家へ帰ったら彼から『話がある』と言われた。あたしは彼の話を聞いて居た…『こんな時に不謹慎だけど結婚しよう』と。あたしは親父への最高のプレゼントだと想い嬉しく即答で返事をした。今になれば彼は彼で職場の人達から『もう年貢の納め時じゃない??』と言われて居たみたいで決断をしたらしい…あたしは理由はどおあれすばらしい報告が出来ると次の日病院へ行った時意識の無い親父に『結婚決まったよ』と耳元で報告した…『幸せになるからね…』と。親父と逢えるのは2、3時間待たされてもたかが5~10分。毎日それを繰り返していた。でもあたしは彼と幸せになる為に少しずつ歩き始めた…
どの位経ったのだろう…手術が終わりICUへ入った。手術は成功したけれど後遺症などが残る可能性は高い、と言われた…あたしは考えていた。何をしてあげれただろう…勝手に家を飛び出し男を戒めて今あたしは何をしてるのか…でも親父には『自慢の兄貴』が居た。学中の時は荒れて仕方なかった兄貴も親父の為に親父の憧れの仕事に就いた。障害者の子供でも自慢出来る兄貴が居た…それが救いだっただろう。あたしは兄貴とは仲がかなり悪かったから唯一兄貴に親父は任せていた。あたしはめったに口を聞かない兄貴に『彼も来たがってるから呼んでも良いですか??』と聞いたら『結婚もしないでだらだら暮らしてる男は家族ではないから無理だ。お前さえ呼びたくなかった』と言われた。当たり前だよね。あたしは子供であっても子供でない腐った女になっていた…彼に連絡をして手術は無事終えた事を伝えたが兄貴の言葉は言えなかったから『家族しか今は無理みたい…』としか言えなかった。それでも待合室まで行きたい、とは言ってくれたけどあたしは彼を傷つけない様に断り『落ち着いたら帰るね』とだけ伝えた…
親父が倒れた、との連絡ですぐに病院へ向かった…家族だけ呼ばれ暗い部屋で脳に腫瘍があり、『今点滴している薬が体の中で受け入れられたら明日手術に入ります。無理であれば諦めて下さい』との事だった…あたしは何が何だか解らずその日は病院へ泊まり次の朝を迎えた。手術が出来ると言う事だった。ただ成功するかは解らないから油断は出来なかった。意識のない親父にあたしと母は手術室まで付き合うと突然おやじが目を開けた時、母はあたしの手を払いのけ親父に『頑張れ!!』と声をかけていた。そのまま親父は目を閉じ手術室へ行った…あたしはなんだかこんな時に想うのも変だけど『愛』をあたしは感じた…何だか不思議だけど母の愛をすごく感じた…あたし達は手術が終わるまで会話はしなかった…