NO.2882 現在は倒産・移管されている元会員制バス「YOKAROバス」、運行開始から末期まで | コウさんのコウ通大百科 PART3

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(平成24年1月〜平成30年3月の記事はPART2の内容です)

 

 

 現在、長崎県平戸市~福岡県福岡市間を結ぶ高速路線バスとして、さつき観光が運行します「さつきHighway」と呼ばれるバスが運行されている事は、ご覧の皆様もご存知の方がいらっしゃるのではないかと思います。
 
 この「さつきHighway」とは、この後ご紹介します高速路線バス事業者の倒産に伴います後継事業者として運行されているのものでありまして、運行本数は2往復によって運行されております。
 
 停車地は(緑字は前事業者時代からの停車地)・・・
 
 平戸大垣(ドラッグストアモリ前)平戸桟橋(画像2)~平戸新町~平戸物産館前~平戸大橋公園前~平戸田平(平戸口)~平戸市役所田平支所前~御厨駅前松浦(松浦文化会館入口)~今福(今福交通待合所)伊万里黒川~伊万里名村団地 ~生駒(唐津)~今組~唐津(おさかな村)~博多(ハーツバスステーション博多)
 
 (伊万里黒川バス停)
 
 (唐津(おさかな村)バス停)~ここで休憩も行います
 
でありまして、「さつきHighway」移行後に黒字の停車地が追加されております。それほど沿線の利用者が利用しやすくしている事を伺わせているようでもあります。尚、今年5月よりこれまでのキャナルシティ博多からハーツバスステーション博多に変更されておりますし、今後は佐賀県唐津市内の停車地として東唐津駅も追加申請がなされております。
 
 使用されております車両は、前事業者からの流れで小型車両が使用されておりまして、上の画像・以下画像の日野レインボー(佐世保200あ・131、日野KC-CH1JFAA)や日野リエッセ、三菱ローザと言った車が使用されております。やはり、需要はそれほど多くはない事もありまして、こう言った車両で賄う程度である事も伺わせている事もわかるのではないでしょうか。
 
 (日野リエッセ、佐世保200あ・128、KC-RX4JFAA)
 
 
 さて、さつき観光「さつきHighway」に変わりまして運行が継続されております平戸~福岡間の高速路線バスでありますが、元をたどりますと会員バスとして運行されていたものが始まりでありました。今回はこのバスの運行開始時から倒産時までの姿を皆様にご紹介してまいります。
 
 
 それが、令和元年8月まで運行されておりました「YOKAROバス」でありまして、約10年間にわたりまして運行されておりました。
 
 
 この「YOKAROバス」とは、平成21年に福岡市から長崎県平戸市間におきまして、地元事業者でありました旧平戸バスの運行によりまして始まったのが始まりとされておりまして、当初は平戸観光協会が福岡からの観光客誘致のために年会費3000円を支払いまして、その期間ならば何度も乗車できる会員制バスとして運行されておりました。
 
 所要時間も、西九州自動車道(福岡前原・唐津道路)を経由する事から、以前昭和自動車(昭和バス)・西肥自動車(西肥バス)が運行しておりました平戸・平戸口~唐津~福岡間快速特急よりもかなり早くなった事などから利用者が急増しまして、平成22年9月の期間終了後にも、社団法人「YOKARO」に運営を引き継がれる形で翌10月より引き続き運行を継続するに至りました。
 
 (初代福岡~平戸用、佐世保200か・360、日野KC-RU3FSCB)~すでに事故により廃車
 
 
 「YOKARO」に引き継がれますと、運行区間が大きく拡大してまいりまして、運営会社も「SOUDA(早田)が担う事になります。平成23年以降には以下にありますように、大分県竹田市などに事務局を置いた事もありまして、運行区間が徐々に拡大しまして、以下のコースにまで運行コースが広がっておりました。中には、熊本県小国町の黒川温泉や、宮崎県高千穂町にまでコースを広げておりまして、九州を代表する会員制ツアーバスにまで成長しまして、年会費4000円で以下のコースに乗り放題となっておりましたし、会員特典も各地で行うようになりました。

 博多駅筑紫口~松浦・田平・平戸(22年10月~)
 博多駅筑紫口~黒川・久住・竹田(23年4月~)
 博多駅筑紫口~由布院・臼杵(23年7月~)
 博多駅筑紫口~山鹿・菊池・阿蘇(23年10月~)
 博多駅筑紫口~嬉野・有田・佐世保・平戸(24年1月~)
 博多駅筑紫口~グランメッセ熊本・熊本空港・高森・高千穂・竹田(24年4月~)
 博多駅筑紫口~長崎空港・諫早・小浜(24年7月~)
 博多駅筑紫口~伊万里・佐世保・西海橋・ハウステンボス(25年1月~)
 
 (かつて存在した竹田事務局)~竹田温泉「花水月」内にありました
 
 (長崎空港停車時、佐世保200か・450、日野U-RU2FTAB)~ツアーバス時のためバス停はなし
 

 これら8コースが存在しておりましたので、発着地でありました博多駅筑紫口には、画像のように「YOKAROバス」の姿を見る事ができておりました。しかも、各路線とも1日2往復で運行されておりまして、博多駅到着・発車が同時発車でもありましたので、このような姿は必ず1日2回見る事ができるようになっておりました。
 
 (佐世保200か・384、日野U-RU2FTAB)
 
 (博多駅筑紫口到着シーン)
 
 
 最盛期でもありました、この頃の乗車案内のシーンであります(平成25年夏撮影)。乗車案内は、筑紫口駐車場前のコンビニの所で行われておりまして、この撮影時は非常に暑かった事もありまして、水分補給を積極的になさるような注意も述べられている姿が印象的でもありました。
 
 それにしても、上の画像からも老若男女、多くの方がいらっしゃる事がわかるのではないかと思いますが、この頃には会員が最高で7万人もいらっしゃっておりましたので、各ルート利用者が多かった事もわからなくはなかったでしょうか。
 
 また、案内に関しましては画像のようにどの車がどこ行きかを表す札が用意されておりまして、その札を頼りにその下の画像のように多くの乗客が車へと向けて移動するようになっておりました。実際これでどこ行きかがわかるようにはなりますが、先述のように同じような車ばかりが並んでいる事を思いますと、こういった札も必要であった事もわかるのではないかと思います。
 
 (行先を表す札)
 
 (乗客が車へ移動)
 
 
 こうして、順次バスが各地へ向けて再び発車して行きます。それにしても、「HIRADO BUS」あれば「YOKARO BUS」もあった訳ですので、改めて使用されている車が多かった事を実感する所ではなかったでしょうか。
 
 (高千穂方面、大分200か・514、日野U-RU2FTAB)
 
 (ハウステンボス方面、佐世保200か・450、日野U-RU2FTAB)
 
 
 しかし、この間には高速ツアーバスの事故が群馬県の関越自動車道で起きておりまして、この事故では死者・負傷者を出す大惨事の事故となっておりましたため、そう言った事もありまして、この「YOKAROバス」も該当しておりました高速ツアーバスは廃止となりまして、平成25年8月には路線化へと至る事になりました。
 
 
 路線化時には、発着場所が博多駅筑紫口駐車場から画像のキャナルシティ博多に変更されまして、路線化と言う事でバス停も設けられました。それに伴いまして、路線は8路線全てが継続されましたが、年会費は年間5000円に値上げしまして運行継続へと至る事にもなりました。また、キャナルシティ博多のバス乗場の所には福岡事務局も設けられておりまして、ここで乗車券の発券も行われておりました。
 
 (キャナルシティ博多)
 
 (バス停&時刻表)
 
 (キャナルシティ博多内に設けられた事務局)
 
 また、それ以外の所でもバス停を設けられておりまして、こう言った所からも路線化している事が伺わせておりました。ちなみに、以下画像にありました長崎空港バス停に関しましては、従来の長崎空港発着の路線バス停枠の外側にバス停を設けられてもいまして、他の事業者とはかけ離れた姿も見られておりました。
 
 (長崎空港バス停)
 
 (佐世保200か・478、日野U-RU2FTAB)
 
 (唐津バス停)~「マリンセンターおさかな村」内~現在は上の画像です
 
 (佐世保200か・460、日産デKC-RA531RBN)
 
 
 使用車両に関しましては、高速ツアーバス時代の車両が引き続き使用されておりまして、当時は上の画像のKC-規制の日産ディーゼルスペースアローが最も新しかったですが、そんな中でも画像のU-規制の日野セレガを中心に運行されておりました。その日野セレガ自体も、この頃でもう20年前後になる車ばかりでありましたので、高速でも黒煙を出す姿も見る事もあったほどでしたし、エアコンなど故障する車さえも見られていたなど老朽化が見られていた時もありました。
 
 (佐世保200か・485、U-RU2FTAB)~伊万里・佐世保・ハウステンボス線運行時
 
 (佐世保200か・478、U-RU2FTAB)~長崎空港・諫早・小浜線運行時
 
 (佐世保200か・384、U-RU2FTAA?)~松浦・平戸線運行時
 
 
 また、使用車両の中には、マイクロバスも1路線において使用されておりまして、以下画像の日野リエッセII(大分200あ・155)と言った車両が、グランメッセ熊本・熊本空港・高森経由の高千穂線で使用されておりました。
 
 ちなみにこの車は、平戸バス時代(佐世保200あ・114)は平戸島で病院の送迎用として使用されていた車であったとの事でありましたが、そう言った車がマイクロバスで運行されていた訳でもありましたので、まさに大型あれば小型もあった事も伺わせていた姿でもありました。
 
 
 こうして、「YOKAROバス」も利用者に関しましては会員制と言う事もありまして好調を維持しておりましたが、大分・熊本・宮崎県内の路線を中心に、折り返し時間が短い事が指摘を受けておりましたし、路線化に伴う運行コストの増大に対応できなくなってきておりました
 
 それによりまして、私的整理による経営再建に踏み切る事になりまして、資産の売却などで経営再建に踏み切るなどの動きも見せておりました。そして、運営会社名も「SOUDA」から「YOKARO」に変わりましたり、社長まで交代するなど、変化も見られておりました。
 
 
 けれども、その後も資金繰りの悪化の歯止めにかかる事はできず、乗務員の給料不払いも発覚しましたし、それとともに乗務員不足が見られておりましたマイクロバス運行路線の高千穂線の運休を皮切りに、原点の平戸線を除く他6路線も運休となりました。
 
 

 そして、平成26年10月には従業員組合YOKAROバスユニオン(その後さらにY・B・Uに社名変更)によりまして会員制高速バス事業と貸切バス事業をYOKAROより継続しまして、運休7路線の運行再開へと至るよう再建へ進むようになりました。

 

 その結果、平成27年に佐世保・ハウステンボスへの路線が再開されておりましたが、翌平成28年に再び運休となりまして、原点の平戸線のみが運行されるに至っておりました。また、長らく続けてまいりました会員制もその平成28年に募集が終了しておりまして、これによりまして会員制乗り放題としての制度は姿を消しました。

 

 (運休時の佐世保バス停)

 

 

 「YOKAROバス」としての末期時の運行ルートは以下の通りでありまして、冒頭の「さつきHighway」時としますと停車地が少ないのがわかります。運行本数は平成25年の7路線運休時には1往復まで減便されておりましたが、のちに3往復まで回復しておりました。また、運行区間も「伊万里湾大橋」を経由する事もありまして、佐賀県伊万里市の途中停車地に黒川に停車するなど変化も見られておりました。

 

 平戸(平戸桟橋)~平戸口~御厨~松浦~今福~伊万里黒川~唐津(マリンセンターおさかな村)~博多(キャナルシティ博多)

 

 (平戸桟橋ターミナル)

 

 尚、運賃は平戸~福岡間で3000円となっておりまして、乗合化の非会員時運賃1500円としますと倍の運賃となっておりました。

 

 使用車両は、現在のさつき観光に移管されている車両がこの当時から使用されておりまして、多客時以外は小型車両を使用されるようになりまして、日野レインボーや三菱ローザ、日野リエッセ、トヨタコースターと言った車両が使用されておりました。かつては、上の画像にありますように大型車両が主に使用されていただけに、小型車両が使用されるようになった事はそれだけ需要が減った事を思えば致し方ない所ではなかったでしょうか。

 

 (日野レインボー、佐世保200あ・131)~「YOKARO」時代

 

 (三菱ローザ、佐世保200あ・125)~現在もさつき観光に在籍

 

 

 そういった事から、利用者はピーク時よりも大きく減少しておりまして、利用者は数名で運行される機会が多く見られておりました。やはり、運休期間もあったりしておりましたので、そう言った事から利用者離れもありまして小型バスで運行される割合も多くなってしまっていた事も伺わせておりました。

 

 

 そして、「YOKAROバス」は令和元年8月25日の運行を最後に終了、翌8月26日からは冒頭ご紹介しましたさつき観光運行の「さつきHighway」に移管されまして現在に至っておりますが、使用車両は小型車両でも、停車地を増やすなどして経営努力を見せております。やはり原点の路線は姿を消してはならないと言う思いがあるようですし、一時期「新型コロナウイルス」による運休時はありましたが、2往復での運行は見られております。

 

 (「さつきHighway」に移管直前の佐世保200あ・128)~令和元年8月23日撮影

 

 

 現在、この「さつきHighway」は、大島・度島フェリーとも接続しておりますし、日によって運行時間が異なっております。ただ、これまでのキャナルシティ博多からハーツバスステーション博多に福岡地区の発着場所を変更しておりますが、折り返し時間が約15分しかなく、正直これまでの「YOKAROバス」みたいに短くて大丈夫なのか気になる所ではあ

ります。

 

 

 今回は、九州各地に運行されておりました「YOKAROバス」に関しましてご紹介しましたが、この10年間は、会員制バスとして運行されていた頃は各地へ年会費を払えば利用できる事もありまして魅力的なバスと言う印象さえも感じさせられていたものでしたが、路線化後に明らかになった資金繰りの問題、そして安全性の問題など後半はいい印象ではなかったのではないかと思ってならなかったでしょうか。それでも、原点となります福岡~平戸間の路線を残した事は、公共交通機関では乗り換えなしで行けるという所が良かったように思いますので、今後も利用者の足としての姿を見せていただきたいものであります。