『マーサ、あるいはマーシー・メイ』
今日の朝日新聞声欄に作家の森村誠一が「現実が不戦憲法を裏切った」
として、3日付けの声欄で憲法9条が現実の状況と共存できない
との理由から現政権が推進しようとしている改憲に賛成する方の意見への
反対意見を投稿されていた。
森村誠一は先の戦争で日本国民が身に染みて体験した戦争の悲惨さ、
多くの犠牲を決して風化させてはいけないとの立場から、
軍隊を認める事、軍人が権力を持つことの恐ろしさを
明確に説いていた。
本作『マーサ、あるいはマーシー・メイ』はあるカルト集団に
自ら参加した若い女性がその集団から逃げ姉のもとに身を寄せる
所から始まる。
逃走のきっかけは、マーサが知った、すべてのものを共有し、
平和に生きるという理念をもった集団の裏の恐ろしい実態。
両親は既になく、年の少し離れた姉がたった一人の肉親である
マーサの心に巣食った悪夢の体験は、
マーサを理解し手を差し伸べる姉そしてその夫の努力にも拘らず、
マーサを押しつぶしていく。
孤独から逃れるために、その実態を何も知らないで参加した
カルト集団。
カルト集団のヒラルヒーでは集団員は盲目的にトップの
命令に従うことを強制され、トップは集団を維持するため
“法”に背くことも平気で実行する。
“個“の尊重、尊敬を奪う集団の恐ろしさ醜さが
狂気に襲われるマーサの姿を通してドラスティックに描かれる。
「AMANDLA アマンドラ ! 希望の歌」
南アフリカ地域の現地語であるユサ語、ズールー語で
"Power“を意味する「Amandla」
「AMANDLA アマンドラ ! 希望の歌」は
人口の約1割に過ぎない南アフリカの白人が、畜民の先住民や
黒人の生活の場を一方的に奪って、強制的に特定の地域に移住させ、
彼らに劣悪な生活を強い、白人が富と特権階級を享受した
“アパルトヘイト”政策に“歌”で抵抗する南アフリカの先住民たちの
戦いを描いている。
1948年から1994年まで半世紀近い46年の間続いた
アパルトヘイト政策。
反アパルトヘイト運動を続けた多くの人々は投獄され、
殺害され、そして国外に追放された。
「PATAPATA」の大ヒットで一躍全世界に名を響かせ、
本作品に登場していたミリアム・マケバも反アパルトヘイト運動が
白人政府から糾弾され、1967年から1990年まで23年間
国外追放されていた。
真実和解委員会の活動にも拘らず、アパルトヘイト当時に先住民から
土地を奪ったとして未だに憎悪の対象となっている裕福な白人農場に
対する貧しい南アフリカ先住民の襲撃・強奪・略奪は、制度としての
アパルトヘイトが終焉してから約20年を経た現在未だに後を絶たない。
先週8月28日はマーティン・ルーサー・キング牧師が
1963年にリンカーン記念堂の前で「I Have a Dream」の
人種差別撤廃と人種の協和という我々が真摯に実践しなければ
いけない理念を説いた日。
暴力ではなく、全身を使った歌で自分たちの地位を
獲得しようとする民衆の苦難の道を描いた本作。
ガーベラ、エリカそしてアフリカハマユウと美しい花の
原産地でもあり、美しい景色が広がる南アフリカが
マンデラ氏の提唱する“虹の国”に一歩ずつ前進することを
祈る。



