特捜部Q P-からのメッセージ
シリーズ第一作は、過去の事故被害者家族による“加害者”家族への
狂気の復讐譚。
第二作は快楽の追求だけを目的に、裕福な家庭で育ち、人を人と思わない
思い上がった若者達の他者への残虐行為。
そして第三作となる本作は、聖職者の父から子供の頃に受けた
理不尽で暴力的な仕打ちを原因とする精神的トラウマから
新興宗教を信奉する家族たちへの憎しみ
そして第四作男女差別、人種差別、階級差別に泣かされた女。
本シリーズの狂気の犯罪者達に共通しているのは、
自分が第一で、自分あるいは自分と異なる集団への憎悪であり、
これと相対する迷宮入り事件の専門特捜部Qで敢えて自ら
幹部職への昇格試験を受けることを避けているはみ出し刑事
カールの人間くささが際立っている。
外見は一般市民と全く変わらない仮面をかぶった狂気の犯罪者の
残虐な連続殺人事件。
読者はスーパーマン的ヒーローの対極にある刑事カールの性格、
物の考えかたから、自らの生き方についても再考するきっかけが
与えられる。
ストーリーはデンマーク北部の入り組んだ海岸線にひっそりと建てられた
ボート小屋に手足を縛られて閉じ込められていた兄弟の兄が、
縛られた後ろ手を使い必死の思いで自らの血をインクとして書き上げた
手紙をガラスボトルに封入し、床の隙間から海に落とす場面から始まる。
イギリス北部流れ着いたボトルに封入されていた、ほとんど文字が消えてしまった
手紙が長い年月を経てカールの手に渡り、カールのスタッフ達の辛抱強い
努力で手紙の内容が少しづつ解読されていく。
読者には既に知らされている犯人逮捕への道のりは遠く、
カールたちがもたもたする間にさらに残酷な事件が続いていく。
アメリカンミステリーとは一味違う デンマーク作家ユッシ・エーズラ・オールソンの
著作は"白夜”に生きる人々の文化を感じる。
オン・ザ・ロード
リオデジャネイロに点在するスラム街ファヴェイラを舞台として、この地で生まれ、
幼少の頃から少年ギャング団の抗争を身をもって体験している若者たちが
生きる過酷な人生を描いた「シティ・オブ・ゴッド」の製作総指揮であり、
医者の卵だったチェ・ゲバラが友人と二人でブエノスアイレスから赤道直下の
ベネズエラまで旅する傑作ロードムービー「モーターサイクル・ダイアリーズ」を監督した
リオデジャネイロ出身の監督ウォルター・サレス。
このウォルター・サレス監督がフランシス・フォード・コッポラ製作総指揮の下で
舞台を南米から米国に移して製作した「オン・ザ・ロード」は、
1960年代から70年代に“反逆する”若者たちから熱狂的支持を得ていた
ジャック・ケルアックの小説「On the Road」が持つ、既存の社会に背を向けることで
自らの内に生まれる一時の高揚感、そして他者とは異なる自分を追求する
鋭い自己意識がやや薄れた感のある、優柔不断で、刹那的な青年の挫折に
焦点を当てた“まっとうな”作品として仕上げられていた。
ベトナム戦争終結から39年、全共闘により占拠されていた早稲田第二学生
会館が機動隊の”武力”により強制解除されてから45年。
さらにさかのぼる1957年に出版され、安保闘争、反ベトナム戦争、大学紛争
当時を生きた若者のバイブルのような著作であった「On the Road」
大麻、ヘロインを日常的に摂取していた詩人アレン・ギンズバーグや
「Naked Lunch」の著者ウイリアム・バロウズたちとの交友関係がベースとなっている
「On the Road」を原作とする本作は、ニューヨークに住む作家志望の青年と
大麻を日常的に吸引する社会性のまったく無い青年とそのガールフレンド達の
物語であり、米国を縦断し、メキシコまで足を伸ばしたロードムービーである。
ブラジルと比較するとはるかに豊かな国米国、
ウォルター・サレス監督にとってこの米国の若者の
破天荒な行動は所詮“ぼっちゃん”の遊びにすぎないか。
敬愛するジャック・ケルアックを除いては。




