うた(彼)のこと。
うたはちょっと偉い人らしい。
平日と土日で違う会社にいる。
どっちも経営サイドだけど、社長さんではない。
いずれ独立するつもりで、今は人脈とかを広げたいと言っている。
前に別れ話をしたことがある。
お互い好きだけど、時間とか思うようにならないし、わたしだけが
いろんな我慢をしなければいけないっていう状況はよくないから
どうするこうするってことを話しあった。
結局、別れたくないから別れなかったんだけど。
「俺のどこがそんなに好き?」
うたに聞かれて
「頭がよくて才能があってクールなエゴイストの俺様で、傲慢な
とこさえかっこいいと思わせる自信、とか」
思ってたことを言うとうたは呆れて笑った。
「変ってるなぁ」って。
でも、そういうとこが好きなんだろうな、そう付けたして。
うたはまさしくそういう人間性の持ち主だし、わたしも彼ほど才能に
恵まれてはいないけれど、持っているものは近い気がする。
今までの付き合いを振り返ると、たぶん、そういう風に見えていた
だろう。
本気で「これは報いだ」とか思いはしないし、もしこれが今までの
報いであるとすれば、うたはもっと酷いことをしていると思う。
うたにはもっと酷い報いがあって然るべきだと思う。
死ぬほど愛しているのと同じ強さで、わたしはうたを憎んでいる。
そう思いたくないと否定してみたところでやっぱり、「愛情」は常に
幾許かの憎しみを孕むのだ。
愛情の母胎が「執着」であれば、それは逃れられない。
ねぇ、うた、あいしてるよ。