Make Way for Tomorrow 「明日は来たらず」
「いのちあるものの
おしなべて
さけがたい
親であり
子である
つながりがうむ
かぎりない
よろこびと
かなしみ」
上記は、本作Make Way for Tomorrow 「明日は来たらず」に
触発され、1953年に松竹から公開された小津安二郎監督の名作
「東京物語」の予告編で流れる一節であるが、
本作は1929年にニューヨーク証券取引所での株暴落が引き金となった
世界大恐慌で、富んだ国アメリカが不況の後遺症から立ち直れずにいた
頃の1937年に制作されたパラマウント映画。
冒頭、日々の生活に追われ、自分以外の周りの人に対する配慮を
失いがちな人生の中で、長く生きてきた人々と若い人達の
間に横たわる大きな谷(ギャップ)に橋を掛けられるのは
次の 旧約聖書 出エジプト記からの言葉
“HONOR THY FATHER
AND THY MOTHER“
(汝の父、母を敬え)
だとして紹介される。
他人であった二人が出会い、意思を持って結婚し、
二人で協力して築き上げてきた家庭、
長い年月を経て人生に欠くべからざる相手となった二人
子供との関わりはあるが、
子供に頼る事を潔く思わない老夫婦。
女性専用老人ホームに住むことにした妻、
そしてカリフォルニアの子供の所に身を寄せる夫、
次の日に別々の場所に旅立つ二人だけで一緒に過ごす事に
きめた最後の晩の場所は、新婚当事に泊まったホテル。
ホテルのバー、そしてボールルームでの二人のダンス、
次の日の混雑した駅での別れ、二人の思いが伝わる
印象的なシーンだった。
頑固な父親であるが妻思いの良き夫と
5人の子供を育て上げた、夫思いの妻、
敬いあう二人の心は永遠につながっている。
マンハント Man Hunt
1939年のポーラン侵攻から2年後の1941年に公開された
20世紀フォックス社の作品。
第二次世界大戦が勃発する直前、オーストラリアと国境を接する
ドイツ南部のバーバリア地方で、一人で狩猟を楽しんでいた
裕福な英国紳士アラン・ソーンダイク。
結果的に自ら招いたある事件がきっかけでナチスに捕らえられ、
九死に一生を得てロンドンに逃げ帰るが、
彼の逃亡を知って英国まで追いかけてきたナチスからの逃走、
そして、その過程で助けられたロンドン下町のチャーミングな女性との
心の触れ合いを描きながら、
当時のナチス政権の、冷血さ、執拗さ不気味さを描きだしている
オーストラリア出身でアメリカに亡命したフリッツ・ラング監督の作品。
軍人として所期の目的を達成すべく一人で戦線に参加する
ラストシーンで象徴されるように、ユダヤ人であるフリッツ・ラング監督の
この作品は、ヒトラー政権を批判した所謂“プロパガンダ”映画であり、
逃走シーンでは脚本の緻密さに欠ける点が垣間見られるは否めないが、
ブルジョア階級の人間を自然に演じた主演のウォルター・ピジョン、
(小さなチェンジポケットが追加されたダブルのスーツ姿は典型的な
英国紳士だった)コックニー訛りを操り、ロンドンの下層階級を一人で
生き抜く女性を演じるヒロイン ジェリー・ストークスを演じる
ジョーン・ベネット共に、この作品を見ごたえにある作品に仕上げていた。
後に“イブの総て” 非情な演劇コラムニストを演じアカデミー賞助演男優賞
を受賞する英国人のジョージ・サンダースが完璧な英語を操るナチスの軍人役
として完璧な冷血漢を演じきっていた。
ロンドンの代名詞でもある、テームズ川に架かる石造りの橋が霧に覆われた
幻想的な風景、駅名を示す丸い看板は今と大差ないが、ロンドンの地下鉄が
チューブと称される楕円形状のトンネルを抜ける当時の車体、
昭和16年当時のロンドンの情景も楽しめるハリウッド映画であった。
ジョーン・ベネット
ウォルター・ピジョン









