★社労士kameokaの労務の視角

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ー特定社会保険労務士|亀岡亜己雄のブログー
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特定社会保険労務士のkameokaが気ままに記すブログです。
テーマは、労働・社会保障(特に、精神障害や交通事故の労災保険・障害年金)を対象とする見方・考え方ですが、ニュース記事になった素材も取り上げております。
使用者・労働者・法人・個人など社労士は本来いずれか一方のみの業務をやるわけではありませんが、このブログでは、労働問題・労災や障害年金など社会保障に関する考え方・見方・法的な見解などを探究する内容となっています。
労働問題解決の際に、あるいは、うつ病や適応障害などの精神障害にかかって、判断の拠り所を探している際に少しでもヒントにしていただきたいとの趣旨で記事を書いております。どこに問題解決の柱があるのかなどの参考にしていただきたいとの趣旨です。
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                         |特定社会保険労務士 亀岡 亜己雄|

 最近、東北地方を中心に熊の出没が話題となって、国民の注目となっています。小職は、仕事柄、これまで、イノシシ、犬といった動物による災害の労災申請を手掛たことがある。今回は、動物による災害が発生した場合に準じて、熊による災害への労災について触れてみたいと思います。

 

労災の適用は、イノシシ、犬、熊といった動物によって適否が分かれるわけではなく、業務災害と言えるかにかかっています。災害の発生原因が業務上に起因することが重要になります。

 

【業務災害となりうるための基本となる要素】

業務災害と認められるためには、業務遂行性業務起因性であることから評価されます。

 

業務遂行性は、事業主が提供した施設・設備・管理体制の下で労務を提供している状態にあるかどうかで判断するとされています。ですから、休憩時間中でも、施設内における負傷などは、事業主の管理下と判断され、業務遂行性が認められる可能性があると考えられます。

 

業務起因性は、業務遂行性が認められることに加え、災害の発生は業務と相当因果関係があることとされています。つまり、業務が関係して発生したということです。通常のけがであれば、分かりやすいので、因果関係が認められやすいのですが、長時間労働や過重労働による脳・心臓疾患、パワハラなどによるストレスが原因とされるうつ病や適応障害の場合などは、非常に因果関係がわかりにくく、その判断は簡単でありません。

 

特に、パワハラによる精神障害では、「強度な心理的負荷」が認められなければ、業務起因性が認定されないことになります。業務起因性の評価を心理的負荷の強度を基本に行うものです。

 

ケガや病気が、その仕事だから起きたということが求められます。別な言い方では、業務に内在する危険が具現化したということになります。

 

小職が扱った例では、オートバイでの配達員が、配達中に、道路わきの雑草からイノシシが飛び出してきて、オートバイの前輪にあたり、バイクが転倒して負傷した事件がありました。また、やはり、配達員が、一戸建ての家に配達に行った際に、大きな犬がいて、犬にお尻や太ももの裏を噛まれたという事件がありました。いずれも、業務遂行性と業務起因性が認められて業務災害の認定を受けています。

 

では、熊による災害の場合はどうでしょうか。労働新聞掲載の熊による災害のニュースから見てみましょう。

 

岩手県では、2025年10月末までに、熊の出没件数が全国最多の4500件にもなったと発表がありました。10月には、旅館業に従事する60歳代の男性が、露天風呂の清掃作業中に熊に襲われて、出血性ショック死する事故がありました。花巻労働基準監督署は、業務遂行性及び業務起因性とも認められるとして業務災害と判断しています。ちなみに、同署によれば、熊による死亡災害は初めてとのことです。

 

災害が起きた状況や環境も重視されるかとは思いますが、熊が出没すると考えられる、クマ出没によるリスクが予想される場合には、現実に、熊の出没によって、業務に起因して災害が発生したことで、業務災害と認められる可能性が高いと言えます。

 

参考までですが、プライベートな旅行などで、熊に遭遇して負傷した場合は、業務災害ではないため、仕事を休んだ場合には、健康保険の傷病手当金、治療費は患者が3割負担で現物給付を受けるなどで対応することとなります。

 

以上、参考になりましたら幸いです。

 

 

労働者災害補償保険法は、業務上及び通勤における災害に対して一定の補償を行うものです。一般的には、”労災”とよく言われているものです。盛んに利用されている一方で、事業主や医療機関が労災様式に証明をしない、いわゆる証明拒絶によって、被災者が労働基準監督署に提出できないという事態も多く生じています。

 

とりわけ、精神障害の労災請求は、近年右肩上がりで増加傾向にあり、令和6年では、過去最高を記録しています。令和5年比で、令和6年度は、205件増加し、3,780件の請求件数となりました。支給件数は、1,055件です。支給件数は初めて1000件越えとなりました。

 

精神障害の発症要因で最も多いのは、「上司等から身体的攻撃、精神的攻撃のパワハラがあった」であり、次に、「仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった」となっています。

 

このように、直近でみても、パワハラなどの職場環境に起因する申出がなされることから、請求人が事業主へ労災様式への証明を求めても、事業主は、労災様式への証明を全面的に拒否する状況となっています。当事務所でも、多くの精神障害の労災請求を行いますが、これまで、事業主がスムーズに、あるいは、渋々も含めて証明したと言う案件は、数件しかありません。

 

この状況は、企業規模に関係なく、まず、依頼すると拒否する傾向にあります。職場が原因で病気を発症したことを全面的に認めたことになるではないかと、事業主側は捉えるようです。しかし、これが病気ではなく、けがですと、証明する率がぐーんと上がります。特に、うつ病や適応障害などの精神障害となると、全面的に受け入れたくなく、抵抗するのが当たり前になっています。

 

この過程では、様々な問題がありますが、今回は、この労災様式への事業主の証明の問題を扱います。苦労している、あるいは、疑問だ、不安だ・・・こういう状況になている方も多いのではないでしょうか。

 

まず、労災様式の事業主証明に関する法規定はあるのか、あるのならどうなっているのか。これを見てみましょう。

 

 

【労働者災害補償保険法施行規則23条】

 

(事業主の助力等)

第二十三条 保険給付を受けるべき者が、事故のため、みずから保険給付の請求その他の手続を行うことが困難である場合には、事業主は、その手続を行うことができるように助力しなければならない。

2事業主は、保険給付を受けるべき者から保険給付を受けるために必要な証明を求められたときは、すみやかに証明をしなければならない。

 

労働者災害補償保険法施行規則23条第2項が、請求人から証明を求められた場合の規定になります。そうです。事業主は、「・・証明をしなければならない」と規定しています。つまり、事業主の義務になっています。これが原則です。ただし、証明の記載の助力義務です。

 

では、会社が、業務災害と認めない、あるいは、業務災害とすることに異議がある場合でも、会社は義務だからと事業主証明をしなければならないということでしょうか。そこで、参考となると思われます次の裁判例を挙げておきます。判決の主要部分になります。

 

「労働者から労災申請の希望が伝えられた場合、事業主としては、その要件該当性を争っているときにまで、請求書に証明をすることその他積極的にその申請に協力すべきことが法的に義務付けられているということはできない(労働者災害補償保険法施行規則23条2項も、事業主が争っている場合にまで上記のような義務を負わせるものとまではいえない。)。また、事業主が、当該労働者と協議又は交渉を行う過程で、事業主側の立場を主張し、又は事業主側と当該労働者との円満な関係を維持してその就業を促すなどの目的のために、労働者に対し、労災申請をしないように説得することは、その内容がその目的に照らして社会的相当性の範囲内である限り、不当であるということはできない。」(下線は筆者)

                      【建設技術研究所事件/大阪地判平24.2.15労判1048号105頁】

 

請求人からすれば、なんというという感じかと思います。法律の規定はあっても、争っておるときまで証明を義務付けているわけではないということです。

 

さらに、この裁判では、証明義務のほか、労災申請しないように事業主が被災者を説得することはどうなのかについて説いています。企業の立場の主張、就業促進などの目的であれば、労災申請しないようにと言われても一概に不当とは言えないとなっています。ただし、「・・内容が目的に照らして・・」ですから、実際の企業の主張内容や態度によっては、証明しないとの態度は不当である場合もあり得るとは考えられます。

 

考え方としては、労災保険法が、労災様式の事業主証明を義務付けているからといって、該当性を争っている場合などまで、必ず労災様式に証明しなければならないとまでは言えないのだと受け止めておくこととなります。請求人からすれば、納得いかないかと思いますが、こうした裁判例がある以上は、義務だ義務だ、証明拒否は違法だとばかりでは片づけられない状況もあることを知っておくことも重要かと思います。

 

労災、とくに、精神障害の労災請求(申請)を試みようとしている方は、事業主の壁は大きいかと思います。でも、最終的には、労災は、事業主の証明がなくても提出は可能ですので、クリアできるかと思います。

 

医療機関の証明の問題は、また、別の機会に取扱いと思います。

 

参考になりましたら幸いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

災害の発生は2024年なのですが、再三の要請にもかかわらず、労働基準監督署に死傷病報告書を提出しなかったとして、法違反としたものです。

 

労働新聞のニュース記事から

新潟・上越労働基準監督署は、労働者が熱中症により4日間休業したにもかかわらず、労働者死傷病報告を遅滞なく提出しなかったとして、㈱信和測量設計社(新潟県上越市)と同社代表取締役を労働安全衛生法第100条(報告等)違反の疑いで新潟地検高田支部に書類送検した。労働者からの相談を端緒に違反が発覚している。

 災害は、令和6年7月に発生した。労働者が測量作業を行っていたところ、熱中症を発症している。

 

現在では、7月8月、へたをすると6月や9月でも、30度越えどころか、35越えが当たりまえになってきました。いつ熱中症が生じてもおかしくないと言えます。

 

企業は、従業員が熱中症に見舞われないように、就労環境、身体への暑さ対策などを事前に講じる必要があります。従業員は健康で労務提供するため、会社は、従業員に健康で支障なく労務提供してもらうためということが重要です。事前措置の有無、その内容が、安全配慮義務を果たしたと言えるのかに大きく影響します。

 

しかし、実際は、めったに熱中症など起きないと経験値で思考しているために、企業側は軽く考えてしまっている傾向にあります。当事務所が扱った例でも、部署異動になったものの、異動先の職場は、エアコンが効かず、靴下を脱いで仕事をするほどの暑さだったというものがあります。会社に申告したものの、とりあってもらえず、暑さをひたすら我慢して仕事をしていたそうです。

 

労働者が倒れてから、対応するのではなく、事の防止を考える必要があります。企業の売上・利益思考が、とかく、従業員の身体的安全防止の思考をそぎ落としてしまう傾向になるのかもしれません。

 

さて、今回書きたかったのは、ここからです。みなさんは、”労災隠し”という言葉をお聞きになったことがあるかと思います。

労災隠しとはなんでしょうか。いかなることを指すのでしょうか。労災であるのに、労災としないこと・・・これだけでしょうか。

 

多くの方は、労災=業務災害のことで、労災様式をやってくれない、労災手続きをしてくれないことと捉えているかもしれません。8号様式(休業補償)や5号様式(治療費)などをやってくれないと労災から給付を受けられないという不利益を被る。これが労災隠しだと受け止めているかもしれません。

 

労災隠しは、そうではありません。冒頭の記事にもありましたが、労働安全衛生法台100条の報告義務を果さないことが、労災隠しの意味です。抜粋しますと、

 

労働安全衛生法第100条では、都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、・・・必要があると認めるときは、・・・事業者に必要な事項を報告させることができる。労働基準監督官は・・・報告させることができる。

 

となっています。出頭を命ずることができるというのもありますが、報告の部分になります。

 

労災に関しては何を報告させるのか。それが、死傷病報告書です。つまり、労働基準監督署に死傷病報告書を提出して災害内容を報告しないことが、国から事業主への労災隠しということになります。

 

したがいまして、皆さんがよく相談の時に口にします、「会社が労災手続きをやらない=労災隠しだ」というのは少し異なります。休業補償や治療費の労災の請求をしないことを労災隠しと言っているわけではないのです。

 

ただ、給付を受ける従業員からすれば、各労災の給付の請求書を書いてくれない、拒否しているなどという事実をつきつけられれば、労災隠しだと言いたくはなるのも無理はありません。

 

給付の請求書に対する事業主の対応については、別な機会に記したいと思います。

 

参考になりましたら幸いです。

 

 

 

 

2025年10月20日の事件です。大阪府警が、税理士の男と行政書士の男を社会保険労務士法違反で逮捕したというものです。

 

社会保険労務士資格がないにもかかわらず、社会保険労務士の業務を報酬を得て行ったことによるものです。web上では両名の氏名も公表されてニュースになっていました。
 

記事の引用

「社会保険労務士の資格がないにもかかわらず、2025年6月~7月ごろに、労働保険などの社会保険労務士業務を無資格で行い、報酬として現金を受け取った疑いが持たれています。これまでに約340件の無資格業務を行っていたとみられています」

 

別な記事の引用です。

「2022年4月から2025年8月までの間に、社会保険労務士の資格がないにもかかわらず、約340件の社労士業務を請け負い、約400万円の報酬を得ていた疑いです。」

 

2024年10月に大阪府社会保険労務士会が府警に相談したことがきっかけで、発覚したようです。

 

社会保険労務士の資格がない者が、社会保険労務士の資格を有する者しか行えない、いわゆる社会保険労務士の独占業務を行うことは社会保険労務士法違反になります。もちろん、従業員の分の事務処理をその当該企業の者が行うことはかまいません。

 

しかし、とりわけ税理士の場合、企業側は、会社の数字全体を見てもらい、毎月、会計処理を税理士事務所にやってもらっていることで、すべて税理士に言えばいいと思っていることが多くあります。また、労務・労働にかんしては、しょっちゅう労働問題になるわけもないから、社会保険労務士に依頼するまでもないと考えているかもしれません。

 

しかし、企業側の意向や税理士のスキル・態度に関わらず、労務のことや労働保険・社会保険のことについて業務依頼されたとしても、独占業務の領域のことは、税理士も行うことはできません。書類作成が簡単で作成能力などがあっても作成してはいけないのです。

 

ここは、能力や気持ちの問題ではなく、社会保険労務士の独占業務であるという認識と垣根をこえてはならないという行動意識にかかわるものになります。

 

たとえば、労働保険(労災保険と雇用保険)の年度更新(申告書の作成)、36協定届の作成・届、裁量労働制の協定の作成・届、賃金台帳や出勤簿の作成、社会保険の算定基礎届の処理などは、社会保険労務士の資格を有する者以外は行うことができません。よって、給与計算と称して、賃金台帳を作成することはできません。

 

また、給与計算の過程で、法定時間外労働時間やその残業代を計算することも、税理士が行ってはならないものです。法定時間外労働時間及び残業代の計算方法、労働時間の帳簿作成は、労基法で決まっている業務になります。

 

また、1日8時間を超えた時間だけ計算すればいいというものではなく、週40時間を超えた時間、週が月をまたがる場合の算出、変形労働時間制の場合の残業時間の算出を行う必要があります。1時間あたりの単価の算出方法も法律で決まっています。それらは、すべて労働基準法にもとづいて行うことになります。労働時間の帳簿や記録を労働基準監督署や労働局に提出することも多くあります。労働・社会保険諸法令に基づく社会保険労務士の業務になります。

 

社会保険労務士法大27条(業務の制限) 

社会保険労務士又は社会保険労務士法人でない者は、他人の求めに応じ報酬を得て、第2条第1項第1号から第2号までに掲げる事務を業として行ってはならない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び政令で定める業務に付随して行う場合は、この限りではない。

 

※本条に違反すれば、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられるほか、両罰規定の適用があります。

 

㋐「他人の求めに応じ」

㋑「報酬を得て」

㋒「第2条第1項第1号から第2号までに掲げる事務」

㋓「他の法律に別段の定めがある場合及び政令で定める業務に付随して行う場合」

条文上のこれらの解釈を詳細にみる必要があります。

 

文面が膨大になりますので詳細な記載は控えますが、詳細は、社会保険労務士法の解釈や税理士法の解釈を確認してもらいたいと思います。小職が把握している限りでは、㋐は、企業から求められる場合が典型と考えられます。㋑は、顧問料や決算報酬を得ていれば該当すると考えられます、㋒は、膨大になるため記載しませんが、労基法などの労働法、社会保険の法律などに関する書類や帳簿などの作成などが対象となります、㋓は、税理士法第2項第1項に規定する「租税に関し、税務代理、税務書類の作成及び税務相談」を見る限り、㋒の社労士業務を税理士法に基づいて行ってよいとはなっておらず該当しないと考えられます。

 

数字を扱うものは、税理士でいいという風潮になっている企業の方もいるのかもしれませんが、そうではないということを企業も税理士も認識する必要があります。あらためて、気を引き締めなさいと言っているような事件ニュースではないかと思い、取り上げてみました。

 

参考になれば幸いです。

 

2025.11.17 特定社会保険労務士 亀岡 亜己雄

小職は、社会保険労務士として、2003年ごろから、あっせんによる紛争解決業務を行っている。当初は、あっせんにいる紛争解決業務において、当人に代わって主張等するので、「あっせん代理人」などと呼んでいた。実は、この方が今でもピンとくると思っている。今は調停もあるのでふさわしくはないとは言えるのも事実である。

 

その後に、特定社会保険労務士制度ができて、「あっせん代理人」は死語になり、代わって、「紛争解決手続代理人」となり、紛争解決業務も「紛争解決手続業務」と呼んでいる。小職の肩書も特定社会保険労務士となっているが、紛争解決業務ができる社会保険労務士という意味で、そうなっている。

 

特定社会保険労務士だからといって、特別に社会保険労務士の何かが上がるわけでもないから関係はないが、紛争解決業務ができるかできないかの区別にすぎない。紛争解決は、呼び名で解決を図るわけではないので、どのように呼ぼうが実際は関係しない。確認して書面を受け取る側も特定社会保険労務士の資格確認は行うが、呼び名はさほど意識にないと思われる。

 

あっせんの対象は、労働者対民間企業である。労働者は、在職していても退職していてもかまわない企業は民間でなければならない。ほとんどの業種が対象になる。いくら労働者でも、市や県、国を相手とする紛争や相手も労働者あるいは労働者であった個人を相手にする紛争は、あっせんでは取り扱えない。この場合には、訴訟によることになる。

 

あっせんの醍醐味は、証拠に拠らないことにある。一瞬、「そりゃだめでしょ」と思うかもしれないが、それは、なんでも証拠、証拠となりすぎているかもしれない。証拠によって解決をするわけではないやり方だからこそ、証拠を得にくい、セクハラやパワハラなどの証拠がない問題でもあっせんの土俵に乗せることが可能になる。

 

パワハラに関して

もっとも、労働局で紛争解決をする場合、大企業のパワハラ問題は、2021年6月1日以降、労働局の調停で、2022年4月1h意以降は、中小企業も、同調停で解決を図ることになる。幹となるのは、労働施策総合推進法30条の2事業主の措置義務である。

 

 第30条の2 事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

 

これがその条文であるが、すべてが理解できなくてもこのような法律があることを知っておいてほしい。下線部分が3つあるが、それがパワハラの定義づけに直結するものとなっている。条文自体は、事業主の措置義務を規定したものである。

 

措置義務は、パワハラが起きないように事前に防止対策をする義務と起きた後の事後対応の義務が柱となる。まだまだ労使ともに浸透してはいない。知識不足状態になる。

 

話を戻したいと思う。あっせんは、極論を言えば、証拠は必要ない。ただし、あっせん委員や担当者も何もなければ、いかなる行為があったは知る由もない。パワハラの行為記録、解雇の記録、退職勧奨の言動がわかる記録は、あったほうがいい

 

あっせんは、事実認定や法的判断もしない。もちろん、心証として、あるいは、あっせん員の頭のなかでは、違法な行為と思うものも少なからずあるし、違法かどうかはさておき、問題がある言動だと受け止められるものもあるはずである。

 

あっせんによる紛争解決がユニークなのは、労使(つまり、労働者と企業)双方の歩み寄りによって、解決を図ろうとするところになる。喧嘩両成敗に酷似していると言える。当事者同士では、言いたいことや伝えたいことをそれぞれが言いたがる。

 

それぞれの都合、立場を優先した主張になる。そこで第三者が入って、それも行政機関という公に委ねて解決の意図を探り、紛争を終了に導くのがあっせんになる。ちなみに、あっせんでも、他の解決種だでも、労使双方が満足する解決などありえないと知ることが重要である。この点が理解できないと、あっせんも裁判も何もできなくなる。

 

したがって、裁判の流儀を意識しなくてもよいし、証拠に縛られなくてよいし、損害賠償の金額も必ずしも裁判例に右習いしなくてもよい。この辺のところは、あっせんの別な機会の話で触れたいと思う。

 

今回は、あっせんの基本についてふれてみました。

 

参考になりましたら幸いです。

 

【特定社会保険労務士 亀岡 亜己雄】