パルム・ドック賞ってホントにあるのですね。「落下の解剖学」 | 映画と音楽のある生活

映画と音楽のある生活

主に映画と昔聞いたレコードの感想などを書いています。

 地元の映画館で視聴した。雨の日曜の午後だからか、半分くらいの席がうまっていた。この映画館に、これだけ人が入るのは「福田村事件」以来かもしれない。

 フランスの雪深い山荘で、不可解な落下事件がおきる。事故かと思われたが、やがて死んだ男の妻である作家が逮捕される。

 

 凶器等の物証や自白もないまま事件は裁判にもつれ込む。裁判を通じて検察側は夫婦の不仲などの状況証拠を提出するが、最終的には、唯一の目撃者(?)である盲目の11歳の息子の証言が判決を左右することになる。

 正直、面白かった。152分という長い作品だったが、最後までストーリーに没入できた。なんとなく途中で、西川美和監督の「ゆれる」を思い出した。他の方のレビューを見ると、妻が夫を本当に殺したか否かの結論があやふやなのが気に入らないというコメントがあったが、私は、これで良かったと思う。

 裁判も国に寄って違いはあるのだろうけど、当作品の様な裁判が普通であればフランスの裁判はかなり問題があると思った。

 スキンヘッドの検事の論法は、証拠を積み重ねるというよりも主観による印象操作をしている様だ。それは、弁護士も同じでフランス語が苦手なドイツ人の妻に「英語じゃなくて、フランス語で頑張ってね。」と言うし、「事実よりも、君がどう見えるかが肝心だ。」などとアドバイスする。

 私の印象だけど、盲目の息子は母親を庇う為に嘘の証言をしたと思った。嘘じゃなければ脚色をしていると思う。それだから、無実を勝ち取って帰宅した主人公の妻は息子ではなく、犬を抱いて眠る。

 この犬の演技は達者だった。アスピリンを飲まされる演技が、動物虐待でなければ良いのだが。