『フィクサー』(原題:Michael Clayton)
ユダヤ人作家である米国人のバーナード・マラマッドが帝政ロシア時代を背景に
善良なユダヤ人市民の身に突然降りかかった“権力”による虐待の姿を描いた
「フィクサー」と同じ邦題がつけられた2007年のハリウッド映画『フィクサー』は
巨大組織の悪と戦った“落ちこぼれ”弁護士がもがきながらも進み続ける。
決して洗練されているとは言いがたい生き様を描いている。
弁護士事務所設立当時からのメンバーではあるが、
現在は、訴訟につきものの“裏工作”を担当する便利屋のように使われ、
仕事に対する情熱を失い、悪癖である賭けポーカーで借金をかさね、
独立を考えていたレストラン経営にも失敗したジョージ・クルーニー
演じる弁護士マイケル。
所属する弁護士事務所が大手農薬会社側に立ち、全社をあげて
弁護活動をしている告発訴訟を担当していたマイケルの親友弁護士が、
あるきっかけで農薬に関する重大な機密情報を入手し、そのストレスから
衆人の前で奇矯な行動に及んだことから物語は進展する。
安全性をうたった農薬に隠された重大な問題。この機密情報をひた隠しにし
住民訴訟裁判での勝利を確信しているティルダ・スウィントン演じる農薬会社の
法務部長。
巨大会社の排水処理設備不全を原因とした環境汚染を
自ら解明し、勝訴したシングルマザーを
ジュリア・ロバーツが演じた『エリン・ブロコビッチ』は
巨大会社の不正解明に全力で戦った不屈の女性を
オプティミスティックに描き、本作のジョージ・クルーニー
は
親友の魂を救う人間を泥臭く演じる。
原題を主人公の名前「Michael Clayton」とする本作は、
シリアスな演技に徹したジョージ・クルーニー
と会社の存続のみを
最優先させる大手農薬関連会社の冷徹な法務本部長を演じた
ティルダ・スウィントンの存在が作品に深みを与えていた。
『エデンより彼方に』(Far from Heaven)
全ての面で人種隔離的な社会が根強く残されていた1950年代の米国。
本作『エデンより彼方に』の背景には、エルビスプレスリーのJailhouse Rock
(監獄ロック)が8週間全米1位を記録し、公民権運動の結果アーカーソー州
リトルロックの白人だけが在籍していた高校にアフリカ系アメリカ人
高校生の入学が許可されたが、現地の白人の拒否で大混乱が発生した
1957年の、“富める国・自由な国”米国に住む人々の心の闇がある。
ニューヨーク州の東、マサチューセッツ州の南で大西洋に通じる
ロングアイランド湾に面したコネティカット州
札幌とほぼ似たような緯度に位置し、素晴らしい景観に恵まれ、
裕福な暮らしを営む白人が好んで住み、街では殆どアフリカ系米国人の
姿を見かけなることのない地域を舞台にした本作は、
後にケイト・ブランシェットがボブ・ディランを演じた
「アイアム・ノット・ゼア」でその良識を笑いとばす反骨精神が
垣間見られるトッド・ヘインズ
監督の2002年の作品。
本作が取り上げているのは、一流企業に務め、美しい妻と二人の子供に
恵まれ何不自由なく暮らしてエグゼクティブが秘密裏に持ち続け、
ある日突然妻に目撃されてしまったゲイの性向、そしてその美しい妻が
リベラルな態度でアフリカ系アメリカ人に対して接したその態度に対する
白人社会からのしっぺ返し。
良く手入れされた広大な庭園で紅葉しているモミジバフウに
象徴される非常に美しい“自然”。
その対比として白人社会の表面的な豊かさの影としての人間の卑小さを
内省的なトーンで描いた本作は、敢えてステレオタイプとして登場人物を
描く事で、“フィクション”と“ノンフィクション”の境界を観客が自由に行き来する
空間を創り上げることに成功している。
本作は、多くの作品に出演している女優ジュリアン・ムーアの代表作とも言えよう。
広島原爆の日
殺傷兵器であるTNT火薬と原子爆弾のもっとも
大きな違いは、爆発後に被災地域の住民、住環境に長期間
ダメージを与える放射性物質の影響であろう。
原子爆弾はその爆発時の高熱と爆風で、一瞬の間に非戦闘員である
広島に住んでいた人、たまたま滞在していた旅行者を含む
多くの市民を死に追いやり、直接死に至らなかった人達も、
体内に取り込まれた目に見えない放射性物質が放射するγ線により
体を蝕まれていった。
これが自国の益を守ることの名目の下、
対戦国の国民が同じ人間であることを忘れさせ、
一般市民の殺害を正当化してしまう、
戦争の蛮行、愚行の実態であろう。
福島の原子力発電所事故により飛散した放射性物質の
除染方法を複数の会社関係者と大学で検討し、現地で
除染テストを検討してきたばかりの技術者の話を
先週聞く機会があったが、そのときの話では、事故から
間もなく約1年半経過する今日現在でも人が住めるような
環境では無く、これからも人が住むことは不可能な
ゴーストタウン化した地域では、
他都道府県の警察関係者が空き巣等の治安対策として
交代で警備に当たっていたとの事。
あらゆる問題を想定する事で完成するリスク管理、
原子爆弾同様、“想定していない”事態で住民の人生を
破滅させる原発を可及的速やかに唯一の被爆国日本から
根絶することが、
「安らかに眠って下さい過ちは 繰返しませぬから」の言葉に
答える、生き残り、この美しい国土を誇る我々日本人の使命であることを
今日この日に思う。
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