2025年10月20日の事件です。大阪府警が、税理士の男と行政書士の男を社会保険労務士法違反で逮捕したというものです。
社会保険労務士資格がないにもかかわらず、社会保険労務士の業務を報酬を得て行ったことによるものです。web上では両名の氏名も公表されてニュースになっていました。
記事の引用
「社会保険労務士の資格がないにもかかわらず、2025年6月~7月ごろに、労働保険などの社会保険労務士業務を無資格で行い、報酬として現金を受け取った疑いが持たれています。これまでに約340件の無資格業務を行っていたとみられています」
別な記事の引用です。
「2022年4月から2025年8月までの間に、社会保険労務士の資格がないにもかかわらず、約340件の社労士業務を請け負い、約400万円の報酬を得ていた疑いです。」
2024年10月に大阪府社会保険労務士会が府警に相談したことがきっかけで、発覚したようです。
社会保険労務士の資格がない者が、社会保険労務士の資格を有する者しか行えない、いわゆる社会保険労務士の独占業務を行うことは社会保険労務士法違反になります。もちろん、従業員の分の事務処理をその当該企業の者が行うことはかまいません。
しかし、とりわけ税理士の場合、企業側は、会社の数字全体を見てもらい、毎月、会計処理を税理士事務所にやってもらっていることで、すべて税理士に言えばいいと思っていることが多くあります。また、労務・労働にかんしては、しょっちゅう労働問題になるわけもないから、社会保険労務士に依頼するまでもないと考えているかもしれません。
しかし、企業側の意向や税理士のスキル・態度に関わらず、労務のことや労働保険・社会保険のことについて業務依頼されたとしても、独占業務の領域のことは、税理士も行うことはできません。書類作成が簡単で作成能力などがあっても作成してはいけないのです。
ここは、能力や気持ちの問題ではなく、社会保険労務士の独占業務であるという認識と垣根をこえてはならないという行動意識にかかわるものになります。
たとえば、労働保険(労災保険と雇用保険)の年度更新(申告書の作成)、36協定届の作成・届、裁量労働制の協定の作成・届、賃金台帳や出勤簿の作成、社会保険の算定基礎届の処理などは、社会保険労務士の資格を有する者以外は行うことができません。よって、給与計算と称して、賃金台帳を作成することはできません。
また、給与計算の過程で、法定時間外労働時間やその残業代を計算することも、税理士が行ってはならないものです。法定時間外労働時間及び残業代の計算方法、労働時間の帳簿作成は、労基法で決まっている業務になります。
また、1日8時間を超えた時間だけ計算すればいいというものではなく、週40時間を超えた時間、週が月をまたがる場合の算出、変形労働時間制の場合の残業時間の算出を行う必要があります。1時間あたりの単価の算出方法も法律で決まっています。それらは、すべて労働基準法にもとづいて行うことになります。労働時間の帳簿や記録を労働基準監督署や労働局に提出することも多くあります。労働・社会保険諸法令に基づく社会保険労務士の業務になります。
社会保険労務士法大27条(業務の制限)
社会保険労務士又は社会保険労務士法人でない者は、他人の求めに応じ報酬を得て、第2条第1項第1号から第2号までに掲げる事務を業として行ってはならない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び政令で定める業務に付随して行う場合は、この限りではない。
※本条に違反すれば、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられるほか、両罰規定の適用があります。
㋐「他人の求めに応じ」
㋑「報酬を得て」
㋒「第2条第1項第1号から第2号までに掲げる事務」
㋓「他の法律に別段の定めがある場合及び政令で定める業務に付随して行う場合」
条文上のこれらの解釈を詳細にみる必要があります。
文面が膨大になりますので詳細な記載は控えますが、詳細は、社会保険労務士法の解釈や税理士法の解釈を確認してもらいたいと思います。小職が把握している限りでは、㋐は、企業から求められる場合が典型と考えられます。㋑は、顧問料や決算報酬を得ていれば該当すると考えられます、㋒は、膨大になるため記載しませんが、労基法などの労働法、社会保険の法律などに関する書類や帳簿などの作成などが対象となります、㋓は、税理士法第2項第1項に規定する「租税に関し、税務代理、税務書類の作成及び税務相談」を見る限り、㋒の社労士業務を税理士法に基づいて行ってよいとはなっておらず該当しないと考えられます。
数字を扱うものは、税理士でいいという風潮になっている企業の方もいるのかもしれませんが、そうではないということを企業も税理士も認識する必要があります。あらためて、気を引き締めなさいと言っているような事件ニュースではないかと思い、取り上げてみました。
参考になれば幸いです。
2025.11.17 特定社会保険労務士 亀岡 亜己雄