RIVERのブログ -21ページ目

『クロワッサンで朝食を』(UNE ESTONIENNE A PARIS)


若い頃からあこがれていたパリに、家政婦として初めて訪れた

エストニア人のアンヌが何気なく買ってきたスーパーの袋入りクロワッサンを、

若いときにエストニアから移住しパリで生き抜いてきた老婦人フリーダは

“これはクロワッサンの形をした偽者で食べられない、クロワッサンは

街角のパン屋で毎朝買うもの“と一笑する。


クロワッサンに象徴されるフランス文化の香り

そして華やかなパリと対比される暗い雪のエストニア。


華麗な町パリで勝利者となった移民の老婦人を演じた

ジャンヌ・モローは、老醜とも言える外見をそのままスクリーンにさらし、

生き馬の目を抜くパリでここまで勝ち上がってきた成功者としての

華やかな服装や住まいの裏側に隠された、過去の凄まじい生き様を

その徹底した酷薄さ、皮肉ぶりで演じてみせる。


痴呆症を患っていた母の死により長年の介護から開放され、

夫とは十年ほど前に離婚し、二人の子供も独立しているアンヌが、

老人ホームでの看護歴を変われて、家政婦としてパリに行き、

初めて目にする美しい夜更け、夜明けのエッフェル塔、凱旋門。


これまでエストニア出身者を拒絶し、自分が気に入ったほんの一握りの

人達だけと生きてきたフリーダをなんとか理解しようとするアンヌに対して

フリーダはその厚意を拒絶し、人格を無視する態度で接するが、

フリーダを助けようとするアンヌの存在がフリーダの心に微妙な影を落としていく。


ルイス・ブニュエル監督の「小間使いの日記」から46年、1928年生まれの

ジャンヌ・モローが全ての虚飾を拭い去って演じる人物は、

自らを愛するがゆえに人から愛されることを一生追い続ける実に人間くさい女性

であり、ジャンヌモローが演じ続けてきた女性の延長線上にある。









スミレ


毎年同じ場所で早春に五弁の淡紫色の花を咲かせるスミレ(菫)


英語で紫色を意味するVioletはスミレの花びらの色であり、

スミレの学名Viola mandshuricaViolaに因んでいる。


昨年11月頃から咲き続けているヴイオラ、パンジーも

華やかで美しいが、

半日陰の場所でひっそりとつつましく咲いている

スミレには独特の風情がある。








ボケも花盛り。







「サンセット大通りの疑惑」(Sunset Express)

マイクル・コナリーと親交があり、同じロセンゼルス地区に住み、

この地域を題材としたサスペンス・ミステリーを執筆している

マイクル・コナリーの3歳年上の作家ロバート・クレイス。


私立探偵エルヴィス・コールを主人公として、ハリウッド映画産業の

成功者、そして彼らから莫大な弁護料を受け取り巨大な弁護士事務所を

運営している著名弁護士と警察組織の抗争を題材とする「サンセット大通りの

疑惑」

(Sunset Express)は、実にアメリカ(ハリウッド)的なエンターテインメント性を

盛り込んだ、後味の良い“娯楽小説として仕上げられている。


ストーリーは、久しぶりにロスアンゼルス特有のスモッグが洗い流され、

気持ちの良い一日が始まった朝、ロサンゼルスが一望に見渡せる

マルホランド・ドライブのストーン・キャニオン展望台の急斜面下から

ビニール袋に包まれた白人女性の死体が発見された場面から始まる。


第一発見者の親子から通報を受け、現場に駆けつけたロス市警のアンジェラ・

ロッシらは撲殺死体がハリウッドで成功した実業家テディ・マーティンの妻スーザン

であることを確認し、夫のテディ・マーティンの豪邸に死体発見の報告に行った際に、

蔦の隙間から発見したのが凶器と思われるハンマー。


殺人犯の疑いで逮捕され、拘置所に収監されたテディが雇った弁護士こそ

ロサンゼルスの超大物弁護士ジョナサン・グリーン


アンジェラの過去の過失を逆手に、凶器のハンマーはアンジェが置いたとして、

テディの無罪を勝ち取ろうとするジョナサン・グリーン組に雇われたのが

エルヴィス・コール。


本作の質を高めているのが、離婚した前夫との関係に悩まされながら、一人息子と

暮らしているルイジアナの弁護士ルーシー・シェニエとルーシーを心の底から

愛しているエルヴィスのお互いにお互いを好ましく思っている心の関係。


“団塊の世代”にわずかに掛かる1953年生まれの筆者ならではの

人間を見つめる優しい目が行間に滲んでいる。