「飲食男女」(Eat Drink Man Woman)
大きな中華包丁を器用に操り、次々と食材を加工し、
大きな中華鍋で調理するベテラン料理人の姿から始まる本作は、
台湾で暮らす庶民の姿を描いたものであり、
早くに妻を亡くし、老舗ホテルのコック長として男手一つで
三人の娘を育て上げた父親とその娘たちの物語である。
李安(アン・リー)監督が脚本にも参画し、
制作した1994年の台湾映画は
「ライフ・オブ・パイ」でも見せつけられた映像に対する
監督の思いが込められた作品。
フランス料理、イタリア料理やトルコ料理が厨房で
手際よく美味しそうに映像化した作品は少なくないが、
李安監督は、本格的中華料理を愛情を込めて
実に美しく撮りあげることに成功している。
成長した三人の娘たちの生き方、そして父親との
微妙な関係、
プロの料理人の舌に永遠に残っているのは、
父の職場に入り浸っていた料理好きの次女が
受け継いだ亡き妻のスープの味だった。
「みんなで一緒に暮らしたら」(Et si on vivait tous ensemble?)
パリを舞台に、平均年齢74歳の俳優たちが、それぞれ自分と同じ年代の
中流階級に属するフランス人を演じる本作は、
老人ホームで余生を過ごすのでなく、
気のおけない昔からの仲間達と一つ屋根の下で過ごすことで
どんな人生をおくることができるのかを
シミュレートしている。
フランス映画に40年ぶりに出演したジェーン・ホンダ、
そして1944年生まれのジェラルディン・チャップリンの役どころは
40年来の友人として、静かに老いを迎えるのでなく、
若い時と同じような精神で、日々何か発見し、大切に生きようとする
二人の主婦を演じる。
この女性たちと同じ家に暮らすようになるのが、
ジェーン・ホンダ演じるジャンヌの夫であり軽度の認知症を患っている
アルベール、二人の主婦の共通の友人であり、既に妻を亡くしているクロード、
そしてジェラルディン・チャップリン(アニー)の夫ジャン。
“老い”を扱った、題材としては暗くなりがちのテーマであるが、
そこはフランス映画の伝統を継承する本作、
ユーモア、ペーソス、達観にあふれた人間ドラマとして
仕上げられている。



