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「ある秘密」



2010年の統計で、全世界で約1,350万人とされるユダヤ人の

居住国はイスラエル570万人、米国527万人と、この2国に

81%程度が集中しており、その次に多いのがフランスの48万人。






戦前は東欧や中欧がユダヤ人人口の中心地であったが、

現在の欧州ではフランスが最も多くユダヤ人の住む国であり、

政治、映画、出版、医学の分野でユダヤ人の影響力が強い。






ヴィシー政権下の1940年にユダヤ人を差別的に扱う目的で

定められたユダヤ人法によりフランス国内の強制収容所から

最終的にアウシュビッツに送られ虐殺された家族の姿を描いた

著作は多く、ホロコーストから約70年を経た現在、これら原著の

一つを基にした「サラの鍵」、実体験を基に脚本が描かれた

「黄色い星の少年」、そして本作「ある秘密」と

フランスではユダヤ民族の歴史を風化させない映画が

意図的に制作され続けているように思う。






フランソワ・トリュフォー監督の制作主任を務めていた

クロード・ミレール監督が、フランソワ・トリュフォー監督の

「柔らかい肌」で採用した、敢えて感情移入が出来ない

自己中心的で間抜けな男を主人公とする作風を継承して

制作した「ある秘密」はヴィシー政権下でのユダヤ民族の悲劇を

下敷きに、身勝手な男が如何に自分の家庭を破壊していったかを

フランス映画の伝統的作風で描いている。








「少年と自転車」で孤独な少年の心の支えとなる美容師を演じた

セシルドゥフランスの際立った健康美、それと対比した形で

リュディヴィーヌ・サニエが演じるユダヤ人妻の薄幸さが浮き彫りに

される。






「八人の女たち」から11年、最近のリュディヴィーヌ・サニエ出演作からは

あの作品でのはつらつとした輝かしい表情があまり見られないが、

その存在感は健在であり、

「リリー」そして本作とリュディヴィーヌ・サニエと共演し、

「リリー」に続いて本作でもセザール賞助演女優賞を受賞した

ジュリー・ドパルデューそして、長じて両親の秘密を知るフランソワを

演じたマチュー・アマルリックと名優揃いの本作は、

見るたびに新しい発見がある味わい のある作品として仕上げられている。




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「リンカーン弁護士」


瀟洒な弁護士事務所を構えることなく、

大型車リンカーン・コンチネンタルの後部座席を事務所とし、

繰り返し逮捕される犯罪者を主な固定客として、

一件ごとの弁護料が安い訴訟を数多くこなすことで

何とか生計を立てている弁護士ミック・ハラー。





敬愛するマイケル・コナリーの原作をブラッド・ファ-マン監督が

映画化した本作は、マイケル・コナリー独特の反骨精神を

消すことなく、原作に盛り込まれた弁護士と検察官の確執は

出来るだけ簡素化し、ミックとその弁護依頼人の対決に焦点を絞り、

冗漫さを避けている。





東海岸のボストンのように欧州文化の伝統が色濃く反映され、

緑豊かで、道を人が歩き、隣人との関わり合いも多い地域と異なり、

新興の土地ロスアンゼルスでは、車社会故に、

狭い空間にとじ込められて一人で過ごす時間が多く、

美しい自然とは裏腹の“砂漠”のような寂寥感も漂う

地域であり、マイケル・コナリーの作品群は

この街を舞台に成り立っている。





検察官の妻とは離婚し、別々に暮らしている8歳の娘と

1回一緒に過ごすことを楽しみにしているハラーに、

ある日突然、傷害容疑で逮捕された大富豪の息子ルイスから

弁護の依頼が舞い込む。





有罪無罪ではなく無実であること。

あるいは純粋な悪。





限られた時間での映像、

無限の想像力が担保される小説。





それにしても映画「アーティスト」の卓越性を再認識させられる




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ドラマ「あぽやん」



「八月のマルクス」で第45回江戸川乱歩賞を受賞し、

プロの作家として文壇にデビューした新野剛志が新境地を開拓し、

2008年の直木賞候補となった「あぽやん」とその続編を原作とする

ドラマ「あぽやん」が、先月からTBS系列で放映されている。



あぽやん=AIRPORTで旅行客の航空券、パスポートを

チャックし、無事に旅客を海外に送り出すことを専門とする

エキスパート軍団。


「八月のマルクス」と同様、自分の思惑とは関係なく、エリートコースから

外された社会人が、一度は落ち込むが、置かれた状況下で心機一転し、

自己の能力を最大限に発揮しようと自己を替えていく様を描いた

「あぽやん」。

いくつかの物語が集まっている新野剛志「あぽやん」、

このストーリー展開は受け継いで、敢えて深刻な話は避け、

一日の仕事で心身ともにすり減らした社会人が、

家に戻り、テレビを見たときに、リラックスができるように

脚色されているTBSドラマの「あぽやん」。


主人公の遠藤慶太を陰に日向に見守るスーパーバイザーで

あぽやんの鏡とも言える今泉を演じる柳葉敏郎の演技は出色で、

新野の今泉に込めた心を体現している。


先輩契約社員の森尾、馬場を演じる桐谷美鈴、貫地谷しほりに囲まれ、

遠藤慶太演じる伊藤淳史がどのように人間として成長し、

強靭な心と思いやりの心を兼ね備えたあぽやんとして成長する過程を

見せていくのか、これからが楽しみである。