとはまた違う。
楽になった。
長い間憑いていた霊が、織田無道にも祓えなかった霊が簡単に離れた感じ。わかりにくいな。

残さなくていいんだ。

跡形もなく消えてなくなればそれはそれでよしとする。

短期間東京に戻るのもアリだ。
そっから遠回りしてまた考えればいい。

今日は楽になった。
地域とか職種とか縛られるのが馬鹿らしくなった。
一番自分が好きな場所に行けばいい。

最近周りがどんどん結婚していく。チームが出来るというのは素晴らしい事だ。“愛すること”がお互いに届くというのは素敵な事だ。
くそっ
早い話、羨ましいんである。

それでも自分の生活が変わるワケじゃないのにわくわくする。幸せのお裾分けってこーゆー事なんかー。
と同時に“自分にも結婚出来る可能性はあるんじゃないか”と幻想を抱く。

ただ今回は。

東京を離れる1日前に恋をした。たぶん別れがなければはっきりと自分で気付く事もなかった。
本当に気付くのが遅い。
メールを送った後、その人の母親が死ぬ程羨ましくなった。対男の人にはよくある感情ではあるけれど、今回は少し違う気がした。
入学式の写真に一緒に写りたかった。
ハンコ注射の痕をおちょくりたかった。
遠足のお弁当を作りたかった。
“ばばぁ、うるせーよ”とか言われたかった。
そして、結婚式で嬉し涙を流して憎まれ口を叩きあいたかった。

そんな思いが一気に頭を駆け巡った。
もしかしたら恋ではないのかもしれないけど。

だけどそれから一度も会っていない。
TVの中や本の登場人物を好きと言っているようなものだ。虚しい。
メールもしていないし、電話もしない。自分が求めることと相手が求めることは違う。当たり前だ。それを平然と自分の都合ではできない。

忘れようとか諦めようとは思わない。時間が解決してくれるのをひたすら待つ。

必然的に婚期も逃す気満々だ。好きな人がいるのに他に目を向けるなんて難しい。時間の無駄、相手に失礼だ。

別れ際に一番好きな話だと勧められた星新一の“古風な愛”を読もう。

七夕の後で

今日、街の喫茶店まで行こうと思った。
なんせ夏は急いでいるみたいだ。
あったか~い珈琲が美味しく飲める限界の季節なのだ、きっと。

見慣れているような、いないような風景の中を歩いた。
小さい頃から知ってる筈なのに何故かぎこちない。

風向きに素直なねこじゃらし。
寂れた公園の誰も乗る事のない木馬。
アスファルトの照り返しと混じる土と草のぬくみ。


ふと、通りがかりの家の軒先にしまい忘れの笹の葉があった。
田代まさし根性で短冊を盗み見しようとほくそ笑んだ。ミニにタコ。

“東日本の人たちが早く元の生活に戻れますように”

元になんか戻れない。3.11前には。東京でさえ戻れないのだ。東北はもっと戻れない。そして私も戻れない。過ぎた時間への愛しさは柔らかいソフトクリームみたいに溶け落ちる。
ただ、新しく作る事は幾らでも出来るだろう。システムも、生活も。

だけど、単純に嬉しかった。
誰も忘れてはいないのだ。届かないとしても祈り、願う気持ちは持っているんだと。
叶う叶わないじゃない。
私自身こういう所が甘いし、馬鹿だと思う。

うん、悪くない。
帰り道は微妙なズレもなくなった。