材料科学: グラフェンナノリボンを用いたトポロジー制御 | Just One of Those Things

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Let's call the whole thing off

前回に引き続き、33号目のネイチャーのハイライトより。

 

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材料科学: グラフェンナノリボンを用いたトポロジー制御  
Nature 560, 7717
2018年8月9日    

トポロジカル絶縁体は、特定の対称性によって保護されるという特異な性質を示す状態が生じる物質種の例であり、こうした状態によって著しくロバストになっている。こうした状態には、スピン–運動量ロッキングなどの特定の性質があり、量子技術に利用できるエキゾチックな準粒子が生じる可能性がある。そうした状態を示す多くの物質が発見されたが、物質のトポロジーを直接制御することは困難である。今回、O GröeningたちとM Crommieたちの2つのグループによって、グラフェンナノリボンが、トポロジカルに非自明な物質を原子精度で設計し合成するための柔軟なプラットフォームとなることが示された。

Letter p.204
Letter p.209
News & Views p.175
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グラフェンナノリボン | Nature Nanotechnology |2017年4月6日

上記はネイチャーの姉妹誌です。念のため最後に転載します。

グラフェンナノリボンの新しい作製手法、電子デバイスへの応用拡大 - ORNL

以下は、トポロジーの参考文献です。

位相幾何学 - Wikipedia

トポロジー(とぽろじー)とは - コトバンク

ネットワークトポロジー(トポロジー)とは - IT用語辞典

ネットワーク・トポロジー - Wikipedia

以下からはトポロジー制御です。

電源トポロジー - EDN Japan

NTTら,光トポロジカル絶縁体の生成・制御法を提案(2018年11月26日)

超伝導研究の最先端 - 京都大学 物性理論 凝縮系理論

トポロジカル絶縁体中のスピン電流の光制御実証に成功!(2018年10月19日)

さて、本文に入ります。

トポロジカル絶縁体 - Wikipedia

(おまけ:東大、「トポロジカル絶縁体」と「普通の絶縁体」の中間の新しい絶縁体を発見(2018/9/12 15:05)日本経済新聞

トポロジカル絶縁体 - 理学のキーワード - 東京大学 大学院 理学研究科・理学部

「トポロジカル絶縁体」って、何がトポロジーなの?(PDF)

注目の新材料「トポロジカル絶縁体・超伝導体」(PDF)

「トポロジカル絶縁体」の発見 | Nature ダイジェスト |原文:Nature (2012-12-13)

※注:そのうち消えるかもしれません。

トポロジカル絶縁体入門 - 大阪大学 産業科学研究所(PDF)

ロバストとは - コトバンク

トポロジカル絶縁体表面で高効率スピン流を生成 | 理化学研究所

(a) トポロジカル絶縁体表面におけるスピン運動量ロッキングを表した図です。

カイラル量子光学:光コンピュータと量子コンピュータの未来(スピン–運動量ロッキング)

放射線ホライゾン - スピン軌道トルクデバイス(スピン–運動量ロッキング)

トポロジカル絶縁体表面で高効率スピン流を生成(PDF)(スピン–運動量ロッキング)

トポロジカル絶縁体で世界最高性能の純スピン注入源を開発 | 東工大(スピン–運動量ロッキング)

 

材料科学より、グラフェンの設計されたトポロジカル状態ができるようになりました。
 
グラフェンナノリボンと呼ばれる物質では、トポロジカル状態を精密に設計し調べることができるため、電子トポロジーを研究する実験プラットフォームが得られます。
 
2つの論文は、ネイチャーのニュースにも取り上げられました。
 
上記のハイライトで理解できれば十分かと思いますので、下記は参考文献をつけません。
 
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材料科学:グラフェンナノリボンのトポロジカルバンドエンジニアリング
Nature 560, 7717 |  Published: 2018年8月9日 |

トポロジカル絶縁体は、バルクを絶縁性に維持しながら、非常にロバストなギャップ内表面状態やギャップ内界面状態を生じる新たな物質群である。この分野の進歩は、大半が二次元や三次元のトポロジカル絶縁体や関連するトポロジカル結晶絶縁体に重点を置いたものであったが、つい最近の理論研究では、対称性によって保護された一次元トポロジカル相がグラフェンナノリボン(GNR)に存在することが予測された。こうした横方向に制限された帯状半導体グラフェンのトポロジカル相は、幅、エッジ形状、終端結晶単位胞によって決まり、Z2不変量(準一次元ソリトン系と同様に、2つのトポロジカルクラスを示す0か1の指数)によって特徴付けられる。異なるℤ2値を特徴とするトポロジー的に異なる2つのGNRの境界は、半充填ギャップ内局在電子状態を担うと予測されており、原理的には、この状態を物質工学のツールとして用いることができる。今回我々は、そうした状態を一次元的に並べて配置することで、トポロジー工学的GNR超格子を合理的に設計して実験的に実現し、通常なら実現不可能な電子状態を生じさせたことを報告する。また、この手法では、一次元GNR超格子の末端に新しい終端状態を直接作ることも可能になる。我々は、原子精度のトポロジカルGNR超格子を、超高真空条件下で金(111)表面に分子前駆体から合成し、低温走査型トンネル顕微鏡法と分光法によって特性評価した。今回の実験結果と第一原理計算から、こうしたGNR超格子のフロンティアバンド構造(充填状態と空状態を挟み込むバンド)が、隣り合うトポロジカル境界状態間の結合のみによって定まることが明らかになった。この非自明な一次元トポロジカル相の現れは、電子トポロジーの精密制御に基づく一次元物質のバンドエンジニアリングへの道筋を提示するものであり、一次元量子スピン物理学の研究の有望なプラットフォームとなる。
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やっていることが凄いんですが・・・。
 
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材料科学:グラフェンナノリボンにおけるロバストなトポロジカル量子相のエンジニアリング
Nature 560, 7717 |  Published: 2018年8月9日 |

はっきりと異なるトポロジカル物質相の間の境界は、スピン–運動量ロッキングされた輸送チャネルやマヨラナフェルミオンなどの、ロバストだがエキゾチックな量子状態を担持する。そうした状態をスピントロニクスデバイスに用いたり量子情報技術のキュービットとして用いたりするという考えが、物性物理学における現在の研究の強力な推進力となっている。量子状態のトポロジカル特性は、ドープしたトランス型ポリアセチレンの伝導性を、分散のないソリトン状態の観点から説明するのに役立っている。スー、シュリーファー、ヒーガー(SSH)は、彼らの先駆的な論文において、こうしたエキゾチック量子状態を一次元強結合模型を用いて記述した。SSH模型は、一次元におけるカイラルトポロジカル絶縁体、電荷の分数化、スピン–電荷分離を記述するので、低温原子、フォトニクス、音響学的実験構成においてSSHハミルトニアンを実現すべく数多くの取り組みが行われてきた。しかし、付随する量子状態を利用するには、トポロジカル電子相を合理的に設計して、安定で加工可能な材料を作ることが望ましい。今回我々は、SSHハミルトニアンによって記述される価電子構造を示すロバストなナノ材料を設計するための、原子精度のグラフェンナノリボンに基づく柔軟な手法を報告する。我々は、アームチェアエッジ型グラフェンナノリボン同士の接合においてトポロジカル境界状態の周期的結合を制御して、自明および非自明な準一次元電子量子状態を作り出したことを実証する。この手法によって、トポロジカル電子バンドを、近接誘起されたスピン–軌道結合や超伝導のエネルギースケールに近いバンド幅に調節できる可能性があり、キタエフ的なハミルトニアンやマヨラナ型終端状態が実現される可能性がある。
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マヨラナフェルミオンについてのものは下記を参照のこと。

このように、繋がっていきます。

 

ポリアセチレン - Wikipedia(ドープしたトランス型ポリアセチレン)

Title ポリアセチレンの極低温下高導電性に関するドーパント の効果(PDF)(ドープしたトランス型ポリアセチレン)

九州大学大学院数理学研究院梶原健司(PDF)(分散のないソリトン状態を知るに)

ソリトン | ファイバーレーザーの基礎|オプティペディア(分散のないソリトン状態を知るに)

光ソリトン効果 – 生成原理 | パルス圧縮・整形|オプティペディア(分散のないソリトン状態を知るに)

 

わかりやすい説明で、しかもやっていることが凄いという・・・。

 

以下は先に参考文献で取り上げたネイチャーの姉妹誌の論文を転載します。

 

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溝の中に作る:グラフェンナノリボン
Nature Nanotechnology 2017, 417 |  Published: 2017年4月6日 |

グラフェンは、電気的性質や熱的性質が非常に優れているにもかかわらず、伝導帯と価電子帯の間にバンドギャップがないため、将来のデジタルデバイス用のトランジスターには適していない。バンドギャップがないために、電子流のオン状態とオフ状態を切り替えることができないのである。グラフェンを小さくすると、幅が10 nm未満のグラフェンナノリボンは、電子バンドギャップ示すため、デジタルデバイス用の有力な候補材料になる。しかし、グラフェンナノリボンの寸法、ひいては電子特性の精密な制御は困難な目標であり、しかもグラフェンナノリボンの端は一般的にギザギザで性能に悪影響をもたらす。
 
今回、Chenたちは、幅を制御して端が滑らかなグラフェンナノリボンを、誘電体の六方晶窒化ボロン(h-BN)基板の上に成長させる方法について報告している。彼らは、ニッケルナノ粒子を用いてh-BNをエッチングして、深さが単層で幅がナノメートルの溝を作った後、化学蒸着によってその溝をグラフェンで埋めた。エッチングパラメーターを変えることによって、溝の幅を10 nm未満に調整でき、得られた10 nm未満の幅のナノリボンは約0.5 eVというバンドギャップを示した。こうしたナノリボンを電界効果トランジスターデバイスに組み込むと、約750 cm2V-1s-1という高いキャリア移動度に加えて、104を超えるオンオフ比を室温で示した。ナノリボンの長さを制御し特定の場所に配置できるようにすることは、今後の研究の重点であるが、今回の方法によって、極めて細いグラフェンナノリボンに基づくデジタル集積回路の実現に近づくプラットフォームが得られる可能性がある。
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進展速度が速いですね・・・。

 

溜まりに溜まった恒例のネイチャー。次回は、地球化学より、 キセノン同位体によって明らかになったマントルへの揮発性物質循環の歴史  、を取り上げます。

 

※多忙につき、相変わらずブログでの対応が遅れていますことを、心からお詫び申し上げます。我が家のライオンさんなどの話もしたいのですが、先にまわりながら、リブログ物を取り上げていくことになります。

 

 

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