「特捜部Q-カルテ番号64-」
殺人事件捜査の過程で遭遇した予期せぬ銃撃戦で、三人の同僚の内
一人を失い、一人は一生ベッドから離れることができない重傷を負い、
本人はほんの数センチの差で銃弾がそれ、生き延びる事ができた
コペンハーゲン警察殺人捜査課のはみだし捜査官カール・マーク。
「特捜部Q-カルテ番号64-」は同僚を救えなかったことは自分の怯みとして
この事件を一生の恥と感じて生きているカール・マークが、過去の未解決事件を
解明する特別組織「特捜部Q」のトップとして、唯一の直属部下であるシリア人の
“変人”アサドと共に、実に人間臭く謎を解いていく,デンマーク人作家
ユッシ・エーズラ・オールマンの特捜部Qシリーズの第四作目。
デンマークの歴史の暗部に光をあて、貧しさと周囲の無理解故に薄幸な
少女時代を過ごさざるを得なかったある女性の体に刻まれた
偏見と傲慢の傷跡を解きかかした「カルテ番号64」。
第二次世界大戦から既に70年以上を経過する現在、
その後の欧州に大きな爪痕を残しているナチス・ドイツの蛮行「ホロコースト」を、
過去の歴史として忘却することを決して甘受することのない文化の
健全さ成熟度を本作から強く感じる。
本作の面白さは、「劣等人種(人間)」は根絶やしにして地上から抹殺するのが
当然とする狂気の思想を密かに実践し、功成り名ととげた医師そして、
この行為を黙認し続けていた周囲の協力者あるいは国家に対する糾弾を、
頑固で人付き合いの悪いカール、そして常に真っ直ぐで、時に超人的な行動を
爆発させる謎のシリア人アサドが命を賭けて実践するところ。
ノルウェーのフィヨルドに浮かぶ孤島に築かれた少年矯正施設で1915年に発生した
事件を基に製作された「孤島の王」の寒々とした心象風景を彷彿させる、
大ベルト海峡に浮かぶスプロ―島、そしてコペンハーゲンの西に位置するフュン島
など、
本作の舞台となっている土地を地図を参照しながら思い浮かべ、
この地で生きる人々の生活・文化に如何に深く北欧特有の厳しい自然が
影響しているかに思いを馳せた。



