表と裏。
表があるから裏がある。
裏があるから表がある。どちらか一方があれば必然的に反対の一方も存在し、表裏一体という言葉は、まさに、と感じずにはいられない。
冬眠から目覚め、いよいよまた、街中が賑やかになる川越の春を迎える。
川越の春と言えば、「小江戸川越春まつり」です。
川越の春の恒例行事、小江戸川越春まつりは、1ヶ月以上に及ぶ長期にわたって開催され、期間中、毎週のように市内各地で春まつり併催事業が行われて春の川越が盛り上がります。
「(公社)小江戸川越観光協会 第29回小江戸川越春まつり」
http://www.koedo.or.jp/event-info/
2018年3月31日(土)には小江戸川越春まつりオープニングイベントで巨大春イベントの火蓋が切って落とされると、同日には一番街商店街で「小江戸川越江戸の日」などの事業で盛大なスタートを切りました。
そして翌4月1日(日)、こちらも春まつり併催事業として開催されたのが、
「きもの姿で路地裏散策」。
『旧赤間川の桜や川越の古寺眠る川越に生きた先達を訪ねます。』
13:00~15:30
川越まつり会館で集合後、市内を散策
主催:川越の街にきもの姿を増やす会
その名の通り、着物姿で川越の街の路地裏を歩こうという企画で、この時季らしい桜も楽しみながらの散策になりそうでした。
川越の人は地元のことを愛し、かつ良く知っているので、いわゆる観光スポットとされる市内の目ぼしい場所はもう全身に沁みるほど体験済み。と比べて、この路地裏散策が好評だったのが、定番コースを巡るのとは違う一面の川越が見られそうというコース設定があげられます。
川越の街にきもの姿を増やす会の代表も、サポートする面々も、ディープな川越人であり、一般的な川越散策とは違う切り口の提案から期待が高まり、50人ほどの参加者が集合場所の川越まつり会館に集まっていました。50人もの着物姿の光景は壮観そのものです。
主催は、川越の街に着実に着物姿を増やしている、川越の街にきもの姿を増やす会。
「川越の街にきもの姿を増やす会」の代表の和裁士の小杉亘さんは、川越市が委嘱している小江戸川越観光親善大使の一人であり、川越で着物と言えばという時に必ず名前が挙がる人であるので、川越で着物の世界を深めたいと思ったら覚えてもらいたい人
川越市 小江戸川越観光親善大使
『「小江戸川越」を全国へPRしていただくため、川越市のイメージアップのために活動している民間団体及び市民の方を「小江戸川越観光親善大使」として委嘱しています。』
https://www.city.kawagoe.saitama.jp/smph/welcome/kanko_ta/shinzentaishi/kankoshinzentaishi.html
川越の街にきもの姿を増やす会としての活動は、毎年正月の恒例行事となっている「小江戸川越 着物で七福神めぐり」のことは1月に伝えています。正月に川越の七福神巡りに参加するのは川越の正月の風物詩にもなっており、着物姿でみんなで周ろうという主旨で毎年開催しています。今年も大勢の参加があり、和気あいあいとした雰囲気で七福神巡りを通して一年の幸先の良いスタートを切ったのでした。当時を振り返ると、装いがまさに冬で、今との変化を見るのも季節を感じられて楽しい。
(「小江戸川越 着物で七福神めぐり」2018年1月7日川越の街にきもの姿を増やす会
https://ameblo.jp/korokoro0105/entry-11743807331.html)
また、この後、川越の街にきもの姿を増やす会のメンバーが2018年3月31日の一番街商店街の「小江戸川越 江戸の日」に関わり(つまりきもの姿で路地裏散策の前日、二日続けて川越は着物姿に染まりました)、通りで行われる催しの一つである、「わらべ唄」のまとめ役を担当していました。これももちろん、江戸の日ということで着物姿で、川越にちなんだ唄を一番街の各所で披露しました。
(「一番街商店街 春夏冬 二升五合市」 第三回小江戸川越 江戸の日
https://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12365484626.html)
江戸の日には、川越の街にきもの姿を増やす会の面々がお客さんとして遊びに来ていたり、代表の小杉さんも訪れていました。川越に着物姿の人が増えているのは、蔵造りの町並みの一番街がまさに着物姿が似合うことがあげられますが、そうしたハード面のみならず、ここに一番街商人のもてなすというソフト面の「人」の魅力も加わった相乗効果が、江戸の日。
江戸の日が出来たことで、着物姿で出かける催しが増え、着物文化の幅が広がったのは確か。催しが増えたという以上に川越的に強力な催しである江戸の日が誕生したことで、江戸の日が川越の街に着物姿を促してこれからさらに着物姿の人が増えていくと思います。
川越は着物姿が似合う街。
川越の着物散策は、蔵造りの町並みの一番街通りを中心にしてというのがまず定番。
しかし。
川越の町に精通している人からすると、それはまだまだ導入で、川越の魅力は底知れないものがある。特に川越は元来城下町であり、その特性ゆえに町中に細道、脇道、裏道がまるで毛細血管のように縦横に張り巡らされているのが特徴。
メイン通りにある表の表情と裏通りにある裏の表情の二つを共存させているのが川越。そしてそれぞれに形成される文化は異なり、華やかな表通りとは別に、裏の道々にも独特な文化を作ってきました。
(時代が下った現代の話しをすると、城下町川越の古くからの「裏道文化」は街のDNAとしてしっかり受け継がれて、今の時代になって川越の裏道カルチャーである「うらかわ」が発展しているのは、決して偶然ではなく、川越の歴史を紐解けば川越なら起こりうる現象でもありました。)
川越の街にきもの姿を増やす会として、川越の歴史を踏まえ、今の感覚で新たな、しかし古くからある「路地裏」に光を当て魅力を発掘しようと発案したのが、「きもの姿で路地裏散策」。
単に路地裏散策ではありません、肝はあくまで、きもの姿でなのです。
今の時代は、着物はハレの日の服装で、気合を入れて着るものになっているので、人情として表通りを悠々と歩きたくなるのはあるでしょう。そこをあえて避けて、着物姿で路地裏。
大胆な発想であり、川越と着物の可能性を信じるがゆえの試みで、川越の着物文化を真に豊かにする挑戦でもありました。
路地裏はまさに「素」の川越。
この切り口が小杉さんらしく、誰の目から見える魅力だけではない、隠れたところで静かに時を刻み続けて遺されている魅力も川越であり、川越の奥深さを発信しようとしました。
散策コースマップを見れば、路地裏散策が独特であることは一目瞭然。
・まつり会館前13時発
・見立寺 紅顔の美少年の赤穂義士、矢頭右衛門七(やとうえもしち)の妹の墓。はぜ川越に?
・大蓮寺 藤田貞陸の墓。
・広済寺 中島孝昌(武蔵三芳野名勝図絵の作者)の墓
・旭舎(あさひやの)文庫
・東明寺 河越夜戦跡
・真行寺 今も人気の土方歳三の写真を持ち帰った渡辺一造の墓。なぜ川越に?
・田谷堰、道灌橋 赤間川沿いに桜を見ながら歩く
・宮下町の路地 幕末の城下図では氷川通りとその北側に20軒以上の侍の屋敷地
・川越氷川神社
中央を南北に貫くのが一番街通りで、一般的な川越散策はここを基点にすることが多い中で、今回の散策はことごとく定番から外れている。。。
集合地点こそ川越まつり会館ですが、そこからすぐに路地裏に入り、路地裏から路地裏へ縫うように進んで行こうとするコース。特に赤間川・新河岸川が今回のポイントとなっていて、川沿いのスポット、川沿いを進む行程が織り込まれました。
中心市街地をぐるりと取り囲むようにして流れている穏やかな赤間川・新河岸川は、川越を知る上では外せないもの。
路地をメインに、行く場所は川越の歴史的スポットが選ばれ、意外な事実含めた詳しい案内も楽しい。
大人数での散策とあって、開催にあたっては小杉さんをサポートする会の面々が、事前にコースの下見を重ねて安全面を考慮しました。みんなで歩くのは楽しいことですが、一方で大勢で歩くと安全面がおろそかになりがち。路地裏だけなら人や車の往来は少ないですが、路地裏から時折表通りに出たりし、そのギャップが人の意識がついていけなかったりする。新河岸川沿いなど川に気を取られて実は車の往来が多い道もあちこちにある。ここではどんな事が起こるか、起こり得る事を想定しながら散策の運営を段取りしていったのでした。
七福神巡りにしても路地裏散策にしても、当然と言えば当然ですが、こうした段取りに裏打ちがあって開催しているのが、この会の散策の特長でありました。
川越まつり会館を出発した一行は、路地裏散策らしく、一番街通り・・・ではなく、まつり会館裏側の路地を進んで行く。良く知られた道だけでなく、細道が縫うようにして張り巡らされている。細道から細道へ、時々メイン通り、そしてまた細道へ、そんな歩き方もできるのが川越。
静かな細道にもメインストリートと同じだけの時間の積み重ねがあり、歴史が作られている。手つかずという意味で素の川越があり、そんな川越をそっと愛でるように歩くのがこの路地裏散策でもありました。
まつり会館の路地裏に、小さな稲荷神社があるなんて、一般的な観光客は絶対に知らない。
まつり会館裏側から養寿院の門前通りへ繋がる小路、門前からちらりと見えはするが、本当に細部まで気を付けて歩かないと見つからない。
養寿院に突き当り、養寿院山門から南北に一番街に平行するように走る「寺町通り」自体も路地裏であり、落ち着いた時間と文化が薫る。
最近の川越散策では、一番街通りだけでなく、川越を広く楽しもう、もっと知りたい、この先には何があるんだろう、と寺町通りのような路地裏散策をする人の数も増えている。
よりディープな川越を体感したいという機運があり、そして期待を裏切らず底知れない魅力があるのが川越の路地裏。きもの姿で路地裏散策に参加するようなディープな人でも、歩いてみたら新たな発見があったり、常に新鮮な驚きを与えてくれ、それが楽しいと言う。
ここから人でごった返す菓子屋横丁を抜け、車の往来が多い高澤通りに出て道沿いを西に進む。50人の着物姿の一行に、周りの人から驚きとも嘆声ともとれる声があがります。
赤間川に架かる高澤橋の手前を左に折れて、路地裏へ入れば見立寺が迎えてくれました。
七福神巡りの一寺としても知られる見立寺。赤間川を臨む場所にあり、まさに路地裏スポット。
案内役の一瀬さんの解説により、ゆかりの地の理解を深める。
見立寺を出た一行は、また赤間川を見下ろしながら来た道を戻り六塚稲荷神社の桜を見上げ、高澤通りから路地裏にある大蓮寺へ向かいます。
こうした場所が、菓子屋横丁のそこここにあると知ったら、観光客の多くは意外な印象を受けるに違いありません。旧市街地は、赤間川に沿って南北にずらりとお寺が配置されている町割になっています。
大蓮寺から北側へ歩いて行くのに、札の辻からではなく、小川長倉庫を抜けて行こうとするのが、さすが路地裏散策。ここまでくれば本物の川越路地裏散策と言ってよかった。参加者から「こんな道があったなんて!」と声があがる。
メイン通りからメイン通りへ行けば、分かりやすく最短距離で行くことができる。しかし、路地裏から路地裏へ行っても目的地に繋がっているのは常で、そういう歩き方も川越を知る手立てになるのは確か。
こうした脇道に、ひっそりと立っている蔵造りの建物を見つけたりして、それも路地裏の楽しみです。
小川長倉庫を抜け、次なる目的地は広済寺。それをメイン通りである札の辻から北へではなく、路地裏から回っていこうとするのが面白いところ。広済寺から斜向かいにある「旭舎文庫」に立ち寄りました。旭舎文庫のことは以前伝えています。
(川越style「旭舎文庫(あさひやのぶんこ)」旧梅原菓子店 2017年8月開館
https://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12301385920.html)
旭舎文庫からまらに路地裏である裏宿通りから東明寺へ。
そしてここから赤間川へ再び出ると、川沿いを進み、太田道灌にちなんだ道灌橋へ。道灌橋から川に垂れる桜を見ることができます。
橋を渡って真行寺、そしてゆったりとまた赤間川沿いを北に進みながら田谷堰まで来ました。
最後に待っていたのは、路地裏の路地裏たるゆえんでもあるような、これぞ路地裏という道。
赤間川と川越氷川神社の間に挟まれた場所は、武家地らしい細道が入り組み、T字路、鈎の手、袋小路があります。細道を縫うように進む一行。
ゴールは、川越氷川神社裏の新河岸川沿いの誉桜。4月1日は今年の最後の見頃で、かつ、水面には散った花びらが埋め尽くされる花筏を楽しむことができました。散策のご褒美にこれ以上ない光景を見せてくれました。
きもの姿で路地裏散策、実際に歩くことで、川越の知られざる魅力を発掘しながら堪能したのでした。
散策の後には、小杉さんなど総勢8人程で、新河岸川沿いのArt&Craft Cafe「Gallery USHIN(ウシン)」さんで、休憩&座談会を行いました。
USHINさんは川沿いにあるお店で、あの桜を目の前にした場所にカフェがあるということが川越の隠れスポットであり隠れ桜名所でもある。桜の季節に来たらどんなにいいことかと夢想していましたが、やはり、桜の季節には大勢の人が訪れていたよう。花より・・・とは言いませんが桜と団子はセットで楽しみたいところ。
(川越style「Gallery USHIN(ウシン)」Art&Craft Cafe
https://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12299486385.html)
川越は、裏にも散策が楽しいスポットがたくさんある。路地裏散策という切り口は、川越ならまだまだいくつもコースはあげられそう。
来年のきもの姿で路地裏散策は、例えば、仙波の里・新河岸川の桜並木と菜の花、喜多院門前通りなどが候補にあげられています。
川越駅〜仙波町〜小仙波町〜喜多院〜中院散策
川越の定番コースからは外れていますが、仙波は仙波二郎安家の例を出すまでもなく川越の歴史的地域であり、川越に深く身を沈めるのらしいコースでもあります。
どんなコースに決まるでしょう。また来年のお楽しみ。
川越の街にきもの姿を増やす会としては、年内は川越百万灯夏まつりなどの活動があり、今年も川越の街に着物姿を増やすために、地道な活動を重ねていきます。