皇紀というのは、セム族の文化における独特の紀年法である。
維新政府は、当時のキリスト教を背景とする列強のそれを真似て、
この紀年法を採用した。
ちょうど、御簾の向こうにあった天皇に、
民衆の前で 西欧流の軍服を着せ、馬車や馬に乗ることを強いたのと、
これは、同じ ”無理やり感” がある。
そもそも、セム族の紀年法は、
イエスにせよ ムハンマドにせよ、
その世界宗教の開祖に因む。
これと比べて、神話的存在の神武天皇には、
ただ、その政治的事蹟のみを紀年の根拠としていて、
人間の 生きる意味や生き方に対する 親切な教えが欠落している。
明治維新は、
いろいろなことで、
爪先立つような 無理をしすぎたのである。
もっと この国に合った、
もっと 自然なありかたで、
万事 やっていきたいものだ。
合掌
皇紀:1872年(明5)、明治政府が定めた日本独自の紀年法
神武天皇が即位した年を、記紀(古事記と日本書紀)の記載から西暦紀元前660年
と決め、その年を皇紀元年とした。
1940年(昭15)は 皇紀2600年に当たるとして,
橿原神宮・神武天皇陵の整備や奉祝の行事が行われたが、日中戦争の戦時下であり、
国民の生活は苦しくなりかけていた。翌年12月8日に太平洋戦争(大東亜戦争)開戦。
紀元二千六百年式典ノ勅語
茲(ここ)ニ 紀元二千六百年ニ 膺(あた)リ 百僚 衆庶相会シ 之レカ慶祝ノ典ヲ挙ケ
以テ肇国ノ精神ヲ昂揚セントスルハ 朕深ク焉(こ)レヲ嘉尚ス
今ヤ 世局ノ激変ハ 実ニ 国運隆替(りゅうたい)ノ由(よ)リテ 以テ判カルル所ナリ
爾 臣民 其レ克ク嚮(さき)ニ 降タシシ宣諭ノ趣旨ヲ体シ 我カ惟神(きしん)ノ大道ヲ
中外ニ顕揚シ以テ人類ノ福祉ト万邦ノ協和トニ寄与スルアランコトヲ期セヨ
昭和15年11月10日、国を挙げて待望の紀元2600年式典の佳き日、一億国民、歓喜の
うちに輝く紀元を寿ぎまつる日は 来ました。悠久 誠に2600年。昭和の御代(みよ)に
生を受けた我ら一億が、あふれるばかりの感激もて 迎えた このよき年、よき日。
紀元2600年式典は かしこくも天皇・皇后両陛下の行幸啓を仰ぎ奉り、爽涼たる秋晴れの
もと、旭日(きょくじつ)、燦として輝き、瑞気(ずいき)大内山に満ちあふれる この日、
宮城外苑広場にしつらえられた式典場において、いとも荘重、厳粛に行われ、かしこくも
天皇陛下には、優渥(ゆうあく)なる勅語を賜いました。
この日、光栄の参列者 5万5000 は 威儀を正し、隊列を整えて 朝8時より式典場各受付口
より入場。次いで、昇殿を差し許された重臣顕官ならびに 外国使臣らは、それぞれ婦人同伴、
式殿に参入いたしました。かくて 午前10時半、5万5000の全参列者、すでに 所定の位置に
整列を終わり、大内山の緑に浮かぶ 式場は寂(せき)として声なく、ただ打ち震える感激の
うちに 天皇・皇后両陛下の臨御御待ち申し上げたのであります。
天皇・皇后両陛下には、御同乗の略式自動車鹵簿(ろぼ)にて 午前10時48分、宮城を御出門。
二重橋正門から式場に着御あそばされ、天皇陛下には、近衛総理大臣の御先導にて 式殿玉座に
着かせ賜い、皇后陛下にも 御座に着御あらせられました。
このとき 近衛総理大臣は 開会の旨 奏上のため、式殿 正面南階段をくだり、玉砂利を踏み
しめて 式殿正面中央階(きざはし)前に しずしずと参進いたしました。
《近衛総理大臣》 「 これより、紀元2600年祝典を開始いたします。」
<放送>「最敬礼」(一同、天皇・皇后両陛下に向かい、最敬礼)(君が代斉唱)
次いで 近衛総理大臣は、恭しく 陛下の御前に参進。一億の民草を代表して、紀元2600年
の寿詞(よごと)を奏上申し上げました。
《近衛総理大臣》 「 臣文麿、謹みて申す。伏して 惟(おもん)みるに、皇祖国を肇(はじ)め
統を垂れ、皇孫をして 八洲に君臨せしめ、たもうに 神勅をもってし、授くるに神器を
もってしたもう。宝祚の隆(さかえ)、天壌と窮(きわま)りなく、もって 神武天皇の聖世
に及ぶ。すなわち 天業を恢弘(かいこう)して 皇都を橿原に定め、宸極(しんきょく)に
光登して、徳化を 六合(りくごう)に敷き賜ひ。歴朝 相承(う)けて、ますます天基を
鞏(かた)くし、洪猷(こうゆう)を 壮(さかん)にし、一系連綿、正に 紀元2600年を迎ふ、
国體の尊厳(そんごん)、万邦 固(もと)より比類なし。皇謨(こうぼ)の宏遠、四海 豈に
匹儔(ひっちゅう)あらんや。」
(紀元2600年頌歌斉唱) 遠すめろぎのかしこくも はじめ賜いし おお大和 天つ日嗣(ひつぎ)
の つぎつぎに 御代 しろしめす とうとさよ 仰げば遠し 皇国の 紀元は 二千六百年
かくて11時25分、天にも届け と天皇陛下の万歳を奉唱しました。
「 天皇陛下、万歳 」「 万歳 」「 万歳 」(一同、最敬礼)
「 これにて式典を終了いたします。」