「明かりを灯す人」(THE LIGHT THIEF)
英題はTHE LIGHT THIEF 。
本作で実際に“盗む”のは、電気代も払えない貧しい家庭に
電線からタダで引き込む電気であり、この物語は警察の目を
盗んでこの作業を引き受けている電線工とその家族の話であり、
繁栄から取り残されたキルギスの田舎町で暮らす人々の話である。
LIGHT=光は暗い闇を照らす存在で、明るい社会を暗喩し、
キルギス人のアクタン・アリム・クバトが主演・監督として制作した
「明かりを灯す人」は、貧しいなりに皆が平和に暮らしている
自然豊かな故郷を奪おうとする心無い外部からの侵入者を
静かに糾弾しているように思う。
本作の舞台となっているキルギス共和国(キルギス)は
ほとんど馴染みがない国なので調べてみると、
東南は4,000メートル級の峰も珍しくない天山山脈が
新疆ウイグル自治区との国境を形成し、
南にはパミール高原が広がる、
国土の多くが標高3,000メートルを超える高地に
位置する国であることが判った。
制作された国の文化が色濃く反映されている映画、
本作は、それ自体が、旧ソビエト連邦の共和国で
1991年に独立を果たしたキルギスという国、
そしてその大地とそこで暮らす人々をを理解する
一助となっている。
「裏切りのサーカス」(Tinker, Tailor, Soldier, Spy)
本作「裏切りのサーカス」のサーカスとは、
Military Intelligence section 6=MI6で知られている
英国秘密情報部を指している。
冷戦下の東西スパイ合戦を主題にしたミステリーの第一人者
ジョン・ル・カレが1974年に著した「Tinker, Tailor, Soldier, Spy」を
原作として、スウェーデン人トーマス・アルフレッドソンン監督が
イギリス・フランス合作作品として制作した「裏切りのサーカス」は、
「ミレニアム」シリーズ等で注目されているスウェーデンミストリーの
ダークな雰囲気、そしてロンドン市街・建築物の重い雰囲気を
暗い冷戦時代の背景として融和させ、組織に潜り込んだ“もぐら”
(二重スパイ)の正体を暴く過程を追った作品.
誰が敵で誰が味方か予想できない世界で暗躍する
英国諜報員、ソ連諜報員達。
全ての諜報員にとって、極秘任務が不成功に
終わった場合、過酷な拷問そして死が待ち受けている。
本作でサーカスに潜入している二重スパイと疑われているのは
Tinker(鋳掛屋と呼ばれる地方を回って金物を修理する板金職人)、
Tailor(仕立て屋)、Soldier(兵士)そしてPoo rman(貧乏人)のニックネームを
イスタンブール、東欧とスパイものに定番な土地でのロケを含め、
1970年代の街、服装が再現され、国家のために使い捨てにされた
人々の生き様が問われる。
ロンドンの象徴である赤と緑をすべてのシーンに取り入れるように
アドバイスした英国人デザイナー ポール・スミスのカラーコーディネートも
楽しめる一作。


