前回の続きです。
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ミミちゃんの一件で、私は重い熱病のような状態からついに覚める事ができました。
もう迷いはありません。
はっきりと別れを告げ、見栄晴との繋がりを全て断ち切る必要がありました。
私からの電話だと分かると見栄晴は妙に嬉しそうに言いました。
「プー子ちゃん!元気?電話をくれて嬉しいよ!どうしたの?」
早速本題に入りました。
「お願いがあるの。」
「うん?」
「あのね、これからもう二度と連絡をしないで欲しい。手紙も、電話も…。なぜなら…」
伝えたい事が沢山あり過ぎて言葉に詰まった一瞬を逃さず、見栄晴はテンション高めに言いました。
「あっ、うん、そうだね!分かったよ☆
もう何にも言わなくても大丈夫だから☆
連絡しないから!うん、約束する!
じゃね!」
すぐにでも電話を切られそうな勢いだったので、急いで一言だけ付け加えました。
「あのね…もし次に好きな人ができた時は、もう二度と私みたいな思いはさせないで欲しい。」
短い沈黙の後で見栄晴は答えました。
「うん…分かった。」
「さよなら。」
私は受話器を置き、深い息を吐きました。
終わった。。。やっと終わった。
もう涙は出ませんでした。
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私が日本に帰国して間もなく、共通の友人から見栄晴が婚約を発表したと聞きました。
はやっ!
最初に出てきた感想です。
あの電話からまだ三ヶ月も経っていませんでした。
実に器用な兄弟です。
お得意の同時進行でしょうか。
婚約者の姉妹は今頃きっと一年前の私みたいに背中から羽根が生えて、最高の幸福を味わっている事でしょう。彼女がいつまでも夢から覚めないで、これからもずっと幸せな状態が続く事を願わずにはいられませんでした。
一方見栄晴には是非、
「情欲に燃えるよりは結婚する方がよい。」 (コリント第一7:9)
という聖句を記念に贈ってあげたいと思いました。
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見栄晴に関連するトラウマは、私の心に深い傷跡を残しました。
愛情表現に関してはそれほど深入りせずに済みましたが、それでも自分は神様に嫌われてしまったのでは、という重い罪悪感に苦しみ続けました。
私が神様に再び認められるためにはただストイックに開拓奉仕に打ち込み続ける事しかできませんでしたが、所詮はJWなんてただのインチキ宗教なので、いくら頑張っても虚しさと孤独がつのるだけでした。
見栄晴自身は長老に任命されたり、早速子供が生まれたりと、勝ち組街道を真っ直ぐ歩いているようでした。
見栄晴の事を嫌いにはなりませんでした。
「嫌い」という感情さえも彼には高級過ぎたのです。
私が彼に感じていたのは、生ゴミに対するような拒絶反応と吐き気だけでした。
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あれから30年以上の年月が経ちました。
見栄晴は20年ほど前に家族で海外に移住し、人も羨むような高級住宅街に暮らして地元のJW日本語会衆でウンチ君、もとい長老をやっているそうです。
たぶん今も、きっとこれからも。
彼にとってはお似合いの場所です。
JWの世界にとどまっていれば引き続き信者たちに尊敬され、自分の支配欲や虚栄心を満足させることができる事でしょう。
これからも、永遠に来ない楽園の希望を触れ告げながら。。。
I'm Too Good For You
私は、あなたには勿体ない女性です。
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見栄晴のお話はこれで全部おしまいです。
長らくお付き合いいただき、どうもありがとうございました。