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かなざわリージョナルシアター「劇評」ブログ

本ブログは金沢市民芸術村ドラマ工房が2015年度より開催している「かなざわリージョナルシアター」の劇評を掲載しています。
劇評を書くメンバーは関連事業である劇評講座の受講生で、本名または固定ハンドルで投稿します。

この文章は、2020年10月17日(土)17:00開演の北陸学院高校演劇部『私立まほろば高校落語研究同好会の輝ける歴史』についての劇評です。

6年目を迎える「かなざわリージョナルシアター2020げきみる」のトップバッターとして、北陸学院高校演劇部が金沢市民芸術村ドラマ工房で上演した『私立まほろば高校落語研究同好会の輝ける歴史』(作・演出:井口時次郎)。最初に噺家らしい和服姿の男子高校生・葛谷(松本青児)が登場し、落語の高座が始まる。だが、枕(導入部分)を終えて、本編を語り始めた途端、スルスルッと引っ張られるようにして座布団ごと下手側へ追いやられてしまった。真ん中の空間では、彼の話している落語が劇中劇として演じられる仕掛けだ。内容は学園生活の息苦しさを描いたものだったが、最終的には落語オタクとも言える主人公の生き方ってどうなんだろうという問いかけにもつながっていく。そんなドラマ構造が面白かった。

創作落語の1本目「ぐだぐだ」は、現代文のテストで赤点を取った女子生徒4人が放課後に補習を受ける話だが、何やら様子がおかしい。上田先生(ウッドハムズ仁花)は芥川龍之介の「羅生門」を紙に丸写しさせた上で、隣の生徒と交換し、お互いに破り捨てさせたのだった。理不尽なやり方に生徒たちは反発する。次の夏目漱石「夢十夜」は手分けして何とか書き上げたが、樺山(那谷桃子)が向かいのコンビニで4人分をコピーしている間に先生が戻って来てしまい…。教育と呼ぶにはあまりに不毛なやり取りは、味気ない現実をことさらにデフォルメした悪夢のようだった。

次の演目は「美樹ちゃんのドッキリ大作戦」。イケメンの彼氏・公一郎(佐藤公一朗)が嵐のコンサートのチケットを取ってくれたと大喜びの女子高生・望(山出亜子)。羨ましくて仕方ない級友の加奈子(窪希乃香)は、望が机の上に置き忘れたチケットを隠してしまう。望が戻って来て大騒ぎになる。公一郎はあれほどイチャイチャしていたのに態度を豹変させ、望とはもう終わりだ、別れると怒り出す。一部始終を見ていた美樹(小林夏帆)は、携帯で占うフリをして場所を当ててみせる。すると、今度は公一郎から、先生が可愛がっていたパンダのぬいぐるみを盗んだと疑われて困っているのだが、占いでありかを探してほしいと頼まれる。断りきれなくなった美樹は、つい引き受けてしまう。

美樹が一人で頭を抱えていると、梅田(牛田莉子)が慌てて教室へ入って来た。実は先生の机の上が散らかっていてコーヒーをこぼしてしまい、パンダも汚れてしまった、と打ち明ける。怒られると思って家できれいに洗濯したが、騒ぎが大きくなり、返すタイミングを失った。ロッカーの中にあるので、自分が入れたことは黙っていて、と。それを聞いた美樹が再び場所を言い当てると、本当に見つかって一同びっくり。その後、占ってくれという依頼が殺到した美樹は、今さらすべてが嘘だったと白状もできず、とうとう転校してしまったという。

さて、文化祭で2本を語り終えた葛谷が帰り仕度をしていると、上田先生が姿を現わした。それは劇中劇でも先生を演じていた同じ役者なのだが、実は同好会の顧問だったという設定だ。二人の会話から、彼がこの2年半、ずっと一人で練習してきたことがわかる。そして、今日は最初で最後の高座なのに、観客が一人もいなかったことも。彼はなぜ十分な宣伝をしなかったのか。特に弁解はなかったが、答えは彼が作ったオリジナル落語にあると思った。最初の「ぐだぐだ」では、先生と生徒がお互いに不信感を募らせ合う。2本目の「美樹ちゃん…」でも、友人の幸せに嫉妬してチケットを隠したり、恋人に対して掌を返すように冷酷な態度を取る男子生徒も出てくる。こんなにトゲトゲしい世の中なら、彼が人間嫌いに陥るのも無理ないではないか。いや、本当にそうなのか。むしろ彼は、演目の中で現実のひどさを必要以上に誇張することにより、他者とのコミュニケーションを避けたがる自分自身を正当化しているだけではないのか。たとえそうだったとしても、彼が何とか一人で落語を作った経験は、自らの弱さを見つめ直すきっかけにはなったと考えられる。

現代の高校生にとって落語はマイナーなジャンルだと聞き、往年の人気ぶりを知る者としては少し驚いた。とは言え、今回の作品は、劇評というマイナーな分野にハマっている私自身にとっても、他人事ではなかった。親戚や近所の集まりなどで、劇評を書いていると言っても、なかなか理解してもらえない。ネットやSNSでも、その時々で盛り上がっているネタには一切興味がなく、そんなの誰も知らないよ、という細分化されたディテールばかりを詳しく書けば書くほど、「いいね!」の数も少なくなり…。これは私だけの問題だろうか。今の社会において、文化活動に励む者たちの多くが避けて通れないジレンマではないか。そうした中で、葛谷は、お客を集めるのが苦手だったとしても、自分の好きなジャンルにこだわり、妥協せずにやり遂げた。ある意味では彼こそ、自らの道を突き進むオタクたちにとって、模範とすべきヒーローかもしれない。

そこへ一人の新入生(土田莉緒)がもう終わったんですか〜という感じで現れる。彼女のため、と先生に勧められ、古典落語「芝浜」を演じることになった。エンディングは口パクのスローモーションだったが、女子生徒にウケている様子からみて、練習の成果を十分に発揮できたようだ。彼の努力がようやく報われ、こちらまで救われるような気持ちになった。

(以下は改稿前の文章です。)

6年目を迎える「かなざわリージョナルシアター2020げきみる」のトップバッターとして北陸学院高校演劇部が金沢市民芸術村ドラマ工房で上演した『私立まほろば高校落語研究同好会の輝ける歴史』(作・演出:井口時次郎)では、最初に噺家らしい和服姿の男子高校生・葛谷(松本青児)が登場した。落語の高座っぽい雰囲気なのだが、彼が語り始めた途端、スルスルッと引っ張られるようにして座布団ごと下手側へ追いやられてしまった。そして、真ん中の空間では、彼の書いた創作落語2本が劇中劇として演じられる仕掛けだ。息苦しい学園生活をテーマにした作品と思っていたら、最終的には落語オタクである主人公の生き方に対する問いかけへと収斂していくドラマ構造が面白かった。

創作落語の1本目「ぐだぐだ」は、現代文のテストで赤点を取った女子生徒4人が放課後に補習を受ける話だが、何やら様子がおかしい。上田先生(ウッドハムズ仁花)は芥川龍之介の「羅生門」を紙に丸写しさせた上で、隣の生徒と交換し、お互いに破り捨てさせたのだった。作家への敬意がカケラも感じられないやり方に対し、生徒たちは反発する。次の夏目漱石「夢十夜」は全員で手分けして何とか書き上げたが、樺山(那谷桃子)が向かいのコンビニで4人分をコピーしている間に先生が戻って来てしまい…。教育と呼ぶにはあまりにも不毛なイタチごっこは、無味乾燥な現実をことさらにデフォルメした悪夢のようだった。

次の演目は「美樹ちゃんのドッキリ大作戦」。イケメンの彼氏・公一郎(佐藤公一朗)が嵐のコンサートのチケットを取ってくれたと大喜びの女子高生・望(山出亜子)。羨ましくて仕方ない級友の加奈子(窪希乃香)は、望が机の上に置き忘れたチケットを隠してしまう。望が戻って来て大騒ぎになる。公一郎はあれほどイチャイチャしていたのに態度を豹変させ、望とは絶交だと怒り出す。一部始終を見ていた美樹(小林夏帆)は、携帯占いのフリをして場所を当ててみせる。すると、今度は公一郎から、先生が可愛がっていたパンダのぬいぐるみを盗んだと疑われて困っている。どこへ行ったか、占いで探してほしいと頼まれる。断りきれなくなった美樹は、つい引き受けてしまう。

美樹が一人で頭を抱えていると、梅田君(牛田莉子)が慌てて教室へ入って来た。実は先生の机の上が散らかっていてコーヒーをこぼしてしまい、パンダも汚れてしまった、と打ち明ける。怒られると思って家できれいに洗濯したが、騒ぎが大きくなり、返すタイミングを失った。ロッカーの中にあるので、自分が入れたことは言わないで、と。そのままの内容を美樹が伝えると、本当に見つかって一同びっくり。その後、占ってくれという依頼が殺到した美樹は、とうとう転校してしまったという。

さて、文化祭で2本を語り終えた葛谷が帰り仕度をしていると、上田先生が姿を現わした。それは劇中劇でも先生を演じていた同じ役者なのだが、実は同好会の顧問だったという設定だ。二人の会話から、彼がこの2年半、ずっと一人で練習してきたことがわかる。そして、今日は最初で最後の高座なのに、観客が一人もいなかったことも。彼はなぜ十分な宣伝をしなかったのか。特に弁解はなかったが、答えは彼の創作落語にあると思った。最初の「ぐだぐだ」では先生と生徒が不信感を募らせ合うイタチごっこ。2本目の「美樹ちゃん…」でも、友人の幸せに嫉妬してチケットを隠したり、恋人に対して掌を返すように冷酷な態度を取る男子生徒も出てくる。こんなにトゲトゲしい世の中なら、彼が人間嫌いに陥るのも無理ないではないか。いや、本当にそうなのか。むしろ彼は、演目の中で現実のひどさを必要以上に誇張することにより、他者とのコミュニケーションを避けたがる自分自身を正当化しているだけではないのか。

現代の高校生にとって落語はマイナーなジャンルだと聞いて少し驚いた。とは言え、今回の作品は、劇評というマイナーな分野にハマっている私自身にとっても、他人事ではなかった。親戚や近所の集まりでも、劇評を書いているなどと胸を張って言えたものではない。ネットやSNSでも、その時々で盛り上がっているネタには一切興味がなく、そんなの誰も知らないよ、という細分化されたディテールばかりを詳しく書けば書くほど、「いいね!」の数も少なくなり…。これは私だけの問題だろうか。今の社会において、文化活動に励む者には避けて通れないジレンマではないか。そうした中で、葛谷は、お客を集めるのが苦手だったとしても、自分の好きなジャンルにこだわり、妥協せずにやり遂げた。

そこへ一人の新入生(土田莉緒)がもう終わったんですか〜という感じで現れる。彼女のため、と先生に勧められ、古典落語「芝浜」を演じることになった。そこからは口パクのスローモーションだったが、女子生徒にウケている様子からみて、練習の成果を十分に発揮できたようだ。彼の努力がようやく報われ、こちらまで救われるような気持ちになった。彼こそは、すべてのオタクたちにとって、模範とすべきヒーローに違いない。
この文章は、2020年10月17日(土)17:00開演の北陸学院高校演劇部『私立まほろば高校落語研究同好会の輝ける歴史』についての劇評です。

 上手には、めくりがある。前方上手から下手まで、グレーのカーペットが敷かれている。その真ん中に座布団が一枚置かれている。後方には何も無い。この状態から『私立まほろば高校落語研究同好会の輝ける歴史』(作・演出:井口時次郎)は始まる。
 黄色い着物を着た男子生徒、葛谷(松本青児)が、ラジカセを持って登場する。これから始まるのは、落語研究同好会の高座だ。葛谷がめくりを一枚めくると、「ぐだぐだ」と書かれている。葛谷は客席に、貯金はいくらぐらいあるか、と振ってみせる。葛谷は話し続けているが、カーペットが下手へ引かれていく。彼は座ったまま移動し、下手端で止まる。声に出さず話している葛谷。舞台には4人の女子生徒が、それぞれ机と、それに重ねた椅子を持って登場する。

 樺山(那谷桃子)、麻生(吉井空)、本蔵(表美紅)、棚早(牛田莉子)、4人の女子生徒が、横に並んだ机についている。教師、上田(ウッドハムズ仁花)がテストで赤点を取った彼女達を叱り付けている。生徒達は反省のためにと、教科書の文章を写すように言われていた。上田の指示により、彼女達は書いてきた文章を取り出し、隣と交換する。その紙を引きちぎるようにと、上田は言う。せっかく書いたのにと四人は取り乱すが、仕方なく課題の紙を引きちぎる。これで終わりかと思いきや、上田はさらなる書き写しの課題を彼女らに与える。書いてもどうせちぎられる。無駄なことはしたくないと考える彼女達は、ある作戦を思い付く。

 無駄な努力はしたくない。でも書かないと怒られる。帰りたい。でも帰ると怒られる……そう嘆くばかりで、事は何も進まない。最終的に、彼女達は分担して文章を写し、人数分コピーしてくるという手段を取るのだが、その行動は失敗に終わる。「ぐだぐだですね」と葛谷が締めてこの話は終わる。この「ぐだぐだ」劇の最中も、下手で葛谷は喋り続けていた。目の前で上演されている劇が、葛谷の創作落語なのだ。

 二枚目のめくりを葛谷がめくると、「美樹ちゃんドッキリ大作戦」と書かれている。葛谷が喋っていると、舞台には加奈子(窪希乃香)と望(山出亜子)が登場している。望の恋人である公一郎(佐藤公一朗)が、嵐のコンサートチケットを当てたことを、望はチケットを見せびらかして自慢する。そこに美樹(小林夏帆)が戻ってくる。入れ替わるように、公一郎から電話をもらった望が教室を出る。望の態度が面白くない加奈子は、チケットをゴミ箱の下に隠してしまう。すると校内放送で加奈子が呼び出され、美樹一人になった教室に望と公一郎がやってくる。チケットがないことに気付き、公一郎は優しかった態度を急変させ、怒りだす。険悪な状況に耐えきれず、美樹は携帯電話占いでチケットを探す、と嘘をついてしまう。
 もちろん美樹は、チケットのありかを当てることができる。その力を信じた公一郎が、上田先生がなくしたパンダのぬいぐるみを探してほしいと頼む。断り切れずそれを受ける美樹。一人教室で困っていると、そこに梅田(牛田莉子)がやってきて、美樹にパンダを盗ったのは自分だと打ち明けた。上田先生の机が散らかっていたため、そこにあったコーヒーカップを倒して、パンダを汚してしまった。それで一度持ち帰って洗ってきたという。梅田の情報により、美樹はパンダの場所も当てることになる。その後、彼女の元には占いの依頼が殺到するのだが、本当は占いなどできない彼女は、その状況に耐えられなくなってしまう。

 二話目を終え、葛谷は落語研究同好会からの自分の引退と、自分一人しかいない同好会の解散を発表する。ラジカセから流れる拍手。ところが、舞台袖からも拍手が聞こえてくる。顧問の上田先生だった。途中から高座を聴いていた彼女は、面白かったと葛谷に言う。そして、他の人にも聴いてもらったらいいのに、と。彼の高座は、上田以外、誰にも聴かれていなかったのだ。毎日練習してきたのに、消極的に発表を行い、誰にも聴いてもらえない。それでいいのかと上田は問う。葛谷は一人でいいと返答する。諦めた上田が去ろうとした時、落語を聴きにきた女子生徒(土田莉緒)が顔を出す。

 結果、葛谷は上田と女子生徒二人のために「芝浜」を演じることとなる。出だしから噛んでしまう葛谷。それは、人を前にして演じる緊張感からのアクシデントだろう。一人なら平気でも、誰かの目があると違う。その戸惑いも含めて、人に話し伝えるということの醍醐味がある。上田に言われてしぶしぶ最後の高座を始めた葛谷は、そのことを実感してはいないだろう。しかし、人前での高座を終えた時に、失敗した点、もっと表現したかった点など、いろいろな後悔が生まれているだろう。聴いてくれた二人の反応にも、思うところがあるはずだ。そこから、葛谷にとっての本当の落語の研究が始まる。

 ぐだぐだと無為な時間を過ごしたり、小さな嘘がどんどん大きくなっていくのを止められなくなったり、実はたった一人で部活を行っていたりと、ままならない学生生活が描かれていたが、最後に希望が見えた。最後に訪れる希望を輝かせるために健闘した演者達、特に、観客は舞台中央を見ていて、誰も見てくれないかもしれないのに、ずっと端のほうで演じていた、葛谷役の松本の奮闘ぶりを称えたい。


(以下は更新前の文章です)


 前方上手から下手まで、細長いグレーのカーペットが敷かれている。その真ん中に座布団が一枚置かれている。上手には、めくりがある。後方には何も無い。この状態から『私立まほろば高校落語研究同好会の輝ける歴史』(作・演出:井口時次郎)は始まる。
 黄色い着物を着た男子生徒、葛谷(松本青児)が、ラジカセを持って登場する。これから始まるのは、落語研究同好会の高座だ。葛谷がめくりを一枚めくると、「ぐだぐだ」と書かれている。葛谷は客席に、貯金はいくらぐらいあるか、と振ってみせる。葛谷は話し続けているが、カーペットが下手へ引かれていく。葛谷は座ったまま移動し、下手端で止まる。話す振りをしている葛谷。舞台には4人の女子生徒が、それぞれ机と、それに重ねた椅子を持って登場する。

 四つ、横に並んだ机についている女子生徒4人、樺山(那谷桃子)、麻生(吉井空)、本蔵(表美紅)、棚早(牛田莉子)と、立っている教師、上田(ウッドハムズ仁花)。生徒達は教師から、高校1年1学期の現代文で赤点を取ったことを叱られている。彼女達は反省のためにと、教科書の文章を写すように言われていた。それぞれが書いてきた文章を取り出し、隣と交換する。それを引きちぎるように上田は言う。せっかく書いたのにと四人は取り乱すが、仕方なく課題の紙を引きちぎる。これで終わりかと思いきや、上田はさらなる書き写しの課題を彼女らに与えるのだ。書いてもどうせちぎられる。無駄なことはしたくないと考える彼女達は、ある作戦を思い付く。

 ここから物語は「ぐだぐだ」になっていくのだが、書いてもちぎられるという設定が理不尽であるため、その印象が強く残ってしまう。理不尽に抵抗する生徒達の姿も当然と思え、「ぐだぐだ」感は弱く感じた。
 この「ぐだぐだ」劇の最中も、下手で葛谷は喋り続けている。目の前で上演されている劇が、葛谷の創作落語なのだ。

 二枚目のめくりを葛谷がめくると、「美樹ちゃんドッキリ大作戦」と書かれている。葛谷がしゃべり、自分でラジカセのスイッチを入れ、爆笑する音を流して落語を進行させていると、舞台には加奈子(窪希乃香)と望(山出亜子)が登場している。望の恋人である公一郎(佐藤公一朗)が、嵐のコンサートチケットを当てた。望はチケットを出して自慢する。そこに美樹(小林夏帆)が戻ってくる。入れ替わるように、公一郎から電話をもらった望が教室を出る。望の態度が面白くない加奈子は、チケットをゴミ箱の下に隠してしまう。すると校内放送で加奈子が呼び出され、美樹一人になった教室に望と公一郎がやってくる。チケットがないことに気付き、公一郎は優しかった態度を急変させ、怒りだす。険悪な状況に耐えきれず、美樹は携帯電話占いでチケットを探す、と嘘をついてしまう。
 もちろん美樹は、チケットのありかを当てることができる。その力を信じた公一郎が、上田先生がなくしたパンダのぬいぐるみを探してほしいと頼むのだ。断り切れずそれを受ける美樹。一人教室で困っていると、そこに梅田(牛田莉子)がやってきて、美樹にパンダを盗ったのは自分だと打ち明けるのだ。

 この二話目を終え、葛谷は落語研究同好会からの自分の引退と、自分一人しかいない同好会の解散を発表する。ラジカセから流れる拍手。ところが、舞台袖からも拍手が聞こえてくる。顧問の上田先生だった。途中から高座を聴いていた彼女は、面白かったと葛谷に言う。そして、他の人にも聴いてもらったらいいのに、と。ラジカセで拍手や歓声を流していた葛谷の高座は、上田以外、誰にも聴かれていなかったのだ。毎日練習してきたのに、消極的に発表を行い、誰にも聴いてもらえない。それでいいのかと上田は問う。葛谷は一人でいいと返答する。諦めた上田が去ろうとした時、落語を聴きにきた女子生徒(土田莉緒)が顔を出す。

 結果、葛谷は上田と女子生徒二人のために「芝浜」を演じることとなる。出だしから噛んでしまう葛谷。それは、人を前にして演じる緊張感からのアクシデントだろう。一人なら平気でも、誰かの目があると違う。その戸惑いも含めて、人に話し伝えるということの醍醐味がある。上田に言われてしぶしぶ最後の高座を始めた葛谷は、そのことを実感してはいないだろう。しかし、人前での高座を終えた時に、失敗した点、もっと表現したかった点など、いろいろな後悔が生まれているだろう。聴いてくれた二人の反応にも、思うところがあるはずだ。そこから、葛谷にとっての本当の落語の研究が始まる。
 
 葛谷の小さな成長と共に、上田の印象の変化も、二つの創作落語と終了後のエピソードで表現されていた。「ぐだぐだ」では理不尽な暴君だが、「美樹ちゃん」では自分の非を認め、最後には、生徒を激励する姿を見せる。先生とはこのような人物であってほしいという理想像が見えた。
 ぐだぐだと無為な時間を過ごしたり、小さな嘘がどんどん大きくなっていくのを止められなくなったり、実はたった一人で部活を行っていたりと、ままならない学生生活が描かれていたが、最後に希望が見えた。最後に訪れる希望を輝かせるために健闘した演者達、特に、観客は舞台中央を見ていて、誰も見てくれないかもしれないのに、ずっと下手に居て喋っているふりをしていた葛谷の奮闘ぶりを称えたい。
ありがたいことに、「劇評講座、興味あるんだけど…」というお話を何人かいただいているんですが、やはり劇評という言葉が敷居が高いようで受講を迷っている方もいらっしゃるようです。

そこで、今回は「劇評講座Q&A」として、ソボクなギモンにお答えしてみようと思います!

Q1)
そもそも、「劇評講座」ってなにするの?


A1)
講座の流れは以下の通りです。
①受講生と講師が同じ舞台を観劇する。(基本土曜夜の公演)
②観劇後すぐに感想を話し合う。
③翌週の水曜日までに劇評を書く。
④土曜日に講師からアドバイスを受けて、劇評をこのブログにアップする。

ポイントは「みんなで観て、話して、そして自分で書く。」ことです。


Q2)
今年の10作品全部を観て劇評書かないといけないの?


A2)
今年は10作品のうち、観たい(書きたい)作品を選んで参加する方式になっています。しかも受講料6,000円の内訳は基本料3,000円+観劇料3,000円となっているので、4本以上観劇するとオトクになるシステムなんです!
ただし、チケット予約は各自で行ってもらうので、売り切れ注意!お早めにお願いします。


Q3)
今年はweb配信の公演もあるんですよね?そういう場合はどうするの?


A3)
web配信の公演については、時間を指定してそれぞれご自宅などで視聴していただきます。その後、zoomで感想シェアを行います。
また、講師アドバイスのみをzoomで行う場合もあります。


オンラインで行われる講座については以下の通りです。
(募集チラシの裏面をご参照ください)
第3週の「Project=A Night of Parricides」はドラマ工房で観劇し翌週の講師アドバイスはzoomで行います。
第4週の「星稜高校演劇部+星の劇団」はweb配信で観劇し翌週の講師アドバイスは芸術村で行います。
第7週の「チロルマーケット」はドラマ工房で観劇し翌週の講師アドバイスはzoomで行います。
第8週の「劇団情熱劇場」はweb配信で観劇し、翌週の講師アドバイスもzoomで行います。
第9週の「ネ・プロミンテ」はweb配信で観劇し翌週の講師アドバイスは芸術村で行います。
第10週の「劇団羅針盤」はドラマ工房で観劇し翌週の講師アドバイスはzoomで行います。


Q4)
観劇したけどどうしても劇評が書けない!という場合はどうしたらいいの?


A4)
もちろん原則的には必ず劇評を書いていただきブログにアップしていただきますが、あくまで講座ですのでどうしても書けない場合はその限りではありません。
出来る限り書いたものを講師に読んでもらい、ブログアップは行わないというケースもあり得ます。
受講生の方と相談しながら臨機応変に進めていくことになります。

Q5)
ブログアップは匿名でもいいの?

A5)
ペンネームによるブログアップもOKです。
ただし、劇評を書く側の責任としてペンネームは今回の講座の間は同じものを使用する(固定ハンドル)ことを条件としています。

Q6)
初回の「プレレクチャー」は必ず受けなきゃいけないの?その日はどうしても予定があわないんですが。


A6)
初回のプレレクチャーでは、劇評に関する概論や著作権に関する内容など講座受講に際して必修の内容なので、全員必ず受講をしていただきます。
どうしても予定が合わないという方には、オンライン参加や動画配信も検討しますのでご相談ください。


以上、長文失礼しました。
その他、わからないことなどありましたら遠慮なくdramakoubou@gmail.comまでお問い合わせください。





 
2019年度実施
うんダンスぷらうる『生・遊・萎(うまれる・あそぶ・しほれる)』劇評は以下の4本です。
みなさんぜひお読みください!

【うんダンスぷらうる『生・遊・萎(うまれる・あそぶ・しほれる)』】
タシデレ「なぜ彼女たちはノースリーブをまとうのか」
中村ゆきえ「自由な表現を楽しむ」
原力雄「限りある生命を意識しながら、愛を叫ぶ」
大場さやか「立ちのぼる個性」