「日の名残り」(The Remains of the Day)
「人は皆、人生に悔いがあります。」
第二次世界大戦前の特権的貴族階級の広大な館で
主人に忠実に仕える老執事の生き方を記した
英国在住の作家カズオ・イシグロの小説を、
英国を舞台にした多くの作品を製作している
ジェームズ・アイボリー監督がまさに“英国”的
“風景”として節度ある映像で完成させた
「日の名残り」(The Remains of the Day)
自分の感情全てを自分の内に押しとどめ、
執事長としての自分の職業に徹するスティーブンス。
その態度は肉親の死に際しても、
自分を好ましく思ってくれる女性に対しても変わることがない。
しかし、それは執事としての生き方以外の
個人としての幸せ全てに目をそらせる人生であった。
沢木耕太郎がその著“世界は「使われなかった人生」で
あふれている“で、言うところの「使われなかった人生」は
「ありえたかもしれない人生」と似ているが、
「使われなかった人生」は自らの決断で選択した結果としての
「使われなかった人生」であり、
「ありえたかもしれない人生」は、もう手の届かない、だから夢を
見るしかない遠さがあると表現している。
本作は主人公の執事スティーブン(アンソニー・ホプキンス)、そして女中頭の
ミス・ケント(エマ・トンプソン)にとっては
「ありえたかもしれない人生」であり、
同時に「使われなかった人生」とも言えよう。
時を経て、久し振りに再会したスティーブに対しベン夫人(ミス・ケントン)は言う
「このあたりでは夕暮れが1日で一番良い時間」
「夕暮れ」それは自分を押し殺して追われ続けた1日の仕事の緊張から
束の間解放される時間。





