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「愛を耕すひと」Bastarden(デンマーク)、The Promised Land

邦題「愛を耕すひと」、原題の「Batarden」はデンマーク語で私生児を意味するとのこと。

本作品のラストシーンから、「愛を耕すひと」の邦題に込められている思いに得心する。

数多くの作品で主演を務めるマッツ・ミケルセンが、これまでの出演作品で見せてきた演技は、日本の能の演者の心につながるものがある。

本作では、記憶している限り、一度も笑った顔は見せず、感情を表に出さない能面のような表情で、自分の成し遂げようとする野望に突き進む。

時は1755年。日本では江戸時代の宝暦の飢饉と呼ばれる大災害が東北地方を苦しめた頃、マッツ・ミケルセン演じるドイツ軍に従軍していた退役軍人のケーレン大尉が、当時農作に適さず、長年にわたる国王の挑戦にもかかわらず、不毛の地のままであったユトランド半島の開拓に名乗りを上げる。

なぜ母国でなく、ドイツの退役軍人なのか。不毛の地に植えた農作物は何か。ケーレン大尉の母は農園で働く労働者で、希望しない私生児として生を受けた自分自身の過去と現在の生き方は。そしてロマの少女との関わり方。差別される人々。生まれながらに特権階級で「人の生き方」を学ばずに成長した不適格な支配者。

1996年の「プッシャー」、世界的にヒットした、2006年の「007/カジノ・ロワイヤル」等々、悪人を演じる無表情マッツ・ミケルセンも魅力的。

監督は、北欧小説の最上位に位置し、かつて愛読した「特捜部Q」の映画化脚本を担当し、2012年の作品『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』でもマッツ・ミケルセンとタッグを組んだはニコライ・アーセル。

 

 

 

 

 

 

BRUCE SPRINGSTEEN 「This Life」

その昔、英会話の先生から、ブルース・スプリングスティーンの歌は、ハイウエーを夜明けまで疾走する怒れる若者の歌ばかりで、あまり好きではないと言われた時に、そういう考えもあるのかと思ったことがある。

そのブルース・スプリングスティーンも76歳。昨年はトランプ大統領から、最も嫌いなアーチストと呼ばれるほど、未だに反骨精神旺盛で健全な精神を持ち続けるブルース・スプリングスティーン。彼が2009年に発表したアルバム「Working On A Dream」に収められているのがこの曲。

ブルース・スプリングスティーンに公私共に添い続ける、歌手であり妻のパティ・スキャルフの姿を思い浮かべる。

 

「夜空に光り輝く星が、大切な人の目に映る」

美しい歌詞のなかで私が好きなのは

“WITH YOU I HAVE BEEN BLESSED”

「あなたと一緒にいることで、私は祝福されてきた(幸せだ)」

との繰り返されるフレーズ。

この人生、この人生、

暗闇の中に無数の星が光り輝く

あなた恵まれ、

これ以上何を望めよう

 

 

 

「ドリーミン・ワイルド 名もなき家族のうた」 Dreamin' Wild

2022年にヴェネツィア国際映画祭で上映された後、2023年に各国で配映が開始された、1955年生まれのビル・ポーラッド監督の作品。実話に基づく本作の導入部で写される、広い農地に立てられた「競売物件」の一枚の看板、本作はこの看板の意味するところを徐々に解き明かしていく。

国内での若者の「いじめ」、トランプ大統領による、名も家もある人々の虐殺など、心を震撼させる報道が日々の生活に暗い影を落とす中、このような反人間的行動とは真逆の、人間の尊厳を掘り下げた、父と子、兄と弟、根源的には家族の深い愛情を主題とした本作は、見終わった後、人間の人間としての可能性を感じさせてくれ、深く胸を打ち、心に染み入る。

米国ワシントン州の田舎町で、十代後半の青年時代に、兄たちとバンドを組み、作詞、作曲の才能を磨いていたシドニー(アカデミー賞受賞俳優のケイシー・アフレック)は、父親が自ら建て、機器も全て準備してくれたレコーディングルームで自費レコード(資金は父親)を製作し、限られた枚数だけ販売した。

後にこのレコードが巻き起こす一大騒動が本作品の心臓部。魑魅魍魎の業界に翻弄され、紆余曲折を経た30年後の今、細々と音楽活動を続けているシドニー。その彼のもとに、30年前にリリースしたレコードを偶然発掘した稀少コレクターの「大傑作」との評価が届けられる。シドニーは再びスポットライトのあたる歌手をめざすが。

息子のシドニーの夢を支え続け、今では多額の借金を背負っている父親は、息子の才能を信じ続け、売れなくても決して息子を責めず、農場の殆どを手放しても、にこやかに支援し続ける。同じように、ドラム担当の兄も、功をあせるシドニーの罵詈雑言に決して怒らず、バックアップし続ける。全編にバラードが流れ、ラストシーンで観るものをはっとさせてくれる。大作ではないが、見終わった後の余韻が心地良い。

 

#Dreamin' Wild、#ドリーミン・ワイルド 名もなき家族のうた