昨年の令和3年労働災害発生状況の数値(2月時点の速報値で、まだ確定ではない暫定値)を見ると、
建設業だけではなく全産業の休業4日以上の被災者(仕事上のケガが理由で4日以上休んだ方)が143,156人おり、そのうち約2割を占める「転倒災害」の被災者は32,180人いた。
その前の3年もほぼ毎年3万人を超えており、ざっとした数字だが日本では毎日毎日80人以上が仕事中に転倒してケガをし4日以上休む事態となっているのである。
想像しがたい数字だが、データを見る限りそれだけの数の事故が起きているのが事実だ。
昨年の計32,180人のうち建設業は1,607人。
他の業種の数と比較してみよう。
製造業が5,125人、陸上貨物運送事業が2,731人、以前事故が多いと紹介した小売業
が5,645人、そして一番多い保健衛生業が5,680人。
数だけ見ると、足元が悪い箇所や、冬季は雪や凍結箇所での作業が多い建設業のこの数字の少なさは、かなり事故防止にがんばっていると思う。
詳しい状況は分からないが、建設業に比べるとフラットな床の上で仕事をしていそうな業種でもこれだけの数の方が被災されているのは驚きである。
しかも、この数は年々増加傾向にある。
厚生労働省の公開データで調べると、平成23年からの転倒災害による休業4日以上の被災者数のグラフがこちら。
明らかに年々増えている。数でいえば10年で2.6万人が3.2万人になった。
単純にこの増加の原因を想像すると、仕事をする人の高齢者率が上がったということだろうか。
こうした状況が続いているため、厚生労働省は「STOP!転倒災害プロジェクト」というものを推進しているところだ。
「重機に注意」とか「高所作業は危険」というのは認識しやすいが、「転ぶ」というリスクはあまり実感しにくいというのが本質的な原因だと私は思う。
「転ばぬ先の杖」意識を持ってもらう必要があろう。