実写映画「ゴールデンカムイ」 | Kura-Kura Pagong

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"kura-kura"はインドネシア語で亀のことを言います。
"pagong"はタガログ語(フィルピンの公用語)で、やはり亀のことを言います。

 野田サトルの漫画を実写映画化した映画『ゴールデンカムイ』を観た。

和人に抵抗するためアイヌ達が集めた莫大な量の砂金をめぐり争奪戦が繰り広げられる、というのが原作漫画の内容。今回公開された映画は杉元、白石、アシリパ、土方歳三、鶴見中尉、といった争奪戦の主要メンバーが出揃うまでの序盤部分。映画のラストには本編では登場しなかったが金カムファンなら知っているキャラクターの顔が出てきて、この映画がシリーズ物の第一編であることを明示している。

 

 映画を観る前、この映画でのヒロイン・アシリパの扱いが気になっていた。アシリパはアイヌの少女だがすでに猟師として自立している。アシリパの父は砂金集めに関与していた人物で、彼が砂金集めの仲間を皆殺しにして砂金を秘匿した、という噂がある。アシリパが砂金を探す目的は父の行為の真偽を確かめることだ。彼女は日露戦争の二百三高地の戦闘から生還した元兵士・杉本佐一と組んで砂金探しをする。アシリパの年齢設定は12,3歳。彼女は杉元に行方不明の父を重ね合わせており、彼女は杉元に男性も感じているのだが、二人が恋に走ることはない。 

 方や実写版でアシリパを演じるのは山田杏奈。実年齢20代の女優が演じるアシリパは原作と異なり杉元と熱い恋をするのか、と思ったがそういうことはなかった。

 

 映画にはアシリパの他にもアイヌが登場するが、本物のアイヌの出演者はアシリパの大叔父役の秋辺デボ一人だけ。しかも彼の登場場面はアシリパの生い立ちを杉元に日本語で説明する、というものだけだった。秋辺は映画『アイヌモシリ』や演劇『アイヌ オセロ』などで実績のある表現者だけにこの起用は残念だった。

 

 

  アイヌ語に詳しい知人がこの映画の感想をフェイスブックに投稿していたのだが、そこには

「アイヌ語のセリフは、役者さんたち頑張っていたとはいえ、残念ながら日本語の発音でしかない。

それはしょうがないんだけど、やはり残念。」

とあった。

 

 さて、下に貼り付けたのは『東京新聞』夕刊に掲載された解説記事。この記事は

「シリーズ化によってアイヌと和の文化がどんな化学変化を起こすのかも楽しみだ。」

と締めくくられているが、私はそう楽観的になれない。確かに漫画『ゴールデンカムイ』をきっかけにアイヌ文化に関心を持つ人は増えた。東京・新大久保のアイヌ料理店・ハルコロも金曜、土曜の夜は満席だ。

 しかし、北海道ではいまだに「アイヌに関わるな」と子供に教える親もいるし、アイヌ差別を煽る国会議員もいる。私たちマジョリティが克服すべき問題は大きい。

 テレビで韓流ドラマやK-POPが流されても、日本人が韓国人を見下す風潮がそう簡単には克服されないのと一緒だ。