「Kvinden i buret」「特捜部Q」-檻の中の女―
先月発表されたデンマークアカデミー賞2014で作品賞,
監督賞(Mikkel Nørgaard)、主演男優賞(ニコライ・リー・カース)、
主演女優賞(ソニア・リクター)、他脚本、撮影、編集、美術、衣装、
メイキャップ、視覚効果、録音、作曲、観客の計15部門にノミネートされた
「Kvinden i buret (The Keeper of Lost Causes)」。
このデンマーク映画は、2011年に早川ポケットミステリーから邦題
「檻の中の女」として出版された、ユッシ・エーズラ・オールスンの
ミステリー「特捜部Q」シリーズの第一作を原作としている。
邦題の「檻の中の女」がこのシリーズ第一作を象徴し、
英題「The Keeper of Lost Causes」が主人公の仕事を表現している
ように、未解決のまま迷宮入りした事件だけを専門的に捜査する
デンマーク警察特捜部Qの責任者カール・マーク警部補と
その助手アサドの二人が執念を燃やして難事件を解決する
「特捜部Q」シリーズ。
妻は家を出ていき、妻の元から戻ってきた義理の息子と暮らしている
“一匹狼”の捜査官カール、そして複雑な過去を持ち、決して過去の
経歴を明かすことが無いシリア移民のアサド。
先日紹介したユッシ・エーズラ・オールスンの特捜部Qシリーズ
第4作「カルテ番号64」は自らの意思に反して、狂気と邪悪な
心に支配された、表面上は一般市民の“悪魔”に翻弄された女性の
姿を描いており、本作も何の罪もない美しく優秀な女性議員と
狂気の心に支配された一市民の対決を描いている。
人が人に為しえる最も残虐な所為を敢えて描写することで、
非日常的な場に読者をいざない、最終的にはその悪を罰することで
読者の心にカタルシスを与えるユッシ・エーズラ・オールスンの「特捜部Q」
長い長い歴史が物語の背景となっている長い長い日々を記した本作は、
第4作の印象から哀しい結末も予想していたが、
ユッシ・エーズラ・オールスンが準備した結末はこの予想を裏切るものであった。
北欧ミステリーの系譜に位置する本作、その内容から
「Kvinden i buret(The Keeper of Lost Causes)」”が
日本で公開されるか不明であるが、
デンマークアカデミー賞2014年で15部門にノミネートされた
映画も見てみたいもの。
ちなみにマッツ・ミケルセンが突然周囲から疎外された男の
哀しみを全身で表現した「偽りなき者」がこの年のデンマーク
アカデミー賞作品賞を受賞している。
「きっとうまくいく」(3 Idiots)
その昔、老若男女を問わず庶民がスクリーンに投影される登場人物に
感情移入し、共に泣き共に笑い、拍手していた映画の黄金時代。
本作は、世界各地特に製作国のインドの映画館で
観客が喜び笑う姿が目に浮かぶような、映画の黄金時代の作品を
彷彿させる、優れた“映画”の特性がすべて盛り込まれた作品。
時代背景は何時頃であろうか、
この大学を卒業しさえすれば実業界での将来が約束されるとされる
インドの全寮制最難関工科大学。
この大学を舞台に、カースト制度を背景として、貧しい家庭の将来を一身に
背負っている青年、将来の実業家として家族から大きな期待を寄せられている
青年、そして彼らとは一線を画し、自由奔放に生きながらも成績が最優秀で
彼らとの友情を最も大切にしている青年。
最難関大学で自分の言うことを聞く”優秀”生徒を育てる事だけを
生き甲斐にしている学長と英題の「3 Idiots」が示すこの秀才と二人の
おちこぼれの、時にバカバカしく、時に人情味あふれる抱腹絶倒の日々に
既存の価値観を笑いとばす制作者の思いが込められている。
英国の支配下にあった時代に労働者が良く口にした言葉『Aal Izz Well』
(アール・イーズ・ウェル)。
「All is well」 の思想こそ本作の主人公ランチョーが自ら体現した生き方であり、
階級制、古い因習と相対するメッセージ
華麗なボリウッド映画のような圧倒的な迫力の集団ダンスシーンは抑えてあるが、
そこはインド映画の本作、カラフルなダンスシーンも楽しめるし、
何より本作のクライマックスで登場するパンゴン湖の景色が素晴らしく美しく、
これまでの伏線が一挙に解明されて余韻深いエンディングへと
作品は導かれていく。




