「直訴編①」のつづき

 

サッカー少年団の活動中に重傷を負ったキーパーの子のママとともに、団の総代表に申し入れをすることにした私。

 

議題は子どもたちの安全管理、の1点突破。

 

・・・のつもりだったのに、「同席したい」と言ってきたママNさんのパパコーチに対する文句が止まらず。口を挟む隙さえ見えないマシンガントークに困惑していました。

 

困惑しているのは総代表も同じ。

じっと腕組みをして押し黙ったままの状態で、ああ終わった・・と私は諦めかけていました。モンスター的なNさんと同類と思われたら、この後どんなに神妙に申し入れしても代表に響くわけない・・・

 

諦めかけた、その時でした。

 

「先月だって、急に練習が中止になったと思ったら、コーチの家庭だけで大会に出場してたんですよ!信じられます???」

 

「・・・それ、本当ですか」

 

銅像のようだった総代表が初めて反応しました。

 

「本当です! 間違いないです!

△△さん(保護者リーダーのボスママ)が、そこで3位に入ったの!ってすごーく自慢してましたから」

 

それは初耳!


Nさんによると、

パパコーチ8家庭は、近隣の強豪チームが募集していたワンデーカップに応募。前日にキャンセルが出たことで出場可能になったため、週末の学年練習を中止にして大会に参加していた、というのです。

確かに先月、天候が悪いわけでもないのに前夜に「諸事情により練習は中止」の連絡がグループラインであり、何かあったのかな?と思った記憶がありました。

 

自分たちだけで大会に出場して、

残り20人近くいる団員は無視ということ?

それは・・・・

 

「事実とすれば問題ですね。コーチ陣に確認します」と総代表。

横に座る事務局長と顔を見合わせています。

 

「ありがとうございます!」

 

ご満悦のNさん。

私は初めて、八方美人で噂好きな彼女の情報収集能力に感謝しました。しかし、ここで終わるわけにはいかない!のです。

Nさんの話が途切れたタイミングで、ようやく本題に入ることができました。

 

「総代表から監督とコーチ陣に確認していただきたいことが、もう1点あります!」

 

キーパーママと私は、部内フットサル大会での出来事を努めて冷静に報告しました。

 

◆試合中にキーパーと選手が交錯したこと。

◆キーパーの選手はピッチから担ぎ出されて動けない状態だったのに、8人いるコーチが誰も様子を見に来なかったこと。

◆コーチが来ないので、その場にいた保護者数人が病院搬送を決断したこと。

◆保護者に背負われて病院へ向かう途中、学年監督に事態を報告したが、「了解です」の一言で息子の応援に戻ってしまったこと。

◆診断は「鎖骨骨折で全治3か月」の重傷で、選手が落ち込んでいることを監督に連絡したが、やはり「了解」の一言だったこと。

◆翌週の練習でも、団員にけがへの注意や予防策などの説明がなかったこと。

◆今後同様の事態を防ぐためにも、けがの初期対応と再発防止について、コーチ陣と改めて確認してほしいこと。

 

※詳細は「監督がわからない」「パパコーチって

 

 

真面目なキーパーママは、話す内容をノートにまとめてこの場に臨んでいました。

 

「私は監督に謝罪を求めたいとか、責任を取ってほしいとか、そういうことを言いたいんじゃないんです。ただ、けがをしてしまったチームの仲間の思いに、少しでいいから寄り添ってほしいんです。監督からはいまだに『お大事に』の一言もいただいていません」

 

時折、涙ぐみながら話すキーパーママを見て、Nさんも涙・・・

あなたが泣く??という疑問はさておき、コーチ陣への文句に終始していたNさんとは対照的に、辛い事実のみを淡々と語ったキーパーママの話は総代表に響いたようです。

 

「コーチOBの立場からすれば、信じられない思い」と総代表は言い、監督を含むパパコーチと話をすること、けがをした選手の心のケアに努めることを約束してくれました。

 

思い切って話してよかった・・・

そう安堵していると、これまで黙って話を聞いていた事務局長が申し訳なさそうにこう言ったのです。

 

「この学年のコーチがここまで自分の息子たちに必死になるきっかけを作ったのは・・・私かもしれません」