「八月のマルクス」
「八月のマルクス」この印象的な題名を持つ「物語」は
“猫は目だけを動かし、視線をよこした”の
書き出しで始まる。
巧妙に仕組まれたあるスキャンダルがきっかけで、
最も大事にしていた肉親を失い、
心に封をしたまま生きてきた笠原優二。
いつものように、六時をややまわったころ、下北沢の繁華街から少し離れ、
東北沢寄りの民家やマンションが立ち並ぶ人通りの少ない場所に
ひっそりと店を構えているバー「ホメロス」に立ち寄った笠原優二が
笠原の定位置で待ちかまえていた元相方で日本を代表する
笑わせ屋立川誠と事件後4年と8ヶ月振りに再会したことから
この物語は始まっている。
興行を生業とする芸能プロダクションの
ヒエラルキーが作品全体を支配しているこの作品。
5年前に傍観者であり続けた笠原優二は、
その歳月が自らを変え、
自らの手できちんと決着をつける過程で、
命の重み、他者とそれを共有して生きていくことの
喜びを知るようになる。
本作品は、2008年に「あぽやん」で第139回直木賞候補となった
新野剛志のデビュー作であり、1999年の第45回江戸川乱歩賞
受賞作品。








