うたは優しくなった。

あるいは、だんだん優しくなっていく。


付き合い始めたばかりの頃は、恋人であるにも

関わらず、怖いという感情がいつもつきまとった。


はじめはほとんどキスをしてくれなかった。

それを不満というより不安に思っていた。

少しずつ回数が増えて、比例しながらうたは優し

くなってきた。



前は、あんまりキスしてくれなかったね

そう言ったら

正直、キスってあんまり好きじゃなかった

と、うたは言った。


好きな子としか付き合わない、セックスもしない

セックスは神聖なもの


うたの言葉を、わたしから見れば矛盾しているとしか

思えない言葉をあえて突き詰めはしなかったけれど。



今までの恋人とわたしは違うのだと、そう言って欲しい。

いつもそう思っている。


子どもが欲しい

その次くらいの願いはそれだと思う。

「予定でいけば」セックス=妊娠だった、木曜。

うたには無事に会えた。


友達に避妊をしていない、というと、外で?と聞かれるけれど

そうではない。

避妊をしてない、とは、いかなる避妊の方法も用いていない

の意味だ。

そうなってから、半年は経つのだけれど、未だにわたしは身

軽なままだ。

基礎体温を付け始めてから、何ヶ月か経つが、ネットなどで

見られるような理想的な体温の二相はなかなか現れない。

もともと体温が低くて、冷え性なせいもあるかも知れない。

あまり体も丈夫じゃない。

妊娠し難い体質だろうかとよく思う。


会う回数も少ないのだから、当然分母も下がる。

そうなれば偏にタイミングの問題と言えるのかも知れない

けれど、やはり不安になる。

今すぐに結果を出せないことに対してではなく、いつでも

最終手段を持っているという安心感がないのが怖い。



珍しく時間ができたからと、今夜も会えることになった。

週に2度も会えるなんて、今まで一回でもあっただろうか。



近くにいながらとても遠い。

うたの側に居たい。

「自分の気持ちで、好きでするならマチしかいないと思う。

けど、今でも仕事の為に結婚を利用することを考えること

がある」



うたに、ある時そう言われた。

ある程度覚悟していたけれど、別段ショックを受けてもいない

自分に少しだけ驚いた。


うたのことは、誰よりも愛していると思う。

それでも、うたを信頼しているわけじゃない。


信頼よりもっと深くて浅ましい感情で、わたしはうたの全てを

享受しているのだ。


うたのよわさも、卑小さも、気位の高さも、才気も。

それでもうたには、確かに足りないものがある。


うた自身もそれに気付いているからこそ、政略結婚なんて

小説じみた方法を思いついたのかも知れない。


それでも、どんなに卑怯であってもまだ、わたしはうたが好き

だ。

うたの全てを愛しいと思う。




うたはよく働く。

朝方に今から休む、とメールがくることも多い。


うたと抱き合った時、こんな季節だというのに、ワイシャツの背

が汗で濡れていることがよくある。

遅れそうだったから走ってきた、うたはそう言うのだけれど、

わたしは彼の一日を思って切なくなる。


冷たくて計算高いうたは、それでも血の通った人間なんだと、

そんな時に改めて感じるのだ。


人間は弱い


そんな命題までも、わたしはうたから感じ取る。



他人の弱さを愛したことなんてなかった。

他人の弱さは醜悪な物でしかなかった。


なのに、何故だろう。

わたしはうたの全てが好きだ。



今夜会えるから。

どうなっても、後悔したくない。


うた(彼)のこと。


うたはちょっと偉い人らしい。

平日と土日で違う会社にいる。

どっちも経営サイドだけど、社長さんではない。

いずれ独立するつもりで、今は人脈とかを広げたいと言っている。


前に別れ話をしたことがある。

お互い好きだけど、時間とか思うようにならないし、わたしだけが

いろんな我慢をしなければいけないっていう状況はよくないから

どうするこうするってことを話しあった。

結局、別れたくないから別れなかったんだけど。


「俺のどこがそんなに好き?」

うたに聞かれて

「頭がよくて才能があってクールなエゴイストの俺様で、傲慢な

とこさえかっこいいと思わせる自信、とか」

思ってたことを言うとうたは呆れて笑った。

「変ってるなぁ」って。

でも、そういうとこが好きなんだろうな、そう付けたして。


うたはまさしくそういう人間性の持ち主だし、わたしも彼ほど才能に

恵まれてはいないけれど、持っているものは近い気がする。

今までの付き合いを振り返ると、たぶん、そういう風に見えていた

だろう。


本気で「これは報いだ」とか思いはしないし、もしこれが今までの

報いであるとすれば、うたはもっと酷いことをしていると思う。

うたにはもっと酷い報いがあって然るべきだと思う。



死ぬほど愛しているのと同じ強さで、わたしはうたを憎んでいる。

そう思いたくないと否定してみたところでやっぱり、「愛情」は常に

幾許かの憎しみを孕むのだ。

愛情の母胎が「執着」であれば、それは逃れられない。


ねぇ、うた、あいしてるよ。

コートをかけたら、すぐに抱きつこうと思っていた。

先にコートをかけ終わった彼は、同じことを考えながら待っていてくれた。

目が合って、抱き合って、それだけで本当に幸せな気持ちになれる。


そういう瞬間が、本当に幸せ。



ずっと続けばいいのに。

っていうくら、わたしはアナタが好きです。





付き合った人数だけは以上に多いけど、誰のことも結局好きじゃなかった。


相手のいいとこなんて見ようともしなかったし、そもそも見る必要さえ感じな

かった。

愛されてて当然。

付き合ってあげてる、って感覚しかなくて。


男の子はもういいなぁと思い始めて、女の子とも付き合ってみたりして。

どうせ浮きになれないなら、どっちと付き合ってもあんまり変らないと思った。

たぶん、そう思ってたのは正しかったような気がする。


一生誰も好きにならないかなーと思い始めて、むしろあきらめた頃、彼と

出合った。

しかも、ネットで。

SNS?ていうの?

もう、彼はやめちゃったけど。

そもそも2,3ヶ月しかやってなかったのに、すごいタイミング。


彼のことが気になりだしたのは何でだったんだろう。

何となくだけど、自信とか落ち着きとか、そういうものを文章から感じたせい

かもしれない。


彼からは勝ち組の臭いがしたw



略ww



なかなか会えないけど、アナタが死ぬほど好きです。


もう付き合い始めて1年以上経つのに、お互いに恋しちゃってるなぁって思う

時が未だにあるよ。

意味もなく、見詰め合っちゃう時とか、特に。


「笑顔で癒されるなんて、ベタだ」

ってアナタは笑うけど

「実家で休んでた正月より一緒にいる時の方が疲れが取れて不思議だ」

とか


ねぇ、そういう風に言ってくれるのにまだ、わたしはあなたにとって失くせない

存在にはなれないの?


失くしたくない、ってそう思ってるんだとしても、アナタがわたしを選ばない日が

来るような気がしてる。

今も。




昨日も会ったけど、仕事の話をしてるアナタは相変わらず遠いと思う。


お互い好きってだけじゃ上手くいかないのかな。

もっと早く出会えてればよかったね、ってよく話すのは、アナタが今みたいな考え

になる前に一緒に過ごしてたら、今が違ったんじゃないかと思うから。



来週も、同じ曜日に会えるように昨日お願いした。

遅くなってもいいなら時間作れるよ、ってアナタは言った。



来週は、わたしにとって特別な日になるかも知れない。

一ヶ月の中では、1日しかない大事な日だから。



半年間一切避妊もしなかったのに妊娠しなくて。

勿論、会えても月に2,3度だからそういうのもタイミングもあったんだけど。

子どもができたら、変ってくれるんじゃないかって思ってる。

それで関係が壊れるなら、納得もできるし。


来週、いつも通りなら当たるんだよね。。。

どうなるか、自分でもわかってない。