最近、東北地方を中心に熊の出没が話題となって、国民の注目となっています。小職は、仕事柄、これまで、イノシシ、犬といった動物による災害の労災申請を手掛たことがある。今回は、動物による災害が発生した場合に準じて、熊による災害への労災について触れてみたいと思います。
労災の適用は、イノシシ、犬、熊といった動物によって適否が分かれるわけではなく、業務災害と言えるかにかかっています。災害の発生原因が業務上に起因することが重要になります。
【業務災害となりうるための基本となる要素】
業務災害と認められるためには、業務遂行性と業務起因性であることから評価されます。
業務遂行性は、事業主が提供した施設・設備・管理体制の下で労務を提供している状態にあるかどうかで判断するとされています。ですから、休憩時間中でも、施設内における負傷などは、事業主の管理下と判断され、業務遂行性が認められる可能性があると考えられます。
業務起因性は、業務遂行性が認められることに加え、災害の発生は業務と相当因果関係があることとされています。つまり、業務が関係して発生したということです。通常のけがであれば、分かりやすいので、因果関係が認められやすいのですが、長時間労働や過重労働による脳・心臓疾患、パワハラなどによるストレスが原因とされるうつ病や適応障害の場合などは、非常に因果関係がわかりにくく、その判断は簡単でありません。
特に、パワハラによる精神障害では、「強度な心理的負荷」が認められなければ、業務起因性が認定されないことになります。業務起因性の評価を心理的負荷の強度を基本に行うものです。
ケガや病気が、その仕事だから起きたということが求められます。別な言い方では、業務に内在する危険が具現化したということになります。
小職が扱った例では、オートバイでの配達員が、配達中に、道路わきの雑草からイノシシが飛び出してきて、オートバイの前輪にあたり、バイクが転倒して負傷した事件がありました。また、やはり、配達員が、一戸建ての家に配達に行った際に、大きな犬がいて、犬にお尻や太ももの裏を噛まれたという事件がありました。いずれも、業務遂行性と業務起因性が認められて業務災害の認定を受けています。
では、熊による災害の場合はどうでしょうか。労働新聞掲載の熊による災害のニュースから見てみましょう。
岩手県では、2025年10月末までに、熊の出没件数が全国最多の4500件にもなったと発表がありました。10月には、旅館業に従事する60歳代の男性が、露天風呂の清掃作業中に熊に襲われて、出血性ショック死する事故がありました。花巻労働基準監督署は、業務遂行性及び業務起因性とも認められるとして業務災害と判断しています。ちなみに、同署によれば、熊による死亡災害は初めてとのことです。
災害が起きた状況や環境も重視されるかとは思いますが、熊が出没すると考えられる、クマ出没によるリスクが予想される場合には、現実に、熊の出没によって、業務に起因して災害が発生したことで、業務災害と認められる可能性が高いと言えます。
参考までですが、プライベートな旅行などで、熊に遭遇して負傷した場合は、業務災害ではないため、仕事を休んだ場合には、健康保険の傷病手当金、治療費は患者が3割負担で現物給付を受けるなどで対応することとなります。
以上、参考になりましたら幸いです。