物性物理学: マヨラナフェルミオンによるホール効果の量子化 | Just One of Those Things

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昨日に引き続き、29号目のネイチャーのハイライトより。
 

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物性物理学: マヨラナフェルミオンによるホール効果の量子化
Nature 559, 7713
2018年7月12日 

1985年に、クラウス・フォン・クリッツィングは、量子ホール効果を発見した功績でノーベル賞を受賞した。量子ホール効果では、電気ホールコンダクタンスが量子化されて整数値をとり、トポロジカル物質相の存在を示す。同様に、熱コンダクタンスも量子化された値をとる可能性がある。今回、松田祐司(京都大学)たちは、キタエフスピン液体と呼ばれる物質において、熱ホール効果が半整数値に量子化されるという通常とは異なる特徴を持つことを示している。この半整数熱ホール効果は、マヨラナフェルミオン(粒子と反粒子が同一であるエキゾチック準粒子)のカイラル流が強電子相関に起因してこの物質のエッジを周回していることを示す証拠である。

Letter p.227
News & Views p.189
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量子ホール効果 - 京都大学低温物質科学研究センター

グラフェンの異常量子ホール効果 - グラフェンWiki

2016年ノーベル物理学賞は抽象的な「トポロジー理論」が織りなす不思議な物理現象【ノーベル賞Week⑥】

熱コンダクタンスの計算 - 環境の大学

熱伝導率 - Wikipedia(熱コンダクタンス)

東大,キタエフスピン液体の可能性を裏付け | Optronics

東大、キタエフスピン液体を実現する金属有機構造体の理論を設計

物性物理学: 分数熱ホールコンダクタンスを観測

トポロジカル絶縁体の理論に関するノート(PDF) (カイラル)

(これ、面白いです)

東大と理研、スピンゆらぎによる整流効果を発見 :日本経済新聞(カイラル)

 

物性物理学より、熱にも関わっていたマヨラナフェルミオンでした。


マヨラナフェルミオンと呼ばれるエキゾチック粒子には、量子コンピューティングに応用できる可能性があるが、その存在はまだ明確には確認されていません。今回、2つのグループが、こうした粒子の存在を示す証拠を見いだしました。
 

この論文は、ネイチャーのニュースにも取り上げられました。

 

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物性物理学:キタエフスピン液体におけるマヨラナ量子化と半整数量子熱ホール効果
Nature 559, 7713 |  Published: 2018年7月12日 | 

二次元電子ガスにおける量子ホール効果では、試料の端(エッジ)に沿ってトポロジカルに保護された無散逸電子流が生じる。整数の電気コンダクタンスは電子のエッジ流と関係しており、分数の電気コンダクタンスは分数の電荷を持つ準粒子のエッジ流と関係している。量子スピンの分割化という根本的に異なる起源のエッジ流によって、量子ホール現象が生じる可能性もあると予測されている。しかし、そのような量子化はいまだに観測されていない。今回我々は、二次元ハニカム格子上でキタエフ相互作用(結合に依存するイジング型相互作用)が支配的な絶縁性二次元量子磁性体α-RuCl3において、このタイプのホール効果の量子化を観測したことを報告する。我々は、試料に平行な磁場の印加によって長距離磁気秩序が壊され、その結果、局所スピンが強くエンタングルした磁場誘起量子スピン液体基底状態が現れることを見いだした。この状態の低温領域では、二次元熱ホールコンダクタンスが印加磁場の関数として量子プラトーに達し、その量子化値が整数量子ホール効果の二次元熱ホールコンダクタンスのちょうど半分になる。このバルク物質における熱ホールコンダクタンスの半整数量子化は、従来のフェルミオンの半分の自由度を持つ、電荷が中性のマヨラナフェルミオン(粒子と反粒子が同一)のトポロジカルに保護されたカイラルエッジ流の特徴である。これらの結果は、キタエフ量子スピン液体において起こると予測されているスピンの分割化による遍歴マヨラナフェルミオンとZ2フラックスの出現の証拠を与えるものである。臨界磁場を超えると、量子化は消失し、熱ホールコンダクタンスは急速にゼロになる。これは、カイラルマヨラナエッジモードを持つ状態と持たない状態の間でトポロジカル量子相転移が起こることを示している。量子磁性体における創発マヨラナフェルミオンは、強相関量子物質に大きな影響を及ぼすと予想され、比較的高い温度でのトポロジカル量子コンピューティングの可能性を開くものである。
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幻の粒子「マヨラナ粒子」の発見~トポロジカル量子コンピューターの実現に期待

幻の粒子を発見、トポロジカル量子コンピュータ応用へ

幻の粒子「マヨラナ粒子」の発見 ―トポロジカル量子コンピューターの実現に期待―

(上記でわかりやすいかと・・・)

 

どうやら「物性物理学: 分数熱ホールコンダクタンスを観測」と本論文で証拠となるようです。

 

さて。溜まりに溜まった恒例のネイチャー、次回は、材料科学より、透過と遮断を切り替えられる酸化グラフェン膜を通る水輸送、を取り上げます。

 

 

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