「ねじれた文字、ねじれた路」(CROOKED LETTER、CROOKED LETTER)
1963年にアラバマ州南西部の白人と黒人が半々程度の
小さな村で生まれたトム・フランクリンの2010年の著作
「CROOKED LETTER、CROOKED LETTER」は
筆者自身が生まれ育った南部の文化、
筆者自身の少年時代の思い出を基盤とした
嫉妬、いじめ、劣等感など人間が人間たる心の影を
文字の背後に隠した罪の赦しの物語である。
本作の主人公は自動車修理工として細々と生計を
たてている白人のラリーと、治安官として地域住民の生活を
守っている黒人のサイラス。
少年期にシカゴから母と二人で南部の町に移ってきたサイラスは
掘立小屋のような家に住み暮らしこそ貧しいが、スポーツ万能の子供として
逞しく成長し、片やラリーは比較的裕福な家庭の長男として
恵まれた生活を送っているが、スポーツは好まず人との接し方も下手で、
スティーヴン・キングの小説に熱中する少年時代を過ごしてきた。
少年期のサイラスとラリーの出会いは二人の関係を暗示し、
ある事件がきっかけで大きく変わってしまうラリーの人生に
サイラスがどのように関与していたかを読者は徐々に知るようになる。
卓越した文章で南部の景色、自然を活写する一方、
人の心の動きは感情を抑制した丁寧な筆で書き進める本作に
トム・フランクリンの作家としての力量を感じた。
ウエイバック―脱出6,500km (The Way Back)
1980年代に「刑事ジョン・ブック目撃者」、「モスキート・コースト」で
北米、南米の太古の昔から変わらない大自然の中で生きる
人間の心の葛藤を、圧倒的迫力を誇る美しい大自然を背景として
描いてきたピーター・ウィアー監督が、本作では
ヒマラヤ山脈、ゴビ砂漠の過酷な自然と正面から相対し、極限の状態で
生き抜いた人間の姿を脚本、製作にも参画して、
その独自の映像美で作品化した2010年の作品「ウエイバック―脱出6,500km」
物語の舞台は欧州各地に戦火が広がっていた1939年のソ連強制収容所。
スパイ容疑、反政府的言動等の原因でポーランド他の国から集められた
政治犯を主体とする囚人たちは、厳寒のシベリアの地で、乏しい食料
劣悪な住環境の下、連日厳しい肉体労働が課せられていた。
主人公のスパイ容疑で逮捕され収容所に送られた若いポーランド兵士ヤヌシュは
生き延びるために、脱獄を計画し、彼の計画に賛同した数名の意思を持った
仲間たちと猛吹雪の夜に脱走し、先ずはバイカル湖、モンゴル、ゴビ砂漠、
ヒマラヤ山脈を抜けて、お茶畑の広がるインドを目指す。
「ラブリーボーン」のアイルランド女優シアーシャ・ローナン、
同じくアイルランド俳優のコリン・ファレルそしてエド・ハリスと
芸達者な俳優たちの演技を楽しみ、そして背景となっている
手つかずの荒々しい自然を楽しむ。
そして、反戦的メッセージは間接的に観るものの心に届く。



