災害の発生は2024年なのですが、再三の要請にもかかわらず、労働基準監督署に死傷病報告書を提出しなかったとして、法違反としたものです。
労働新聞のニュース記事から
新潟・上越労働基準監督署は、労働者が熱中症により4日間休業したにもかかわらず、労働者死傷病報告を遅滞なく提出しなかったとして、㈱信和測量設計社(新潟県上越市)と同社代表取締役を労働安全衛生法第100条(報告等)違反の疑いで新潟地検高田支部に書類送検した。労働者からの相談を端緒に違反が発覚している。
災害は、令和6年7月に発生した。労働者が測量作業を行っていたところ、熱中症を発症している。
現在では、7月8月、へたをすると6月や9月でも、30度越えどころか、35越えが当たりまえになってきました。いつ熱中症が生じてもおかしくないと言えます。
企業は、従業員が熱中症に見舞われないように、就労環境、身体への暑さ対策などを事前に講じる必要があります。従業員は健康で労務提供するため、会社は、従業員に健康で支障なく労務提供してもらうためということが重要です。事前措置の有無、その内容が、安全配慮義務を果たしたと言えるのかに大きく影響します。
しかし、実際は、めったに熱中症など起きないと経験値で思考しているために、企業側は軽く考えてしまっている傾向にあります。当事務所が扱った例でも、部署異動になったものの、異動先の職場は、エアコンが効かず、靴下を脱いで仕事をするほどの暑さだったというものがあります。会社に申告したものの、とりあってもらえず、暑さをひたすら我慢して仕事をしていたそうです。
労働者が倒れてから、対応するのではなく、事の防止を考える必要があります。企業の売上・利益思考が、とかく、従業員の身体的安全防止の思考をそぎ落としてしまう傾向になるのかもしれません。
さて、今回書きたかったのは、ここからです。みなさんは、”労災隠し”という言葉をお聞きになったことがあるかと思います。
労災隠しとはなんでしょうか。いかなることを指すのでしょうか。労災であるのに、労災としないこと・・・これだけでしょうか。
多くの方は、労災=業務災害のことで、労災様式をやってくれない、労災手続きをしてくれないことと捉えているかもしれません。8号様式(休業補償)や5号様式(治療費)などをやってくれないと労災から給付を受けられないという不利益を被る。これが労災隠しだと受け止めているかもしれません。
労災隠しは、そうではありません。冒頭の記事にもありましたが、労働安全衛生法台100条の報告義務を果さないことが、労災隠しの意味です。抜粋しますと、
労働安全衛生法第100条では、都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、・・・必要があると認めるときは、・・・事業者に必要な事項を報告させることができる。労働基準監督官は・・・報告させることができる。
となっています。出頭を命ずることができるというのもありますが、報告の部分になります。
労災に関しては何を報告させるのか。それが、死傷病報告書です。つまり、労働基準監督署に死傷病報告書を提出して災害内容を報告しないことが、国から事業主への労災隠しということになります。
したがいまして、皆さんがよく相談の時に口にします、「会社が労災手続きをやらない=労災隠しだ」というのは少し異なります。休業補償や治療費の労災の請求をしないことを労災隠しと言っているわけではないのです。
ただ、給付を受ける従業員からすれば、各労災の給付の請求書を書いてくれない、拒否しているなどという事実をつきつけられれば、労災隠しだと言いたくはなるのも無理はありません。
給付の請求書に対する事業主の対応については、別な機会に記したいと思います。
参考になりましたら幸いです。