個人ブログの方で、シミに対する処置のお話を記載いたしました。
内容が混み合っておりますが、
・レーザーは機械に、
・光治療は医療機関に、
・液体窒素は医者に、
治療効果が左右される、といった内容となっております。
さて、またビタミンCのお話の続きです。
上の絵は、グルタチオン-アスコルビン酸回路と呼ばれております。
大雑把に言いますと、
『体内で活性酸素を除去する仕組みの1つ』
でございます。
この代謝経路についての解説は、Wikipediaその他、より詳しいことは生化学の教科書に譲るとして、
ここでは以下の点に注目していただきたく思います。
・代謝経路の中に、グルタチオン、アスコルビン酸(ビタミンC)、ビタミンB3、色々な代謝酵素が登場する。
・どれかが欠けると活性酸素の処理が止まる。
・ビタミンCもグルタチオンも、使われたあとに一周して再生するため、減らない。
(図の外で、NADHやNADPHといったビタミンB3も再生します。)
反応の前後で変化しないものを省くなら、
過酸化水素(H2O2) + 水素(というか還元力) → 水
みたいな図式になります。
すごくシンプルな反応のために、多くの物質がちょっとずつ必要になるのですね。
1種類のビタミンを大量に摂るより、欠けてしまうビタミンがでないことが大切なのです。
ちょっと古い (2003年)ですが、関連する栄養素をバランスよく摂るメリットが分かりやすいような文献を、1つご紹介いたします。
日本栄養・食料学会誌 第56巻 第4号 221-228 (2003)
『モルモットに経口摂取させたビタミンC、L-システイン、ビタミンEの併用による色素沈着抑制効果』
モルモットに、ビタミンC、ビタミンE、L-システインを経口摂取させることで、
紫外線のUV-Bを照射した際の、皮膚色の明るさ(L値) やメラニンの産生(DOPA反応陽性メラノサイト) がどのように変化するかを検討しております。
内容をかい摘むと、
(1) 背景
ビタミンCの美白効果として挙げられる、
・チロシナーゼ活性の阻害
・ドーパキノンからドーパへの還元
・黒色の酸化型メラニンの還元
は、経口摂取での単独投与ではメラニン生成抑制ができるほどの血中濃度にならない、と考えられている。
L-システインもビタミンEも、単独でのメラニン沈着抑制の報告がない。
(2)目的
予試験: ビタミンCの経口摂取量を変更しながら、メラニンの生成や色素沈着抑制効果を用量反応試験にて確認。
本試験: L-システインおよびビタミンEを同時に経口摂取させての色素沈着抑制効果を検討。
(3)方法
予試験: モルモットを、ビタミンCの経口摂取量で以下の4群、対照群(経口摂取なし)、200mg/kg、600mg/kg、1,800mg/kg/日に分けて、UV-Bを照射。
(体重60kgの人間に直すと、単純計算で12g、36g、108gと大量です)
本試験では、効果が高そうだった600mg/kg群に、L-システインを加えた群、L-システインとビタミンEを加えた群で、UV-Bの照射部位と非照射部位のメラニン生成量の差、血中ビタミンC、血中ビタミンE、過酸化脂質の濃度の差異を確認。
(4)結果
ビタミンCの経口摂取での単独投与では、UV-B照射を受けた際の、肌の明るさの低下が抑えられる傾向があったが、ビタミンCを摂取していない対照群と比べた有意差は認められず。
ビタミンC+L-システイン、あるいはビタミンC+L-システイン+ビタミンEの摂取では、非摂取の対照群と比べ、肌の明るさの低下は有意差をもって抑制され、メラニン生成については非摂取の対照群およびビタミンCのみ摂取した群より優位に抑制された。
血中のビタミンC濃度は、ビタミンC+L-システイン+ビタミンEを摂取した群が一番高かったが、他の群と有意差はみられなかった。
血中の過酸化脂質濃度は、ビタミンC+L-システイン+ビタミンEの摂取群が非摂取の対照群およびビタミンCのみ摂取した群より優位に低かった。
(5)考察と結論
紫外線でメラニンがつくのを防ぐには、ビタミンCだけでなくL-システインやビタミンEの併用が重要。
ビタミンC単独での口からの摂取は、かなり多くてもあまり効かない。
あくまでも肌の色と抗酸化とに注目した際のお話ですが、興味深い方は検索されることをお薦めいたします!!
参考文献:
日本栄養・食料学会誌 第56巻 第4号 221-228 (2003) 藤原葉子ら
『モルモットに経口摂取させたビタミンC、L-システイン、ビタミンEの併用による色素沈着抑制効果』