愛 アムール
長年一緒に幸せに暮らしてきた愛する妻が、
体の自由がきかなくなって、
車いすなしでは移動出来なくなり、
言葉も思うように話せなくなり
食べることもままならなくなる。
認知症ではなく、意識はしっかりしているが
自分の思いを夫に伝えることができなくなり
絶望の淵にいる妻と一日の大半を一緒に過ごす夫の
胸に兆した思いとは。
どのような夫婦でも起こりうる悲劇に直面した
パリのゆったりしたフラットに住むジョルジュと
アンヌの夫妻。
ピアノ教師として優秀な生徒を育てていたアンヌが輝き
溌剌としていたころの姿を知るジョルジュと彼らの娘
エヴァの哀しみ。
人は必ず老い、その老いが現実のものとなったとき
私たちはどのように行動するのか
尊厳、思いやりそして決断。
映画という表現手段を駆使して人間の深層心理を解明する
シミュレーションを繰り返しているミヒャエル・ハネケ監督が
70歳で制作した作品 。
「世界にひとつのプレイブック」(Silver Linings Playbook)
Silver Linings=雲の明るいヘリから転じて“不幸中の明るい希望”や
“前途の光明”を意味する。
そして計画、戦略の意味も持つ“Playbook”
躁鬱症を患い、また妻の浮気現場を目撃し逆上して
相手に暴力を振るったことから精神疾患の治療施設に入れられ、
母親の努力で退院し実家に戻ってきたパット。
警官であった夫を不慮の事故で突然亡くし、その反動で
無軌道な日々を過ごしていたティファニー。
たまたまバットと出会ったティファニーが、
絶望の淵にあった二人の人生にもう一度光を投げかけ
失っていた将来への希望を取り戻すために仕掛けた戦略は、
二人で踊る競技ダンスへの挑戦であり、
ダンスには素人のパットにダンスを教える
ティファニーとの二人だけのレッスンであった。
本作を制作したデヴィッド・O・ラッセル監督が前作「ザ・ファイター」で
描いた、自分が産んだ子供であるが故に、世間の評判は全く気にせず
“出来の悪い”息子を溺愛する母親の姿に家族の本質をみたが、
本作でも複雑で困難な社会に一人で立ち向かっていく人間が生き抜く上で、
家族、友人達からの支えがいかに貴重で大切なものかが
ハートフルなメッセージとして伝わってきた。
一人で困難な人生を切り開いていく独立した少女を演じさせたら
並ぶもののない、芯の強い表情がさまになる若き女優ジェニファーローレンスの
魅力が十二分に発揮された、
“Silver Linings Playbook”の原題そのものの、
オプティミスティックで家族愛を大切にした作品。



