BRUCE SPRINGSTEEN 「This Life」
その昔、英会話の先生から、ブルース・スプリングスティーンの歌は、ハイウエーを夜明けまで疾走する怒れる若者の歌ばかりで、あまり好きではないと言われた時に、そういう考えもあるのかと思ったことがある。
そのブルース・スプリングスティーンも76歳。昨年はトランプ大統領から、最も嫌いなアーチストと呼ばれるほど、未だに反骨精神旺盛で健全な精神を持ち続けるブルース・スプリングスティーン。彼が2009年に発表したアルバム「Working On A Dream」に収められているのがこの曲。
ブルース・スプリングスティーンに公私共に添い続ける、歌手であり妻のパティ・スキャルフの姿を思い浮かべる。
「夜空に光り輝く星が、大切な人の目に映る」
美しい歌詞のなかで私が好きなのは
“WITH YOU I HAVE BEEN BLESSED”
「あなたと一緒にいることで、私は祝福されてきた(幸せだ)」
との繰り返されるフレーズ。
この人生、この人生、
暗闇の中に無数の星が光り輝く
あなた恵まれ、
これ以上何を望めよう
「ドリーミン・ワイルド 名もなき家族のうた」 Dreamin' Wild
2022年にヴェネツィア国際映画祭で上映された後、2023年に各国で配映が開始された、1955年生まれのビル・ポーラッド監督の作品。実話に基づく本作の導入部で写される、広い農地に立てられた「競売物件」の一枚の看板、本作はこの看板の意味するところを徐々に解き明かしていく。
国内での若者の「いじめ」、トランプ大統領による、名も家もある人々の虐殺など、心を震撼させる報道が日々の生活に暗い影を落とす中、このような反人間的行動とは真逆の、人間の尊厳を掘り下げた、父と子、兄と弟、根源的には家族の深い愛情を主題とした本作は、見終わった後、人間の人間としての可能性を感じさせてくれ、深く胸を打ち、心に染み入る。
米国ワシントン州の田舎町で、十代後半の青年時代に、兄たちとバンドを組み、作詞、作曲の才能を磨いていたシドニー(アカデミー賞受賞俳優のケイシー・アフレック)は、父親が自ら建て、機器も全て準備してくれたレコーディングルームで自費レコード(資金は父親)を製作し、限られた枚数だけ販売した。
後にこのレコードが巻き起こす一大騒動が本作品の心臓部。魑魅魍魎の業界に翻弄され、紆余曲折を経た30年後の今、細々と音楽活動を続けているシドニー。その彼のもとに、30年前にリリースしたレコードを偶然発掘した稀少コレクターの「大傑作」との評価が届けられる。シドニーは再びスポットライトのあたる歌手をめざすが。
息子のシドニーの夢を支え続け、今では多額の借金を背負っている父親は、息子の才能を信じ続け、売れなくても決して息子を責めず、農場の殆どを手放しても、にこやかに支援し続ける。同じように、ドラム担当の兄も、功をあせるシドニーの罵詈雑言に決して怒らず、バックアップし続ける。全編にバラードが流れ、ラストシーンで観るものをはっとさせてくれる。大作ではないが、見終わった後の余韻が心地良い。
#Dreamin' Wild、#ドリーミン・ワイルド 名もなき家族のうた


