ゴーン・ガール
最後の最後まで物語の結末が予想できないミステリーは
少なくないが、
文庫本で上下約800ページとなる女性作家ギリアン・フリンの作品
「ゴーン・ガール」も予断を許さない展開で、
最後のページまで読者を楽しませてくれる。
主人公はニューヨークでライターとして活動していたが、
インターネットの隆盛により職を失ったミズーリー州の
静かな田舎町出身のニック・ダン。
そしてニックに一目ぼれして結婚したニューヨークの裕福な家庭育ちで
同じくライターの仕事をしていたエイミー・エリオット・ダン。
失職、そしてガンで余命いくばくもない母親の看病の名目の下、
ニューヨークから離れることを嫌がっていたエイミーを無理やり
ミズーリー州の故郷へ連れて行ったニック。
この町で双子の妹マーゴと共にバーの経営を始めたニックに
ある日、自分の家の玄関が開きっぱなしになっているとの連絡が入り
戻ってみると居間は荒らされ、エイミーの姿が消えていたところから
本作は始まる。
ニックの視点、そして日記として書かれているエイミーの視点、
知り合った当時の相手を思いやる気持ちが徐々に薄れ、
相手の欠点ばかり目に付くようになっていく日々。
女性作家ならではの夫婦の心理描写は説得力があり、
失踪事件は思わぬ展開となり、
事件の真相が明らかにされてからも
物語はさらに新しい局面に突入し、
読者を困惑させる。
従来のミステリーとは一味違った本作は
監督を「ドラゴン・タトゥーの女」のデヴィッド・フィンチャー、
ベンにベン・アフレックをそしてロザムンド・パイクをエイミーに配して
2014年に映画化されている。
そのヒップさから
恐らく好き嫌いが分れる本作、
この怪作がどのように映画化されているか
興味深い。

アイス・ストーム
アン・リー監督の1997年の作品「アイス・ストーム」は
前作の「いつか晴れた日」が英国、前々作の「恋人たちの食卓」が監督の故郷
台湾を舞台として、その土地その時代の文化を色濃く反映していたのと同様に
1993年の「ウエディング・バンケット」以来久しぶりに米国を舞台にした本作でも
当時の米国文化の一面(病理)が鋭く切り取られている。
1994年に出版された小説を原作とする本作、
マンハッタンから北へ鉄道でそれほど遠くない
コネティカット州の小さな街に住む富裕層の一家と
その隣(隣といっても2軒の間には広大な林が横たわる)の
家族の物語。
作品ごとに題材が異なるアン・リー監督の作品であるが、
「ブロークバック・マウンテン」をその代表として、
人間の根源的欲求のひとつである
性的欲求に対する個人的“秘密”との葛藤を作品の底流とし、
まさしく“人間的”な本テーマに対する共通した深い洞察力が、
アン・リー監督の作品を深く味わい深いものとしている。
軽い気持ちで犯した罪の代償はあまりにも大きく、
その溝が埋まることはないか。
ものみな凍る厳寒のコネティカット。木々の枝、家々の軒先、そして列車や車の
シャーシから垂れ下がるツララの冷たく無機質的輝きが、
本作の心象風景となっている。


