ローマで消えた女達(原題:Il tribunale delle anime(魂の裁判所))
本書の主題は
人を殺すという行為の背景にある
サディスティックな精神を掘り下げることであり、
本作は神への冒涜の背景を解明する過程で
悪の闇にはまり込んだしまった聖職者の
生き様を描いている。
自らが犯した罪を告白し、
神の赦しをもとめる
カトリックの信仰儀礼「告解」。
この告解が物語の柱となっている本作の原題は
魂の裁判所を意味する「Il tribunale delle anime」
長い間警察組織に公開されることもなく、
自らが犯した大罪を告解した記録が、
ヴァチカンの中枢部に残されていた。
聖職者たちはこの記録を通して罪を犯す人間の行為を
追体験し、原罪を理解しようとして、
告解した犯罪者たちの実像を追う。
本作の主人公は夫の不審死の真相を追うミラノ県警写真分析官
サンドラと、ある事故が原因で記憶をなくしているヴァチカンの神父マルクス。
イタリアを舞台として、豪邸で倒れ救急車を呼んだ老人が過去の連続殺人犯
であったことが読者に明かされるシーンから始まる本作は、
イタリア各地の景色・建築物が活写され、
更に原子力発電所事故で永遠に人が住めなくなった悲劇の街
プリピャチのシーンも現罪を暗示している。
「光の世界が闇の世界と接する場所」この境界を守るために置かれている
のが聖職者である本作の主人公の教誨師。
イタリア人作家 ドナード・カッリージは「六人目の少女」に続いて2011年に
上梓した長編第2作。

エヴァの告白(The Immigrant)
マンハッタンから東へ、クイーンズボロ橋を渡ると
そこは住民の約半分が移民の街クイーンズ。
自分自身が生まれ育ったこのクイーンズあるいはブルックリンを
舞台に、自己の原体験をもとにして、この街で生きるギャングあるいは
警察官とその家族の心を描いてきたジェイムズ・グレイ監督が、
移民として船で米国に渡って来た祖母(ロシア系ユダヤ人)の実体験
あるいは見聞きした話を脚色して制作した
「エヴァの告白(原題:The Immigrant)」
皆が貧しく暗い時代背景をそのまま反映させている本作の救いは、
女優マリオン・コティヤールが演じ切る、
第一次世界大戦の混乱の中で父と母を失い、
新天地での豊かな生活を夢見て
ニューヨークに住む叔母を頼りに
妹と二人で大西洋を渡ってきたポーランド人のエヴァが
たった一人の妹を思う一途の心。
時は1921年、
過酷な船旅の後ようやくでエリス島到着したエヴァと妹のマグダであったが、
通関でマグダが肺の病気をわずらっていることを指摘され、
マグダは病が癒えるまで島に拘置され、
後に仕組まれた罠と判明する移民を食い物にしている一味の計略で
エヴァもニューヨークの地を踏むことを拒否される。
困ったエヴァの身請け人となるのが、ホアキン・フェニックス演じる
うさんくさい興行師のブルーノ。
頼りにしていた叔母の助けは得ることができず、
絶望の淵にあったエヴァを“救った”のはエヴァを愛してしまったブルーノ。
「求めよさらば与えられん」
「だから人にしてもらいたいと思うことは何でもあなたがたも人にしなさい」
多くのアメリカ人にとって重要な意味を持つエリス島を舞台にした
本作で、ポーランド移民のエヴァを救う社会の落伍者ブルーノの愛こそ、
人種のるつぼアメリカで今もっとも必要とされる人間の資質であろう。


