次に、如来の姿についてみてみましょう。
如来が具体的に造形作品の中で表現されるようになった初期の頃は、如来を人間の形で表すのはおそれおおいと考えられ、塔(ストゥーパ)や宝座(如来の坐った台座)、宝輪(仏法の象徴)などで釈迦の存在を象徴的に暗示するのみでした。
しかし、紀元前一世紀頃に、如来を人間の姿を借りて表現することが始まりました。
如来の姿の基本となったのは、出家した釈迦の姿でした。
したがって、着衣は下着のほかは簡単な衣(大衣という)を一枚まとうだけで、装身具などをまったくつけない簡素な姿をとっています。
しかし、如来が通常の人間を超越した存在であることを示すために、いくつかの身体的な特徴が付与されました。
三十二相や八十種好とよばれるのがそれにあたります。
これらの特徴は、如来が超人間的な存在であることを示すための形式として、インドから西域・中国・朝鮮半島、さらに日本でも造像の際の約束事として守られたのであります。