ミュージック・マガジン 2024年8月号で、「2000年代 Jポップ・ベスト・ソングス100」が特集された。
2000~2009年にリリースされ、オリコン50位以内に入った日本制作のシングルA面曲の中から、ライターがそれぞれ 25曲選び、その集計を元にしたランキング(1~100位)が発表された。
そこに浜崎あゆみが入ってないという話題を見かけた。
またその話か…と私などは思ってしまうのだが、浜崎あゆみは 2000年代を代表するアーティストとも言えるのだから、そこに入ってないことについては何度でも考えていいのかも知れない。
ただ、私としては、あゆは入ってないけど、エレカシはどうなんだ?ってなるわけじゃないですか。
エレカシ、入ってませんでした。
なら、考える必要なし!と立ち去ることもできるのだが、少し考えてみたいと思う。
こういうランキングは、自分の好きなアーティストや曲が選ばれれば、もちろん嬉しいが、そんなに嬉しいか?というのもある。もっと言えば、選ばれなかったらダメなのか?というのもある。
自分の好きなアーティストや曲が選ばれる社会の方がより良い社会だと思うから選ばれて欲しい!というのなら、わかるはわかるが。
しかし、何にでも限界はある。
この特集の対談で、ライターのつやちゃんが「Tommy february6 が入って、浜崎あゆみが入らなかった」ところに過渡期が現われてると言っていたが、これはどういう意味だろう?
「Tommy february6 が入ったのだから、これからは浜崎あゆみも入っていく」という意味なのか、「浜崎あゆみではなく、これからは Tommy february6 が入っていく」という意味なのか。
「ゆっきゅんは入るが、浜崎あゆみは入らない」みたいなこと、これからもあるような気がするけど。
私は「Tommy february6 が入って、浜崎あゆみが入らなかった」ところにミュージック・マガジンの限界があると思っている(浜崎あゆみの限界とも言える)。過渡期ではなく、限界。
その限界が今後どうなっていくのかという話かも知れないが、何にでも限界があって、その有限性がものごとを面白くしていると思うから、その限界がミュージック・マガジンの面白さでは?とも思う。
つやちゃんは、浜崎あゆみは曲では入らなかったけど、アーティストランキングだったら入っただろうと言っていて、それは確かに!と思った。
ただ、対談でも「入らなかった」ことについて触れられて、これからあげる動画でも「浜崎あゆみランク外問題」が語られてて、入ってる人より目立ってない? 入ってないのに、入らなかったことについて語られ、下の方の順位に入るより目立ってる?
これはもはや、「選ばれない」という形で選ばれてるのでは?
やはり、浜崎あゆみは「狭間にいるアーティスト」なのかも知れない。過渡期あるいは限界の側にいつもいるアーティスト。以下のブログで書いたように、批評性とシリアスの狭間だったり。
で、「浜崎あゆみランク外問題」が語られてる動画というのは、
(22:09~ 浜崎あゆみランク外問題)
音楽メディアで活動する、照沼健太(てけ)と伏見瞬(しゅん)による「てけしゅん音楽情報」です。まず、
てけさん、浜崎あゆみを選んでる!(7位に「NEVER EVER」)
それで、浜崎あゆみが入らなかった理由として、しゅんさんは「カルチャー全体がオタク寄りになっていて、マイルドヤンキー感が不在であること」をあげている。
が、私には、浜崎あゆみはマイルドヤンキーなのか?という疑問がまずあって、でも、マイルドヤンキーというなら、Awich やちゃんみなは良くて浜崎あゆみはダメみたいのがあるじゃん?というのもある。
(Awich はマイルドヤンキーではなくてヤンキーということ? え? マイルドじゃないヤンキーなら良いということ? え? その違いは? え? あゆは?)
そのへんのことを前に書いたブログ。
それと、(浜崎あゆみは)いろんな曲にバラけたから入らなかったと。それでも、(浜崎あゆみを)選んだ人は少なかったとてけさんは指摘するが、代表曲が決まってるアーティストが上位に来やすいので浜崎あゆみは不利だったとしゅんさんは言う。
あ!ここで言っておきたいが、ランキングにエレカシは入ってなかったが、エレカシを選んでる人はいたんです。「俺たちの明日」を選んでたはず。
話を戻して、浜崎あゆみは代表曲が決まってない。これは、わかる。あゆには代表曲がないのでは?ってこと、大分前だが書いてた。
しかし、ちょっと思うのが、てけさんが「NEVER EVER」を選んだことについて「この曲は誰とも被らないだろう」と言ってて、そういう曲を選ばせる浜崎あゆみのマイノリティ性みたいなものがあるんじゃないか。てけさんが選んだ理由はわからないが、そういう「誰とも被らないもの」を選ばせるような性質が。
評価されないことは才能。マジョリティでありながらマイノリティであること。前に書いたこんなこと。
さらに、ちょ~っと思ったのが、2000年代は「Jポップ」と「硬派なロック」がわかれていて、だから、ブランキー・ジェット・シティやミッシェル・ガン・エレファントやナンバーガールは入れなかったと、てけさんもしゅんさんも言ってて。くるりやスーパーカーは「Jポップ」に入れて良いけど、ブランキーやミッシェルは入れられなかったと。そして、このときは「ミッシェルが売れてた時代」でもあったと。
それで、私は思った。実は、浜崎あゆみはミッシェルタイプだったのでは?
そのことは、このへんでもちょっと書いたかも知れない。
(「ロック系」と「ヒット系」。「ヒット系なのに、ロック系に踏み込んできた」。こちらの方が書いてるかも知れない)
いや違うだろ!と言われてしまうかも知れないが、私はどうだったかというと、実際、私は浜崎あゆみを syrup16g や THE BACK HORN と「同じもの」として聴いていたかも知れない。ブランキーやミッシェルを聴いてたのはそれより前だから、ちょっと比べづらいけど。
私は、こういうときに浜崎あゆみが入らないのも、あのとき(2001年3月28日)「宇多田ヒカル vs 浜崎あゆみ」をやってしまったことが今も関係してるんじゃないかと思ってる。というか最近そう思えてきた。
「宇多田ヒカル vs 浜崎あゆみ」の功罪。
「宇多田ヒカル vs 浜崎あゆみ」の構図が浜崎あゆみへの見方を今も歪めてるというか、その構図がなければ、浜崎あゆみは浜崎あゆみとして、もっとフラットに見られるんじゃないか。宇多田ヒカルに対抗するしないじゃなく、宇多田ヒカルとは関係なく、浜崎あゆみを見る。それが意外とできてないんじゃないか。
なんというか、「天下の宇多田ヒカルに喧嘩売ってんじゃねぇーよ!」みたいなものが、今もどこかにあるんじゃないかって。
ただ、こういうランキングがあったときに、「入ってない!」と声高に言うのは、そのアーティストなり曲なりを「評価してる人」を無視することにもなりかねない。あまり知られてないアーティストならまだしも、浜崎あゆみは知られてるわけだから、それだけ多くの「評価してる人」を無視することになる。いや、そういう人を無視して欲しくないから、「入ってないじゃないか!」と主張するのだってことかも知れないけど、「評価してる人」を軽視してないか? 自分が評価されたい人に評価されたいように評価されたいだけではないか? 「評価してる人」を忘れずにいたい。(この前の桑田さんもそうだし)
「インテリはポップを間違えた方向に持ち上げて平気で殺す」とスージー鈴木が言ってたと思うが、前は「評価されたら終わり」というのが私の中にあったけど、それよりも今は「評価されても終わりじゃない」ってことかも知れない。
最近、評論家の柴崎祐二がこんなことを投稿していた。
元来は既存ジャーナリズム言説へのオルタナティブでもあったはずのポプティミズムが広く共有されて、定量的レベルでの「勝者」への単なる付和雷同めいた言説がそれなりのプロップスを得てしまっていると。
(私は「ロックは偉くなってしまった」と書いたブログを思い出してしまった)
そこで思ったのが、浜崎あゆみがすごいのは、「ポプティミズム」が盛り上がっても、そこに乗っからないところではないか?
(Dos Monos の TaiTan が言ってた、「Y2K」とか文脈に乗っかってこないところとも通じる)
偉くなるためにやってないというか。それに飲み込まれないというか。
ああ、「少し」どころか、たくさん考えてしまった。
2000年代は入ってなかったけど、1990年代に入ってたりするかもよ? 1990年代はどうなのか!
ってことで、ミュージック・マガジン 2022年10月号、特集「1990年代 Jポップ・ベスト・ソングス100」をチェックしてみた!
そしたら、96位に浜崎あゆみ「Boys & Girls」入ってた!
(ここでもエレカシ入ってなかったよ!もう! 選んでる人はいた)
そして、大変長らくお待たせしました!(笑)
書くからには私も選んでみようと、25曲選びました!
シングル曲で、オリコンランキングは無視して。
選んでみてわかることってありますね。2000年代は私にとって「(椎名林檎と)エレファントカシマシと浜崎あゆみ」と思ってたけど、そしてそれは間違いなくそうだけど、そっか、私はこの曲が 1位か。
「2000年代 Jポップ・ベスト・ソングス25」
1 「キャノンボール」中村一義
2 「ギブス」椎名林檎
3 「38 special」SHERBETS
4 「ワールズエンド・スーパーノヴァ」くるり
5 「DANCEHALLIC」PUSHIM
6 「波動」AJICO
7 「SURREAL」浜崎あゆみ
8 「リアル」syrup16g
9 「マウンテン・ア・ゴーゴー」キャプテンストライダム
10 「オンリー ロンリー グローリー」BUMP OF CHICKEN
11 「so many people」エレファントカシマシ
12 「Your Song」LOVE PSYCHEDELICO
13 「traveling」宇多田ヒカル
14 「楽園ベイベー」RIP SLYME
15 「未来」THE BACK HORN
16 「changes」Base Ball Bear
17 「訳も知らないで」スネオヘアー
18 「Love Addict」中島美嘉
19 「サヨナラCOLOR」SUPER BUTTER DOG
20 「A Perfect Sky」BONNIE PINK
21 「MY THING」ホフディラン
22 「泥棒」UA
23 「Sports Wear」SPORTS
24 「CHE.R.RY」YUI
25 「くちばしにチェリー」EGO-WRAPPIN'
エレカシは「俺たちの明日」と迷ったし、AJICO も「美しいこと」と迷ったし、宇多田ヒカルも「誰かの願いが叶うころ」と迷った。あゆは、「Bold & Delicious」も入れたかったー! GRAPEVINE の「ぼくらなら」も入れたかった。他に、レミオロメン「粉雪」とか森山直太朗「さくら(独唱)」とか。Tommy じゃなくて the brilliant green を入れたかったけど、ブリグリは 1990年代かぁ。と、これを選んだことによって、1990年代も 2010年代も選びたくなった!
25位→1位の順でプレイリストも作りました。
https://open.spotify.com/playlist/7nOoIoQGnW93LqPuqa96Vp
(キャプテンストライダム「マウンテン・ア・ゴーゴー」は未解禁)
あなたは、どんな曲を選びますか?
それでは、2000年代 Jポップ・ベスト・ソングス、私の第1位をお送りしてこの記事を終わりにしたいと思います! 長々とありがとうございます!